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梓「ガラム」

  1. 名前: 管理人 2011/02/01(火) 09:49:11
    1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/01(火) 00:39:35.36
    「はいこれ」

    束ねた毛髪をふらふらさせながら純が差し出したのは、いつもと同じ、くすむ赤色の箱。
    握りこぶし大の小さな箱。
    梓は驚きもせず、カラカラと音を鳴らすそれを受け取りました。


    2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/01(火) 00:42:28.89
    「また届いたんだ」

    「うん。梓に渡してって」

    それは憂からの贈り物。
    一年と半年近くを共に過ごした友人が、日本を飛び出したのは二週間前。その一週間後から毎日、梓のもとには、憂からの贈り物が届いているのです。

    4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/01(火) 00:45:11.13
    「それじゃ私、ジャズ研行くから」

    「うん」

    渡すものを渡すと純はさっさと行ってしまいました。
    憂がいなくなってから冷たくなったと思います。

    梓は赤色を通学カバンにしまうと、ため息を我慢しながら音楽室に向かいました。

    5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2011/02/01(火) 00:48:50.67
    ************

    「こんにちは」

    扉を開けた梓の最初の仕事は唯を抱き止めることでした。
    妹がいなくなった唯はやはりさみしそう。けれど、さみしさを大声で訴えるぶん、まだ大丈夫でしょう。
    憂は転校したわけでも、転居したわけでもないのです。両親の仕事を手伝いに、外国に行ったのだと唯は言いました。

    南に行ったそうです。

    6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2011/02/01(火) 00:53:01.03
    ************

    「はあ」

    梓が家に帰ると、せっかく抑えてきたため息が逃げ出しました。
    赤色の箱のことは、唯には聞けません。
    実家にいる姉ではなく、純に宛てて送るところに不自然を感じるからです。
    それとなく探ってもみましたが、唯はこの贈り物のことは知らない様子。



    なにか、メッセージがあるのか。

    8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2011/02/01(火) 00:58:37.77
    B級映画の赤黒いホラーシーンを思い浮かべたことは、何度もありました。
    しかし、答えはわからずじまい。

    唯や純のところには、憂から毎日メールが来るそうです。
    梓のところには、来ません。そのかわり、一週間、赤色の箱が届き続けたのです。

    9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2011/02/01(火) 01:04:13.57
    「嫌われてるのかな」

    送ったメールすら、返って来ません。返信のかわりに届くのは、箱、箱、箱。

    憂に嫌われている。

    まさか。憂が自分を嫌っていたなんて、あるわけがない。
    この赤色が、自分を惑わしているだけ。そうに決まっている。

    10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/01(火) 01:05:45.89
    しかし、わからない。

    赤い箱とその中身。

    きっとそれは、憂なりのジョークのはず。高度な冗談なのだと、梓は自分を納得させようとしました。

    11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[ageeee] 投稿日:2011/02/01(火) 01:10:19.80
    それに、唯先輩。

    もし実の妹が、部活の後輩と仲が悪いと聞いたら、どう思うでしょうか。

    そんな疑いを持たせたくない。
    そんな真実を聞きたくない。

    梓が唯に相談をしない理由の一つがそれでした。

    12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[agaga] 投稿日:2011/02/01(火) 01:14:27.23
    それにしても、いつも純宛てに届くことも気になります。
    梓の家に直接送ればいいのに。

    きっと住所を知らないのでしょう。可哀想な梓ちゃんです。

    思えば、憂と純がいわゆる中学トークを始めたとき、いつも梓は蚊帳の外。なんだか壁を感じていたものです。



    腹が立ってきました。

    13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[agenyan] 投稿日:2011/02/01(火) 01:17:39.36
    「これってどういう意味なのよー!?」

    くすんだ赤い箱の中身は、煙草が三六本。

    もちろん梓は未成年ですし、煙に愛惜を覚えるほどの人生経験もありません。
    嗜好品として、嗜んでいるわけでもないのですから、よけいに憂の狙いが読めません。

    肺癌で死ね! とでも言いたいのでしょうか。

    15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/01(火) 01:22:24.55
    「こんにゃろ!」

    梓はジャージに着替えると、自室の窓を乱暴に開け、箱から一本を取り出し、百円ライターで火を付けました。

    バチバチバチッ!

