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過去の名作たち

  1. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/02(水) 19:40:22 URL [ 編集 ]
    良い律澪だった…満足!
  2. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/02(水) 19:42:49 URL [ 編集 ]
    なにこの素敵な律澪
  3. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/02(水) 19:43:41 URL [ 編集 ]
    これは良すぎる
  4. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/02(水) 20:20:50 URL [ 編集 ]
    この二人の話しは本当に良いね。
  5. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/02(水) 21:01:32 URL [ 編集 ]
    小説の域に達してる
  6. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/02(水) 21:14:02 URL [ 編集 ]
    重すぎず良い!!
  7. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/02(水) 22:35:42 URL [ 編集 ]
    さすがこの二人、だな。

    これからも愛を育んでください。
    願わくば映画でもその関係を見せ付けて(以下略)
  8. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/02(水) 22:37:44 URL [ 編集 ]
    なにこれ、どきどきする…。
  9. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/02(水) 23:17:13 URL [ 編集 ]
    泣いた
  10. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/02(水) 23:41:42 URL [ 編集 ]
    映画でこのネタは無いだろ
  11. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/03(木) 08:02:05 URL [ 編集 ]
    いや、このネタじゃなくて幼馴染みネタ?ってゆーの?
    アニメでも描かれてるような関係が見たい(´`)

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律「およそ五十センチメートルの距離」

  1. 名前: 管理人 2011/03/02(水) 19:36:16
    1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 14:54:54.99
    彼女の顔を見た時、稲妻が体を駆け巡った。

    幼いながらも私は、彼女を好きになってしまったのだ、と理解した。

    彼女の笑顔を見てみたい、と思って、彼女に近づいた。以来、私は彼女に話しかけるようになった。

    彼女の笑顔を見たのは、私が髪型をパイナップルの形にした時だ。くすくすという笑い声が聞こえ、彼女の方を見やると、綺麗な笑みを浮かべていた。

    その笑顔を見た私は、彼女への恋心を、より一層意識するようになった。

    でも、私が彼女に告白したら、彼女はきっと困惑してしまう。笑顔を見せてくれなくなるかもしれない。

    それが怖くて、私は未だ、告白できずにいる。

    十年ほど経った今も、彼女には言っていない。

    私、田井中律は澪に恋をしている――ということを。


    2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 14:57:57.49
    ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
    朝起きてご飯を食べて歯を磨いて顔を洗って、そうして一日が始まる。

    澪が家のチャイムを鳴らし、私は外に出る。いつもそうだった。澪が田井中家に来て、私と共に学校に行くのだ。知り合ったころからの慣習。

    ほら、律、早く行こう――澪の言葉に私は頷く。ああ、わかった、トイレ行くからちょっと待ってて。

    お手洗いを済ませ、鞄を持って再び外に。

    律「じゃ、行こうか」

    返事を聞かず、私は澪の先を歩く。後ろから澪の足音。そういえば、いつもこんな感じで二人歩いていた。

    3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 15:00:41.59
    今日に限って私は、気付いてしまった。

    一歩離れた距離が、私と澪に間にある。一緒に学校に行くときも、帰るときも。微妙な距離が存在している。

    ――ちょうど、私たちの関係みたいに。

    そこまで考えて、気分が落ち込む。朝からネガティブになるのは止そう。頭をぶんぶんと振って、邪念を払う。

    澪「何してるんだ? 律」

    律「え、あー、いや。ただの考え事だよ」

    澪「考え事?」

    5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 15:03:31.47
    律「あれだ、今日のムギのおやつは何なんだろうな、ってこと」

    とっさに嘘をついた。私と澪の距離感について思索していた、なんて言うべきではないと思ったのだ。

    まったく律らしいな、という声が聞こえた。

    私らしい――とはどういうことなのだろう。

    澪にとって私は、普段からムギのおやつにしか興味の無い人間、くらいの認識でしかないのだろうか。

    ああ、また変なことを考えている。朝から暗くなっちゃいけない。

    そう思い、私は気を紛らわすべく空を見た。

    快晴。

    6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 15:06:36.05
    学校に着く。靴を替えて教室へ。和と唯とムギはもう来ていた。

    唯「あ、りっちゃんおはよー」

    律「ああ、お早う」

    私たちも唯たちに交じって、会話する。この中では唯と話をすることが多い。その次に澪。

    一方澪は、和と話すことが多い。

    澪と私が会話するときは、たいていが澪に突っ込みを入れられるときだ。

    別に、和に嫉妬とか後ろ暗い感情を抱いているわけではない。

    それでもやはり、むなしい。

    7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 15:09:20.53
    本音を言えば、澪と一緒でおしゃべりしていたい。

    澪とだけ会話しつづけたい。

    和ではなく私を選んでほしい。

    でもそれは、ただの我がままだ。独占欲が強すぎる。

    こんなことを澪に言ったら、私と澪の関係は壊れてしまうだろう。

    唯「それでね、りっちゃん――」

    だから私は唯の話を、いつものように聴き続けることにした。

    9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 15:11:50.15
    授業時間を寝て過ごし、やがて放課後になる。

    澪は掃除で唯は日直の仕事。私はムギと二人で音楽室に向かう。

    歩いている途中会話はない。気まずさを覚え、私は早足になっていく。

    紬「りっちゃん、今日調子悪いの?」

    歩幅が縮む。

    律「え、そうかなー? そう見える?」

    紬「うん。府抜けちゃってる、感じ」

    律「……そっか」

    紬「あ、変な意味じゃないのよ? 気分悪くしちゃったらごめんね?」

    11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 15:14:31.40
    律「いや、大丈夫。心配しなくていいよ、ムギ」

    ぴたり、とそんな音がするかのように会話が途切れる。

    そういえば、夏休みの時はムギと、もっと話をしていたような気がする。

    今日の私はそのときより無口だから、ムギが『調子悪いの?』と訊いてきたのだろうか。

    そんな考えをしているうちに、音楽室の前まで来てしまっていた。

    部室にはもう梓がいた。

    ムギはお茶の準備に行く。梓と二人。なぜか、落ち着かない。

    13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 15:18:06.42
    梓「唯先輩と澪先輩はどうしたんですか?」

