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過去の名作たち

  1. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/02/15(火) 14:58:09 URL [ 編集 ]
    >>12の表現力というか、なんだろう、パワーがすごい
    澪を感じた
  2. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/02/15(火) 15:05:23 URL [ 編集 ]
    なんというか、美しい
  3. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/02/15(火) 17:15:57 URL [ 編集 ]
    ステキSSをありがとう

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澪「ホワイト・バレンタイン」

  1. 名前: 管理人 2011/02/15(火) 13:27:33
    2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/15(火) 01:05:17.63
    「ありがとうございましたー」

    店員さんに、意味深な目配せをされてしまった。

    一足遅い、バレンタインデーのプレゼントと勘違いされてしまったらしい。

    ママのお手製の布バッグにチョコを詰めてから、私は無機質な灯りを満載したコンビニを出た。

    今日は2月14日。時刻は午後11時。

    天気は、雪。


    5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/15(火) 01:14:08.49
    「はぁっ……」

    寒い。

    身に染み込むような、という表現がぴったりだ。

    信号機の青も、この冷気に凍りついてしまうのではないか。そんな気さえした。

    身体が、内側から少しずつ冷えていくのがわかる。
    パパが貸してくれたマフラーに顔をうずめると、タバコと汗のにおいがした。

    空を見上げると、大粒の結晶が顔を打つ……痛い。

    静かに舞い降りてくる雪の粒は、まるで遠い宇宙の流星群のようだ。

    どんなに見ていても、飽きることなんてない。

    7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/15(火) 01:18:54.65
    「……っくち」

    それにしても。変な見栄を張るんじゃなかった。

    いくら律に小馬鹿にされたのが悔しかったからといって、

    あげるアテもないチョコを買うなんて。

    お金と時間の無駄使いも、いいとこだ。

    でも……。

    「……くすっ」

    楽しい。

    12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/15(火) 01:22:53.76
    雪って、踏むと不思議な感じがするんだよね。

    古い電車のシートに座るような、なんだか懐かしい感じ。

    桜の木、枝の雪が重そう。ちょっとかわいそうだな。

    タクシーの運転手さん、こんな時間までご苦労さまです。

    ……どこかで、静かな崩壊の音がした。

    屋根の雪が、静かに崩れる音だ。

    14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/15(火) 01:27:07.11
    「……寒い」

    ちょっと、休憩しよう。

    この公園、懐かしいなあ。

    小さい頃、鉄棒の練習に来たっけ。

    逆上がりがなかなかできなくて、泣いたんだよね。

    ……哀れなベンチは、慣れない雪に埋もれて凍えていた。

    これじゃあ、座れないな。

    「……出ておいで」

    15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/15(火) 01:32:03.80
    「……いつから、気づいてたの?」

    さっきから、ずっとだよ。

    ほら、怒ってないから。こっちにおいで。

    「……へへ」

    パラソルをさしてあらわれたのは、困ったように笑う女の子。

    黄色のピンが、ブラウンの髪によく似合ってる。

    女の子はワンピース姿だった。半袖の、純白のワンピース。

    寒くないのかな?

    16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/15(火) 01:36:29.11
    「どうして、私のあとをつけたの?」

    見ると女の子は、私と同い年くらい。

    桜高にこんな子がいればいいのに。そんなことを、ふと思った。

    「あなたがさみしそうに見えたから、かな」

    ……むう。

    さみしくなんか、ないよ。

    「ねえ、遊ぼ?いっしょに大きな雪だるま、つくらない?」

    ……やれやれ、子供だな。

    18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/15(火) 01:39:57.72
    それから、私は。

    その子と、雪だるまを作りました。

    とても大きな雪だるま。

    よく見ると、その子の歩いたあとには、足跡ひとつありませんでした。

    不思議だけど、怖くはなったな。

    どうしてかな?

    私にも、よくわからない。

    ……ああ、手袋が濡れちゃう。

    19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/15(火) 01:43:48.52
    「……できた!」

    「やったね、澪ちゃん!」

    ぴょんぴょん跳ねてよろこぶ女の子。

    まるで、雪ウサギだね。

    私のお気に入りのウサちゃん。

    もう、私のこと名前で呼んでる。

    教えた覚えなんか、ないのに。

    20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/15(火) 01:48:25.79
    「ねえ、そんなかっこうで、寒くないの?」

    こんな真冬に、白のワンピース一枚なんて。

    ほら、手もこんなに冷たいじゃんか。

    「手の冷たい人は、心があったかあったかなんだよ!」

    ……そんなこと、知ってるよ。

    私、今とっても暖かいもん。

    22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/15(火) 01:54:45.28
    大時計の長い針と短い針が、12で重なり合おうとしている。

    それはまるで、私たちのようで。長い針が私で、短い針が女の子。

    ……時計の針にだって、バレンタインを祝う権利があるよね。

    でも、私が針のデートを見届けることは、できない。

    もう、帰らなくちゃ。

    「……そう、残念だなぁ」

    24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/15(火) 02:00:30.02
    女の子が悲しそうな顔になる。

    止めて。そんな顔しないで。

    そうだ、明日また会おうよ。今度は二人だけで雪合戦しよう。

    雪ウサギも作ろうよ。私、作るから。君にそっくりな雪ウサギ、作ってみせるから。

    ……ねえ、なんで首を横に振るの?