    火花とともにむせ返るほどの甘い臭いが部屋を満たします。

    16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[ag] 投稿日:2011/02/01(火) 01:26:34.28
    タール四ニミリグラム。ニコチン一・八ミリグラム。

    甘すぎる臭いは、まるで娼婦。生娘の梓には、その強さはわかりません。
    ただ、その心根、女の部分は、なんとなくわかるような気がします。

    そんなオトシゴロなのです。

    17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2011/02/01(火) 01:31:39.39
    梓は真面目な少女ですから、褐色の染みが目立つフィルターに口を付けることはありません。

    父親の部屋から拝借した灰皿の上に煙草を寝かせると、ベランダの柵に寄りかかり外を眺めてみます。

    興味本位で初めて火を付けたときには、ひどい目に会いました。
    火花に驚いて煙草を落としてカーペットを焦がし、強烈な臭いが部屋にこびりつき、着ていた服は、現在クリーニング屋に出家中。

    それでも梓は毎日煙草に火を付けました。

    18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[agaggeeee] 投稿日:2011/02/01(火) 01:34:22.52
    それにしても、夕陽の赤の優しいこと。
    どこぞの箱にも見習って欲しい。
    とはいえ、優しさに甘えすぎると、孤独と郷愁に溺れて死ぬので気をつけましょう。
    どうにも、赤には人を惑わす力があるようなのです。

    19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/01(火) 01:36:58.57
    ゆらゆら。ゆらゆら。

    灰色の体を翻して、部屋中を泳ぐ甘美な煙。
    それを横目で眺めた梓はしかめ面。

    不潔な鼠。苦労続きの鉄は無骨。硝煙は喉を焼くしか能がありません。

    灰色に優しさを求めるほうが間違いでしょう。

    20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/01(火) 01:39:37.47
    夕飯どきの空に、窓の光がポツポツと灯ります。
    赤色の箱の理由はわからないまま。
    けれど、憂が帰ってくるのは、五日後。
    その時、問い詰めればいい。ヤニまみれの制服に身を包み、娼婦のような態度で、言ってやるのだ。



    ――寂しかった、と。


    とたんに一人で赤面する梓。自分は、寂しがっているのか。いや、斜陽と、煙のせいだと、自分に言い聞かせます。

    21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/01(火) 01:43:14.24
    灰色は心を塗り潰す。危険な色。
    そう決めつけた梓は、けれども二本目の煙草に火を付けました。
    まだ残り三五本もあるのだから、と。

    灰色は、包み隠す色なのです。

    22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/01(火) 01:45:43.39
    ************

    「はいこれ」

    「うん」

    次の日も、赤色の箱は届きました。
    梓には相場はわかりませんが、この煙草もそう安くはないでしょうに。恐縮しろよ、百円ライター。

    25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2011/02/01(火) 01:47:50.08
    「それじゃ」

    「待って」

    「ん?」

    「今日さ……部活終わったら、家においでよ」

    「あはは、なにそれ、告白?」

    「ばか」

    寂しさに酔ったら、心が揺れたら、塗り潰してしまえばいい。
    けれども、灰色に「ありがとう」なんて、言いたくはない。

    少女から女に変わる、そんなお年頃なのです。




    憂が帰ってくるまで、あと四日のことでした。


    おしまい

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  1. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/02/01(火) 12:29:27 URL [ 編集 ]
    よくわからんがいい雰囲気
  2. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/02/01(火) 12:48:02 URL [ 編集 ]
    まさか本当にたばこのガラムだったとは……
  3. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/02/01(火) 15:20:55 URL [ 編集 ]
    ガラム吸いたくなってきた
  4. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/02/01(火) 15:31:25 URL [ 編集 ]
    ガラムはクローブを香料に使っていて、クローブはゴキブリ除けに使われる
    Wikipediaでわざわざ調べてやった知識からするとそういうことだ

    こういうなんかよくわからんSSって作者のドヤ顏が浮かんでくるから大嫌いなんだよな
  5. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/02/01(火) 16:41:06 URL [ 編集 ]
    >>5
    気持ちはわからんでもない
    SS書けるんだからどやって言う気持ちもわかるけどな
  6. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/02/01(火) 18:09:00 URL [ 編集 ]
    なるほど、お姉ちゃんに近づくなと

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