    と、梓が話を振ってきたことに若干驚く。

    律「日直と掃除」

    梓「ああ、そうですか」

    律「うん」

    梓「………………」

    律「………………」

    梓「律先輩、今日は静かですね」

    律「え、いつもこんな感じじゃないか?」

    14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 15:20:07.69
    梓「いえ、いつもはなんか、もっとはっちゃけているっていうか」

    律「そうかなー」

    梓「はい」

    律「………………」

    梓「………………」

    律「…………あの」

    梓「……やっぱり、いつもより静かです」

    確信を持って指摘された。

    16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 15:22:37.71
    律「ちょ、ちょっと考え事してただけだよ」

    下手な嘘。

    梓「なんか、調子悪いんですか? 最近風邪流行っているみたいですし、ああ、そういえば純も風邪ひいているんですよ」

    ムギと同じ質問――。

    私はやはり、調子が悪いのかもしれない。テンションもなんか、いつもより低いのが自覚できる。風邪は……ひいているっていう自覚はない。

    私は平静を装った。

    律「はは、大丈夫だって。そういう梓はいつもより優しいじゃんか、なんかいいことあったの?」

    いつもの私を意識して。

    17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 15:25:22.66
    梓「なんか、心配して損しました」

    律「どういうことだそれー!」

    ムギに続き梓にまで心配されるとは、と軽い罪悪感を覚える。今日の私は、変なのか?

    数分して、唯と澪が来た。

    ムギがお茶とお菓子を持ってくる。唯が歓喜して、澪が美味しそうだな、と漏らす

    私たちは定位置に座って、ケーキを囲う。

    いつもと同じ、なのに私は心のどこかで、空虚さを感じていた。

    19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 15:28:29.30
    食べ終わったら雑談して、ちょっと楽器に触って、部活が終わると解散して、校舎を出て、途中まで五人一緒に帰って、唯と梓とムギが別方向に行って……。

    今日の朝と同じように、澪と二人っきりになった。

    私が一歩くらい進んだところを歩いていて、澪がその後ろを歩く。

    距離感。

    明確な差。歩幅にして一歩分。

    気にしてしまうと、ずっと忘れられない。

    つと、澪が言葉を発した。

    澪「……今日は、律、いつもと違ったな」

    21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 15:31:30.02
    律「……マジか」

    似た質問を二人からされて、澪にまで訊かれた。これはもう、私はいつもと違うということを認めざるを得ない。

    澪「うん。言っていいのか分からないけど、なんというか、暗かった」

    律「暗かった、か」

    距離感。私と澪の間には距離がある。幼馴染なのに――幼馴染だからこそ、澪との距離を感じる。

    ……前から、何となくわかっていた。距離感があるなんて、知っていたのだ。

    今日になって意識し始めた、というだけにすぎない。

    22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 15:33:34.38
    澪「お、おい、律?」

    律「え?」

    知らぬうちに、立ち止まっていたらしい。

    律「悪い悪い、考え事だよ」

    澪「……律、なんか悩んでることあるのか?」

    数秒の間をおいて、答える。

    律「別に、ないな」

    笑顔を作った。

    24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 15:36:47.71
    歩いている最中、また、一歩澪より先に進んでしまう。

    一歩分の距離――およそ五十センチメートルの距離は、短いようで長すぎる。

    澪と十年近く一緒にいるのに、未だ、その距離を縮められないのだから。

    時を経るごとに、距離を縮めるのが恐くなる。

    それまで積み上げてきた澪との関係を、壊してしまいそうだから。

    幼馴染だからこそ、私は澪に近づくことを、躊躇してしまうのだ。

    幼馴染だからこそ、私は澪に、恋をしているというのに。

    空を仰ぐ。そうしたら、何もかも忘れられそうな気がして。

    けれど、夕暮れの空は、私を憂欝にさせるだけだった。

    私のため息が空に消えた。

    27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 15:39:16.80
    家に帰ると、聡に、洗濯物をちゃんとまとめておいてくれと言われた。はいはい、と生返事をしながら、私は自室に戻る。

    ベッドの上に鞄を放り、私はイスに座った。机の引き出しを開けて、それを取りだす。

    中学生のころ書いた、澪へのラブレター。去年の年の瀬、部屋の掃除をしているときに出てきたものだ。

    律「澪大好きだよ…………なんて、な」

    ラブレターには、たくさんのハートのシールが貼られている。

    これを書いているときは、告白する気満々だったはずだ。でも、渡すのに勇気が出なくて、結局今も、こうして我が家に残っている。

    思わず、苦笑してしまう。

    30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 15:41:24.99
    勇気が出ないなんて律らしくないな、と澪なら言うかもしれない。

    私は、本当はとても臆病なのだ。澪よりも、ずっと。

    ただ、みんなの前では強がっているだけだ。威勢を張っている、と言っても正しいだろう。

    でも実際は臆病だから、距離を意識しただけで、口数が少なくなってしまう。その結果、みんなに心配される。

    澪に近寄りたい。

    澪の手を握り、澪の眼を見つめ、好きだよと言いたい。

    そんな妄想を口に出したら、唯に『りっちゃんキモーい』と笑われるかもしれない。

    また、苦笑いが浮かんだ。あれこれ悩むのに、私は向いていないのだろうか。

    31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 15:44:14.77
    澪に告白したら、きっと彼女は戸惑った挙句にごめん、と言う。でも、これからも友達だからな、とフォローするに違いない。

    そうしたら私は、澪を避けるようになるだろう。

    澪と一緒にいると気まずくなるのが目に見えるから。

    だから、この恋心は要らないものなのだ。私と澪の関係を壊す、核にも似た存在のものなんて。

    明日は、いつも通りの私でいられるだろうか。今日みたいに暗い私ではなく、陽気な私でいられるのか――?