    「ごめんね、私に明日はないの」

    「朝がきたら、お日様が顔を出すでしょう?」

    「そしたら、私たちは溶けて消えちゃうの。だから……」

    25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/15(火) 02:10:57.95
    そこまで言うと、女の子はうつむいてしまう。

    「……そっか」

    喉がツンと痛い。さっきの冷気が、戻ってきたみたい。

    ……そのくせ、目の奥がどうしようもなく熱い。変なの。

    「ねえ、そんなに悲しそうな顔しないで」

    「私たち、また会えるから」

    「雪の降る夜なら、きっとまた会えるから」

    26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/15(火) 02:13:33.84
    約束だぞ?

    「うん、約束」

    ……ありがとう。

    そうだ、お礼をしなくちゃ。

    えっと、何かあったかな?

    ……ああ、そうだ。これにしよう。

    はい、これ。バレンタインチョコだよ。

    27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/15(火) 02:19:36.94
    赤いリボンで飾られた、ブラウンの箱を渡す。

    箱はすっかり冷え切っていたけれど、女の子はとても嬉しそうに受け取ってくれました。

    純白の歯が、愛想のない電灯に輝く。

    虫歯にだけは、気をつけてね。

    「ありがとう!私も何かお礼ができたらいいんだけど……」

    いいんだよ。今日は本当にありがとう。

    チョコ、大切に食べてね。

    私が初めてあげる、バレンタインチョコなんだから。

    28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/15(火) 02:27:13.46
    さあ、もう帰らなくちゃ。

    あと少しで、針と針が重なっちゃう。

    そしたら、この魔法のような一日は終わってしまう。

    「うふふー、まるでシンデレラみたいだね」

    ふふっ、本当だ。

    さようなら、私のお姫様。

    あ、ちょっと待って。

    君の名前を聞かせてよ。

    「私?私の名前は……」

    「……唯っていうんだ!」

    29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/15(火) 02:28:25.00
    そっか、唯っていうんだ。

    素敵な名前だね。

    ああ、もう時間がない。

    最後にもう一度、伝えなくちゃ。

    「ありがとう、唯!」



    ……そして、長い針と短い針は結ばれ。

    私と唯の時間に、終わりを告げました。

    31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/15(火) 02:33:49.68
    ……気がついたら、私は夜の公園に一人で立っていた。

    近くの楡の木から、雪の塊が滑り落ち、優しい音をたてた。

    公園には、まだ雪だるまが残っている。私と唯が二人で作った、大きな雪だるま。

    持って帰りたい。一瞬そんな衝動にかられた。

    だけど私は、首を横に振る。

    ……思い出なんていらない。

    だって私と唯は、きっとまた会えるから。

    雪の降る、静かな夜に。

    32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/15(火) 02:38:45.17
    公園を足早に出て、家路を急ぐ。

    足元で、雪が優しい音をたてる。古い電車のシートに座るような、どこか懐かしい感じ。

    丸っこいかたちの車のボンネットに、雪が何センチも積もっていた。

    さすがにこの車にはなりたくないな。

    自販機の無表情な白い灯りが、私を誘う。

    ……ココアでも買って、帰ろうかな。

    33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/15(火) 02:43:35.42
    ……小銭入れを開いてみて、私はおどろいた。

    いつの間にか、入れた覚えのないガラス細工が入っていたのだ。

    雪の結晶をかたどった、小さなガラス細工。

    頬が緩むのを、押さえきれなかった。

    ……唯の仕業だな。まったく。

    34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/15(火) 02:52:41.44
    いつの間にか、雪は止んでいた。

    硬貨を三枚、自販機に入れてからココアのボタンを押す。

    無粋な音が眠る町に響き渡り、そして凍った虚空に吸い込まれていった。

    左手に小銭入れ、右手に缶を持って私は不慣れな雪道を歩く。

    右手の缶は、確かに温かい。

    だけど、なぜだろう。左手の方が暖かく感じるのは。

    小銭入れの中の、小さなガラス細工のせいだろうか。



    終わり

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  1. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/02/15(火) 14:58:09 URL [ 編集 ]
    >>12の表現力というか、なんだろう、パワーがすごい
    澪を感じた
  2. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/02/15(火) 15:05:23 URL [ 編集 ]
    なんというか、美しい
  3. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/02/15(火) 17:15:57 URL [ 編集 ]
    ステキSSをありがとう

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