    そんな自信、ない。

    誰か他人を不安にさせるのは嫌だった。それが、ムギであれ梓であれ、誰であれ。

    33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 15:46:59.35
    どうすれば、いいのだろうか。澪のことを意識せずに済むだろうか。

    そう考えて、一つの結論に至る。

    澪との接触の機会を減らす。それくらいしかないように思えた。

    律「……ごめんな、澪」

    出来ることなら、したくないのだけれども。

    澪といたら、また数十センチの差を気にしてしまう。そうしたら、またムギや梓に心配をかけるかもしれない。

    早いうちに、手を打っておかなければいけないのだ。

    34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 15:49:53.18
    私の想いが暴走する前に。

    距離をあまりに意識しすぎて、それしか目に見えなくなる前に。

    椅子に背を委ねる。ぎぃ、とものさびしい音がした。

    ああ、そうだ。聡のやつに洗濯物まとめておいてくれと言われていたっけ。

    椅子から立ち上がる。喉も乾いた。ついでに水でも飲んでこよう。そう思い、私は階下に向かった。

    ラブレターを、ゴミ箱に捨てて。

    35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 15:51:50.83
    ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
    洗濯物をまとめる。そのあと、台所で水を一気飲みする。

    聡が、今日父さんたち遅くなるみたい、と伝えてきたので、私は晩御飯を作ることにした。

    二人だけで食べるご飯は少し味気ないな、と思いながらも箸を進め、ごちそうさまを言って食器を洗いに向かう。

    その間に聡が風呂を沸かしてくれていた。一番風呂は私だ。

    風呂上がり。バスタオルを体に巻きながら、自室に向かう。

    宿題を終わらせる。その後、唯からメールが来たので適当に返信する。

    そろそろ、寝ようか。私は欠伸を一つ出した。
    ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

    37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 15:54:43.39
    疲れていたのかもしれない。夜になってベッドに入ると、すぐに睡魔が襲ってきた。

    ?「起きろー、律」

    そして、その声で目が覚めた。

    律「ああ……? 誰だよ、人が寝てるって言うのに」

    目をこすりながら見た先には、私がいた。

    律「ようやく起きた」

    律「…………はぁあ?」

    律「おーい、律」

    よく見ると、もう一人の律は、今ここにいる私よりも背が小さい。顔つきもどことなく幼い。中学生の時の自分ほどだ。

    ――ああ、これは夢か。

    38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 15:55:51.18
    律「起きてる? 律」

    夢の中で頭をフルに使う。ひとまず、目の前の律を律Bとして、私を律Aにした。

    律A「……何だよ、変な夢だな」

    律B「なあ、律。本当にいいのか?」

    律A「……何が?」

    小さい自分に律、と呼ばれるのはなんか変な感じがした。

    律B「いや、ラブレター捨てたじゃん、わりとあっさりと」

    律A「……ああでもしないと、忘れられないだろ」

    律B「何を?」

    40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 15:58:28.26
    律A「何をって……お前が私なら、わかるべ?」

    自分は夢の中で、なに自問自答みたいなことをしているのだろうか。

    律B「何を?」

    律Bが笑う。いたずらっ子みたいな笑み。

    律A「うるせーぞ律B!」

    律B「律B?」

    脳内設定は反映されないのか。不自由な夢だ。

    律B「何を忘れる――忘れたいんだ?」

    律A「………………」

    41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 16:01:19.68
    私は眼を瞑った。

    律B「ねえ、何をだよ、律」

    五月蠅い夢から逃げ出したかった。

    だんだんと、律Bの声が遠ざかる。

    夢から覚められるのだ――。

    律B「律」

    その間際。

    律B「忘れられるわけがない」

    そんな声が聞こえた、気がした。

    42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 16:03:55.60
    そして、目が覚めた。

    律「――っはぁ! ………………うわ、寝汗びっしょり」

    寝汗に不快感を覚えながらも、私はふう、と息を吐く。

    律「へんな夢見せやがって……律Bめ」

    パジャマを替えよう、と部屋の電気を付けた。壁掛け時計を見る。まだ、午前二時。余裕で寝ていられる。

    ゴミ箱が視界に入る。端の方に、ラブレターが埋まっている。

    何を忘れたいのか。そんなの、決まっている。

    澪への想いを忘れたいのだ。

    43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 16:05:43.63
    そうしたら、距離なんて気にならなくなるから。

    私はそのラブレターを、ゴミ箱の奥の奥へと埋めた。

    ――忘れられるわけがない。

    そんな声が聞こえたような、聞こえなかったような。

    パジャマを替え、再び布団に潜る。

    今度は、夢を見なかった。

    44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 16:08:30.80
    朝起きてご飯を食べて歯を磨いて顔を洗って、そうしてまた一日が始まる。

    澪と一緒に学校に行く。一歩分の距離は健在だ。気にしないように努める。

    ……でもやっぱり、気にしてしまう。靴二足を縦に並べたくらいの距離。

    律「……あのさ、澪」

    私は澪に向きなおる。

    澪「どうした?」

    言うのは心が締め付けられるようで、苦しい。でも、言わなかったら私は駄目になる。今でさえ、距離を気にしているのだ。

    律「明日からさ、別々に学校行かないか?」

    45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 16:11:39.70
    私の表情はどんなんだろう。悲しんでいるだろうか。少なくとも、笑えてはいない。

    澪「え、何で……?」

    澪と一緒だと、また澪のことを意識して、距離を感じてしまうから。

    そんなこと言えるはずもなく、私は虚言を吐こうとする。

    律「あれだよ。ほら、さ」

    が、とっさの嘘は浮かばない。ああ、もう、こういう時に限って……。

    澪「なんか、私律に嫌なことしちゃったか……?」

    律「違うんだ、そうじゃなくて……ああ、澪もさ、毎朝私を迎えに来るなんて面倒くさいだろ? 小学生のころはさ、私も寝ぼすけだったから助かったんだけどさ」

    心が圧迫されているように、感じた。息苦しい。

    47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 16:14:18.77
    澪の視線が痛い。

    澪「べつに、私は面倒くさくはないぞ?」

    律「それでも、さ。私が悪いなーって思っちゃうんだよ、私の為に毎朝来てくれるとかさ、心苦しいっていうか」

    芝居がかった動作で、私は言葉を連ねた。

    律「だから、明日から――いや、今から一人一人で学校に行かないか?」

    澪「……帰りの時は?」

    そっちは忘れていた。どう、嘘をつこう。私が必死に思索していると、澪が再び口を開いた。

    澪「……わかった、別々に行こう」

    私の横を通り抜ける。そして彼女は、一人学校に向かった。

    48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 16:17:05.44
    一歩分以上の距離が、私と澪の間にうまれた。

    私の横を通り過ぎる一瞬、澪の目に浮かんでいたあれは、涙? はは、まさか。

    これでいいのだ、一歩分の距離を気にする必要はない。私は陽気なままでいられる。変な考え事をしない、私のままで。

    これでいいんだ、ぜんぶ。これで澪のことを想わずにいられる。

    律「…………ごめん」

    誰の耳にも届かない謝罪は、頬を撫でる風に沿って、霧散していく。

    私は遠回りの道を選んで、学校に向かうことにした。後ろからの足音は、ない。

    52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 16:19:12.08
    学校に着いて、すぐに教室に向かう。澪はもう来ていた。

    唯「珍しいね、澪ちゃんとりっちゃんが一緒に来ないなんて」

    律「ああ、今日はちょっと寝坊しちゃってな」

    唯「へー、遅刻しないで良かったね!」

    律「ああ。そういえばさ――」

    唯と談笑しながら、澪を見る。

    ムギや和と喋っている澪は、楽しそうだった。

    胸の奥に、形容しがたい感情が湧いてくる。

    53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 16:23:04.06
    朝のホームルームが終わる。授業はすぐに始まった。

    筆箱から、シャープペンを取り出す。水玉柄で、真ん中にクマの柄がプリントされているシャープペン。

    これは、たしか、澪とおそろいにしようと買ったシャープペンだっけ……。

    別のものを使うことにした。でも、他のも全部、澪とのつながりがあるシャープペンシルだった。仕方ないので、一番最初に取りだしたやつを使う。

    授業中寝ていたら、ノートを貸してもらうことになる。私はいつも澪から借りている――今回、それは避けたかった。

    かといってムギや和に借りると、澪と何かあったのか、と疑われてしまいそうだから。

    私は授業をまじめに受ける必要があったのだった。休み時間の時、唯に「寝ないなんて珍しいねー」と言われるだろうな、と思った。

    54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 16:25:04.48
    一時間目二時間目……と、順調に終わっていく。いつも授業中は眠っているので、今日は何だか新鮮だった。

    唯「りっちゃん、居眠りしてないね」

    案の定、言われる。

    律「ああ、私は今日から生まれ変わることにしたんだー!」

    唯「おおー、遅い!」

    律「生まれ変わるのに早さは関係ないのだよ……」

    唯「じゃあ私も今日から生まれ変わろうかな。よし、まずは一人で夜トイレに行けるようにする!」

    律「今まで憂ちゃんと一緒に行ってたのか……?」

    唯「? うん。普通じゃない?」

    そんな会話をしているうちに休み時間が終わり、また、授業が始まった。

    55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 16:27:39.37
    お昼休み。弁当は、唯達とではなくいちごと食べた。一人でいることの多い、物静かな女の子だ。

    いちご「……何で今日は私と一緒?」

    律「たまにはいいかなーって」

    言いながら、弁当を開く。弁当に入れているお箸も、澪とおそろいのものなのだ、と思いだす。

    いちご「……どうしたの? 箸を見つめたまま固まっちゃって」

    律「え、――ああ、なんでもないよ」

    いちご「……そう」

    いちごと食べるご飯は、美味しかった。その反面、どこか、切なくもあった。

    56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 16:30:20.51
    放課後になった。澪は掃除、唯は昨日で日直が終わったので、私たち三人だけで部室に向かった。

    部室には昨日と同じく梓がいた。

    ムギがお茶の用意に消える。私は唯と、机に座ってお茶を待つ。直に梓が座り、続いて澪が入室して席に着く。最後はムギが、お菓子を持ってくる。

    唯「そういえばあずにゃん、純ちゃん大丈夫なの?」

    梓「え? 純? ああ、風邪なら治ったそうですよ、授業中に来たメールにそう書いてありました」

    唯「よかったー、昨日憂がとても心配してたんだよ『純ちゃん風邪ひいてる心配だなあ』って」

    梓「憂らしいですね」

    唯「えへへ、でしょー」

    梓「いや別に先輩のことを褒めているわけじゃ……」

    そんな会話を耳にはさみながら、ムギの持ってきたお菓子にかじりついた。甘い。

    57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 16:32:19.31
    私も何か話をしよう、と思い口を開――。

    澪「あのさ、律」

    それより早く、澪が切りだした。

    律「……なんだ? 澪」

    澪「今日、律と私、あまり会話してなくないか?」

    ここで動揺してはいけない。自分に言い聞かせる。

    律「ああ、そういえばそうだな」

    紬「たしかに、澪ちゃんとりっちゃんがいつもみたいにはしゃいでるとこ、見ていないような……」

    唯「珍しいよねー」

    59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 16:35:12.49
    律「あはは、偶然じゃないか? たまには、こういう日があってもさ」

    澪「弁当も、一緒じゃなかったし」

    律「今日は、いちごと弁当を食べる約束していたんだよ」

    我ながら、急な嘘にしてはよく言えたと思う。

    澪「……そうか」

    瞳を伏せる澪。

    しんみりとした空気が部室全体を覆って、沈黙が流れる。

    水槽からするこぽこぽと云う音だけが、場違いに響いていた。

    60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 16:37:34.07
    律「そ――それにしても、このごろ晴れてばっかだよな」

    無理な話題転換をする。

    紬「ああ、そういえばそうね」

    唯「でも、土曜日くらいになると雨が降るらしいよ?」

    律「休日に雨かー、タイミング悪いな」

    今日は何曜日だっただろうか、と考え、ああ木曜日かと思い出す。

    その後、唯がまた話を始めた。ムギがその話に興味を持って、どんどん話題が広がっていく。私もその中に加わる。

    けれど、澪は黙りこくったままになった。

    結局、それ以上喋ることはなかった。

    61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 16:40:20.96
    六時前くらいに部活動が終わる。と、いっても大したことはしていないが。

    部室を出て、更には校舎を出る。

    空はうすい赤色。あと二十分もすれば、立派な夕焼けが見られるに違いない。

    私たち五人はいつも通り、途中まで一緒に帰った。

    ムギと唯と梓が別方向になる。

    必然、私と澪が二人だけに。

    澪「……じゃあな、律」

    そう言い残して、澪は夕暮れの向こうに早足で駆けていく。

    62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 16:42:39.10
    私に彼女を止める必要はない。その後ろ姿を、ぼんやりと眺めていることしか出来なかった。

    空っ風が、私の脇を走り抜けていく。

    一歩分の距離だったものが、いまはもう、どうしようもないほど広い溝となっていた。

    そうしたのは私自身なのに、何故だか、澪に謝ってすべてを告白したい気持に駆られた。

    一人で、歩幅を小さくしながら、私も帰る。歩幅は小さめ。

    あまりにも静かで暇なので、私は物思いにふける。

    ――最初は、澪の笑顔が見たいだけだったのだ。

    彼女が笑ったらどれだけ綺麗な顔なのだろうという、好奇心だった。

    彼女はいつもうつむいていたから、私が何とかしなければ、と思った。

    64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 16:46:05.14
    ……考え事のはずなのに、私は澪のことしか考えられない。もっと考えるべきことがあるだろうに。地球温暖化とか、森林伐採とか。

    律「私は………………」

    私は、どうしても、澪のことを忘れられないようだ。

    苦しい。

    澪を遠ざけても苦しいし、近づけてもわずかな距離を気にしてしまう。

    私はいったい、どうすればいいのだ?

    律「…………くしゅっ」

    ……寒い。

    65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 16:48:31.84
    家に帰ると、聡が変な顔をした。

    聡「姉ちゃん、顔赤いよ?」

    律「え、マジ?」

    体温を測ってみたら、37度1分。

    律「なんだ、大したことないじゃん」

    聡「でも、微熱だからって安心しちゃまずいだろ……。これから上がるかもしれないんだし」

    律「私は滅多に風邪ひかないんだよ。だから、熱もこれ以上上がらない!」

    聡「だから、って意味が分からない。……とか言って、お姉ちゃんが一年生の時ひいてたじゃん」

    律「あのときは体が子供だったんだよ」

    聡「今も変わらないと思うけど」

    律「もう二年もたってるんだから、私の免疫たちも成長したはず。ま、明日には治るよ」

    67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 16:51:25.99
    翌日の金曜日。

    私は学校に一人で行った。熱はまだあったが、37度1分と昨日と同じだったので、大丈夫だろうと判断したのだ。

    朝のホームルームが始まるまで唯と談笑した。

    授業は真面目に受けた。

    昼休みの弁当は、エリたちと食べた。

    その後の授業もまじめに受けて、放課後になった。

    部室でお茶を飲んで、ワイワイ騒いだ。

    部活を終えると帰宅。もちろん、一人で。

    68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 16:53:51.22
    その金曜日。澪との会話はなかった。ただの一言も交わしていない。おはようの挨拶すらしていない。

    澪との距離をとれたのだ。

    喜ぶべきことのはずだ。一歩分の距離を忘れられる、良い機会だ。

    なのに私は、悲しかった。

    澪のことを想わずにいられなかった。忘れられるわけがない。律Bが、夢の中でそんなことを言っていたのを思い出す。

    考えすぎたのか、何だか頭が熱い。そういえば、寒気もするし。ぶるる、と体を震わせると同時に、咳が出た。

    律「…………ごほっ、けほっ」

    鼻水まで垂れてきた。

    70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 16:55:44.24
    土曜日。聡の予想通り熱が上がっていた。39度ちょうど。

    聡「……ほら、やっぱり」

    律「うるせー」

    聡「氷枕返るよ」

    律「サンキュー。あ、おかゆがほしい」

    聡「俺作れないから……澪さんとかに頼んで?」

    律「聡の役立たずー……げほっ」

    聡「大声出すから……あ、ちょっと用事があるんだ。だからどうであれ、看病とかはお姉ちゃんの友だちにしてもらわなきゃ……」

    律「姉を見捨てる気かー」



    71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 16:58:05.75
    聡「ごめんって」

    律「用事の内容教えてくれたら許してやらないこともない」

    聡「補習。期末考査で、ちょっと」

    律「勉強が出来ないとこも姉弟そろって同じとは……」

    聡「じゃあ、氷枕替えたら行ってくるから」

    律「……頑張って来いよー」

    聡「姉ちゃんもね」

    減らず口をたたき合いながらも、会話の内容は愛を感じさせ……るのだろうか。

    とにかく、聡の代わりになる助っ人が必要なようだ。

    72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 17:00:48.71
    律「……澪にどんな顔して、看病頼めるんだよ」

    聡が家を出ていったあと、私は一人自室で横になりながら、呟いた

    律「……ムギか和だよなあ。いや、憂ちゃんもいいかもしれない……げほっ、あー。体がだるい」

    目がかすむ。昨日学校休めば良かったと、いまさらながらに後悔した。

    律「とりあえず、梓と唯はないな。料理作れなさそうだし」

    律「ムギは……おかゆ作ったことあるのかな。憂ちゃんに頼んだら、唯が代わりに来そうだ」

    律「…………和かな」

    73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 17:03:14.54
    私のアドレス帳は、五十音順で並んでいる。

    [真鍋和]、を選択した――はずだった。

    しかし、実際に来たのは、唯。

    唯「りっちゃん、風邪引いたんだって?」

    律「な、なんで唯が?」

    唯「え、メール来たんだけど」

    私は焦って送信履歴を見る。[平沢唯]に送信されている。どういうことだろうか、そう思い、真鍋和の上に平沢唯が並んでいるのだと思いだす。

    律「…………これが憂ちゃんだったら」

    74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 17:06:05.88
    唯「任せてりっちゃん! 私憂をも看病したこともあるから!」

    律「……信用するぞ」

    唯「あ、でも私だけでうまく作れるか不安だったから、みんなにメールしたからね」

    へ、と口から変な音が漏れる。

    律「みんなって、誰?」

    唯「あずにゃんとムギちゃんと和ちゃんと澪ちゃん」

    律「…………澪も?」

    唯「? うん」

    唯は私のおでこを触ってきた。これは熱いね、目玉焼きがやけちゃうくらいだよ――病人の前でそういうこと言わないでくれ、と突っ込む気力はなかった。

    75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 17:08:54.92
    一番初めにムギが来た。二番目に梓。ちょっと遅れて和。

    唯「和ちゃん、おかゆってどうやって作るの?」

    そう言って、和と唯は階下に消えていった。ムギは梓ちゃん看病よろしくね、と言い残して、和と唯の後を追った。意外と薄情だ。

    梓と二人っきり。

    あまり、こういう機会はなかったような気がする。気まずいとはいわないまでも、ぎこちない雰囲気。

    梓「澪先輩、来ないんですかね」

    今回もまた、梓が話を振ってきた。

    律「…………みたいだな」

    76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 17:11:21.16
    梓「唯先輩、澪先輩にメール送り忘れたのかもしれませんね」

    唯先輩らしいです、と梓は微笑む。そんなわけがない、と私は心の中で否定する。唯は、さっき『澪ちゃん』と確かに言ったのだ。

    でも、それを言ったら、澪と私の間に何があったのかを言わなければいけないから――私は「確かに唯らしいな」と梓に同調した。

    梓「でも、風邪引いたのが休日で良かったですよね」

    律「よくねー」

    梓「え、だって明日に治ったら、また学校に来れるじゃないですか」

    律「……学校って楽しい?」

    梓「? もちろんですよ」

    77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 17:13:26.11
    律「物理とか、化学とかが?」

    梓「授業は楽しくないですけど、憂や純がいますし――純って、私の友だちですよ――それに、唯先輩やムギ先輩に会えるから、楽しいです」

    律「……そこで『律先輩に会えるから嬉しいです』っていごほっ! けほ!」

    梓「律先輩大丈夫ですか?」

    背中をさすってくれる。

    律「あ、ああ、なんとか」

    こんこん、と咳を続けたまま言う。

    78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 17:16:01.82
    数分経って、暇になったのか、梓は私の部屋を見回した。

    律「面白いものはないぞー」

    梓「一回来てるから知ってますよ」

    律「ああ、そういやそうだったな」

    梓「あれ、この写真立て何で伏せてあるんですか?」

    言いながら梓は、机の上に伏せられた写真立てを起こす。

    律「……写真見たら、元通りに寝かしとけよ」

    梓「……澪先輩と律先輩の写真、ですか。律先輩って写真うつりいいですね」

    律「そうか? そうだろー」

    79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 17:17:43.04
    梓「いつの写真ですか?」

    律「……中学生の時の、修学旅行。北海道に行ったんだよ」

    梓「ああ、だから律先輩クラークのポーズしてるんですね」

    律「冬なら雪が降ってたのかもしれないけど、夏行ったもんだからさ、全然北海道って気分がしなかったんだよ」

    思い返す。

    律「ラベンダーだらけの畑行って、小樽ってとこでガラスの白鳥買って、函館から夜景見おろしたな。とにかく移動が長いっての」

    梓「澪先輩も一緒だったんですか?」

    律「ああ、澪も一緒だった。途中、二人して迷子になってさ。先生が駆けつけてきてくれたっていうハプニングがあったけどな」

    ――澪。

    また、思い出してしまう。

    80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 17:20:45.53
    私の生きる世界には、澪との思い出が多すぎた。シャープペンに箸一膳。今学校で使っている靴だって、確か澪と一緒に買ったものだ。

    忘れることなんて、出来なかった。

    忘れられるわけがない。その通りだった。澪との思い出がたくさんある場所で、澪のことを忘れようなど、不可能なのだ。

    律「もう帰れないのかなー、って澪不安がってさ。私が必死に笑わそうとしたなあ」

    梓「そのときから、そういう関係だったんですね」

    律「そういう関係? なんか不穏な響きが」

    梓「あ、変な意味じゃありませんよ? なんて言うか……一心同体だったんですね、と」

    律「一心同体、ねぇ」

    81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 17:23:03.70
    今はどうだろうか、一心同体であるだろうか。そんなはず、ない。

    私たちは離れてしまった。いや、私が一方的に離してしまった。

    澪は、私の横を通り過ぎた時、泣いてはいなかったか――?

    そんな私の思考を中断するように、唯達が入ってきた。

    唯「お待たせ、りっちゃん! おかゆ作ったよ」

    和「どこに何があるか分からなかったわ」

    紬「ちょっと手こずったわね」

    唯「ほらほら、はい! りっちゃん、あーん」

    スプーン一すくい分のおかゆが、ほのかに湯気を立てている。

    82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 17:25:17.71
    律「あ、あーん……って、熱い!」

    唯「え、あ、ごめん。ふー、ふー、ふー……これくらいで冷めたかな? はい、もう一回あーん」

    律「あーん……おお、味はまとも」

    おかゆを咀嚼する。風邪の時に食べるものは何でもおいしく感じられる。

    唯「私が本気を出したらこんなものです!」

    律「……うん、なかなかイケる。ありがとう、唯、和、ムギ」

    唯「えへへー、……あれ? メール来た」

    おかゆの入った皿を和に渡し、唯は携帯を開く。

    和がふーふーしたおかゆを二杯ほど食べたとき、唯がそのメールを見せてきた。

    83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 17:28:05.16
    唯「澪ちゃんから」

    あとでいく。

    と、それだけ書かれた簡素なメール。

    和「ほら、律。口あけて」

    律「え、あ、ああ」

    三度目のあーん。

    あとでいく。どこに? 私の家に、だろう。あとっていつだ? 一時間後? それとも明日? 

    そんな考えが頭の中に湧く。思考が飽和して、私は脳はショートを起こす。

    どうせ後でくるんだ――そうまとめ、私はおかゆを食べることに専念した。

    85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 17:30:35.22
    聡が帰ってきたのは、それから一時間ほど経った後で、そのころにはもうおかゆは食べ終わっていた。

    唯「じゃ、聡君帰ってきたから私たちももう帰るねー」

    紬「早いうちに治してね? りっちゃん、ファイト!」

    ああ、わかってるよ、と心ここに非ずな風で答える。

    澪は、まだ来なかった。唯達が帰るのとすれ違いになるんじゃないか、と期待していたが、それすらも外れた。

    天気が崩れ始めてきた。

    86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 17:33:13.30
    午後二時。澪は来ない。

    午後三時。澪は来ない。どこか遠くで雷鳴が聞こえる。

    午後四時。まだ、澪は来ない。窓から覗ける外は、霧雨が降っていた。

    午後五時。来ない。雨が降るのは日曜日だったんじゃないか? とどこかにいる天気予報士に言いながら、しとしとと降る雨を見つめ続けた。

    午後六時――私もあきらめ始めた。澪は来ないのだ、と落胆すると同時に熱も下がりはじめた。37度3分。微熱の域だ。

    午後七時。聡が弁当を買ってきてくれた。聡のあーんは勘弁なので、三十分かけて一人で弁当を完食して見せた。普段なら十分もたたずに食べられるだろうに。

    午後八時。雨は本降りになっていた。家の中でも、雨粒がアスファルトを叩く音が聞こえる。

    ああ、今日はもう来ないだろうな。そんな諦観が胸中を支配し始めたなか。

    ――そんななか、田井中家のインターホンは鳴ったのだった。

    87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 17:35:28.34
    聡が私の部屋に、澪を入れた。

    長い髪の先端は、雨にぬれている。履いているジーンズの裾も、三センチくらい水が滲んでいた。歩いてここに来たのだ、ということがわかる。

    そんな澪の姿を私の目が捉えた瞬間、体中が熱くなった。熱だけが原因ではないだろう。澪が、来てくれた――!

    律「…………澪。こんな時間に、大丈夫なのか?」

    澪「律の家行くって言ったら、ママも許してくれたよ」

    ママ、という発言について、追及はしなかった。

    澪「……私が行っていいのか、わからなかった」

    澪はそう漏らした。

    澪「律、教えてほしいんだ」

    88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 17:38:04.39
    律「……何を」

    澪「私が、律に何をしたのか」

    律「何も、してないよ」

    澪「嘘だ」

    律「本当だ」

    澪「じゃあなんで、私と一緒に学校行くのやめようとか言ったんだ? お昼ごはんも一緒じゃなくなってたし……」

    律「……私さ、今風邪ひいているんだ。変に頭使わせないでくれよ」

    我ながら、ひどい言い草だ。雨の中きてくれた人に、冷たいことを言っている。弁解にもなっていない、言い訳。

    澪「…………私は、律を、傷つけてしまったんだろ?」

    律「それは、それだけは、ない」

    89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 17:40:39.25
    澪「律に嫌われたんだ、と思った。学校に一緒に行くの止めよう、って言われたとき。ああ、私は律に何かしたんだって」

    律「何もしてないよ」

    ただ、私が身勝手にも、彼女を突き放しただけだ。

    澪のことを意識して、距離感を自覚して、私は暗くなってしまう。

    それを避けるために、私は、澪と距離を置いたのだ。一歩分よりも、もっと長い距離を。

    澪「私は、律の言葉に賛成したよ。かたくなに拒否したら、律に嫌われるんじゃないかって思ったんだ」

    澪の独白は続いた。

    澪「でも、たった一日律と居られないだけで、私は気が変になりそうだった」

    だから、と澪は懇願してくる。

    澪「せめて、理由だけ聞かせてほしい。そうしたら、気が楽になるから」

    90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 17:43:25.57
    理由?

    そんなの決まっている。

    私は澪のことを好きだから、澪を遠ざけたのだ。

    私の恋心は、あってはいけないものなのだ。

    私自身や、私たちの関係をも壊す、危険な爆弾。

    澪の笑顔をもう、見ることが出来なくなるかもしれない。

    必死に、澪のことを忘れようとした。

    それは確かに不可能だろう。私の周りには、澪との思い出でいっぱいだ。でも、少しくらいは忘れられるはず。

    だから、澪との距離を広げた。

    92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 17:46:16.16
    澪「律、私が何かしたなら謝る、謝るから……」

    私は、澪の顔を直視できなかった。

    だって、澪は泣いていたから。

    私はなぜ、澪に近づいたのか。澪の笑顔を見る為に、だ。

    それがなんだ。今、澪は泣いている。私が、泣かせてしまった。

    律「………………」

    何をどう言えばいい? 律B、いるなら教えてくれよ。私は今どうすればいい?

    全部をさらけ出すか? 澪のことが好きだと告白するか? でもそれが、私たちの関係をぎこちないものにしたら……。

    今でさえ、私と澪の関係は危うくなっている。そんなところで告白なんて、火に油を注ぐようなものだ。

    とにかく、何か言わないと、この場は切り抜けられない。

    この場に限って、雄弁が金で沈黙が銀だ。

    95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 17:49:24.23
    律「…………言えない」

    澪「……何で、だ?」

    律「言ったら、澪は私のことを軽蔑するかもしれないから」

    澪「しない、絶対にしない」

    律「私は、臆病なんだよ。何かを失うのがとても怖いんだ」

    澪「私もだよ」

    律「真実を言ったら、澪を傷つけてしまうかもしれない」

    澪「気にしない」

    律「澪との仲が壊れるかもしれない」

    澪「……そうしたら、また一から始めればいい。だから」

    ………………………………。

    その言葉に私は、すがりたくなった。

    97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 17:52:14.98
    律「澪」

    澪「何?」

    律「また一から始めることになってもいいか?」

    澪「いい」

    ――今なら、言っても許されるだろうか。

    心変わり、というにはあまりにも唐突な心理の変化。

    全てを言えば、彼女は――澪は、泣きやんでくれるのだろうか……?

    不安に胸が震える。

    澪「律、私は律のことを軽蔑するような人間じゃない。断じてない」

    震えた声音で言う澪。

    ああ、そうだ、澪は優しいのだ。

    恐がりで人見知りだけど、澪は親切なのだ。私は知っている。だてに、澪の幼馴染ではない。

    98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 17:55:14.11
    今なら、言っても許されるんじゃないか。

    疑念が確信に変わる。彼女なら――澪なら、きっと、私の言葉を受け止めてくれる。

    律「私は澪のことが好きでたまらない」

    澪は無言だった。構わず私は語を継ぐ。

    律「でも、澪にそう言ったら、澪とわたしの距離が離れてしまうかもしれない。――だから、私は澪と一緒に学校に行くのを拒んだんだ」

    独白は続く。

    律「……私は、澪と一緒にいても距離感を自覚しちゃうんだ。澪と一緒にいなくても、澪のことばかり考えてしまう。私はどうしたらいいのか分からないんだ」

    私は苦笑して。

    律「なんか、意味の分からない台詞になったな。風邪ひいてるからさ、ちょっと変なんだ今。澪のことが好きだから澪と離れたってことだけ伝わればいいよ」

    雨の音が相変わらず響いていた。うるさい。今はシリアスな場面なんだ。ちょっと空気を読め。頭が混乱に混乱して、ハイになっていくのが分かる。 

    私はもう言ってしまった。後戻りはできない。後悔はしていない。だってまた、一から始められるのだと、澪が言っていたから。

    律「――澪、大好きだ」

    100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 17:58:10.25
    駄目押しとばかりにそれだけを口にして、私は布団の中に丸まった。

    布団を一枚隔てた向こうで、澪はどんな顔を浮かべているのだろう。驚愕? 微笑?

    澪「…………あのさ」

    律「…………何だよ」

    澪のその声のトーンに、嫌悪の響きはない。私は若干安堵する。

    澪「律、律は臆病なんかじゃないよ」

    律「……何言ってるんだよ、澪」

    布団越しの澪の台詞は、くぐもって聞こえる。

    101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 18:00:17.91
    澪「律は、私に全部言ってくれた。全然、臆病なんかじゃない」

    律「風邪で、ハイになってるだけだよ」

    澪「それでも、さ」

    だって、と澪は続ける。彼女の浮かべている表情は分からないが、喜んでるんじゃないかと云うことは、口調で分かった。

    澪「私は、律にずっと言えなかったんだから」

    何を?

    澪「律、私は律が大好きだ」

    凛とした声。

    胸が爆発しそうになった。頭が白紙になって、何一つ考えられなくなる。

    102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 18:02:11.55
    澪は、今、何と言った?

    澪「でも、律の隣にいるだけで、私は緊張しちゃうんだよ。だから、律に面と向かって言うことはずっと出来なかった」

    布団の中で咳込む。風邪が原因じゃない、気恥ずかしさが原因だ。

    澪「律、私は律が好き――私も律が好きだ」

    その言葉は、世界中にあるどんな名言よりも、価値のあるものだった。私の葛藤とか迷いを全て帳消しにしてくれる、金言。

    律「……本当?」

    澪「本当」

    律「……人が風邪で寝込んでるって言うのにさ、驚かさないでくれよ」

    私は布団から顔を出す。

    澪「これで、仲直りできたかな、律」

    律「……ああ。ごめんな、澪。私が、勝手に、澪のこと……」

    澪「いいよ。気にしない」

    嬉しさとか、戸惑いとか、たくさんの感情が私の中でごちゃ混ぜになる。私の恋した幼馴染は、どこまでも優しかった。

    103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 18:04:26.96
    律「…………あとさ、もう一つごめん。その、さっき、泣かせちゃって」

    澪「それも、気にしてない」

    律「そっか…………」

    嬉しさで涙があふれそうになる。いつぞやの学園祭ライブの時の感動と、似ていた。

    澪「どんなことされてもさ、私は、律のこと嫌いになれないんだよ」

    律「……ありがとう、澪」

    果たして、何に対しての『ありがとう』だったのか。許してくれたこと? それとも……。

    澪の顔を見やる。涙の代わりに笑顔が浮かんでいた。いつか見た、澪の綺麗な笑顔。

    私もつられて笑顔になる。そうだ、泣いてはいけない。澪だって、私の泣き顔は見たくないはずだ。笑わなきゃ、澪に申し訳がない。

    104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 18:07:01.12
    律「澪、好きだ」

    澪「私も、律、好きだ」

    お互いの気持ちを確かめあえるよう、ずっとそう言いあった。好きという言葉によって、どこまでも繋がっているのだ、と実感できた。

    雨音のBGM が、どこか心地いい。

    私たちの関係は、一から始めなければならないようだった、

    友達としてではなく、もっと親しい関係――恋人として。

    このままずっと二人でいような。

    私は澪にそう言った。

    ああ、ずっと。

    澪は私にそう返した。

    私と澪は、最初から繋がっていた。ただ私たちが、そのことに気づいていないだけで。私の独り相撲でしかなかったのだ、と。

    105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 18:09:23.08
    澪「月曜日からは、また私と二人でさ、学校行こうな?」

    律「……いいのか?」

    澪「当たり前だろ、律」

    休み明けの登校が、何だか楽しみになってきた。ああ、梓も言っていたっけ。学校に行くのは楽しい、と。だって、みんなと会えるから――。

    澪「じゃあ、月曜日までに風邪、治しておいてくれよ?」

    律「わかってるって」

    澪が部屋を出ていく。……澪もそろそろ帰らなきゃいけない時間だもんな。心の奥底で寂しいという感情が湧きあがるが、口には出さない。

    だってまた、必ず会えるのだから。私と澪は、これからもずっと一緒なのだ。

    澪との繋がりが溢れる自分の部屋で、ゆっくりと目を瞑る。

    今日ならいい夢が見られそうな、気がした。

    106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 18:10:15.42
    ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
    風邪は日曜日の午後に完治した。

    でも雨は降り続いていて、結局、月曜日の午前三時くらいまで道路をびしょ濡れにしていたという。

    月曜。私が起きたのは六時だったので、そのときは外に青空が広がっていたけれど。雨上がりの空だというのに、虹はなかった。

    ベッドから出てご飯を食べて歯を磨いて顔を洗って、そうして一日が始まる。同じ始まり方、だけど今日この日からは、いつもと違う一日が始まるに違いない。

    澪がインターホンを鳴らしに来る。私は家を出た。風邪治ったんだ? 澪の台詞に私は頷く。ああ、おかげさまでね。

    そして、二人は歩いて行った。

    自然と歩幅が合うようになっている。隣同士、肩を合わせて進む。

    澪の体に、私は寄り添う。何だよ、と澪は恥ずかしがるが、嫌がるそぶりは見せない。

    およそ五十センチメートルの距離は、もう、なくなっていた。

                                         終わり

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過去の名作たち

唯「澪ちゃん、待って」
憂「恋してた」
梓「あごらえせうてんぽ」
  1. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/02(水) 19:40:22 URL [ 編集 ]
    良い律澪だった…満足!
  2. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/02(水) 19:42:49 URL [ 編集 ]
    なにこの素敵な律澪
  3. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/02(水) 19:43:41 URL [ 編集 ]
    これは良すぎる
  4. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/02(水) 20:20:50 URL [ 編集 ]
    この二人の話しは本当に良いね。
  5. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/02(水) 21:01:32 URL [ 編集 ]
    小説の域に達してる
  6. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/02(水) 21:14:02 URL [ 編集 ]
    重すぎず良い!!
  7. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/02(水) 22:35:42 URL [ 編集 ]
    さすがこの二人、だな。

    これからも愛を育んでください。
    願わくば映画でもその関係を見せ付けて(以下略)
  8. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/02(水) 22:37:44 URL [ 編集 ]
    なにこれ、どきどきする…。
  9. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/02(水) 23:17:13 URL [ 編集 ]
    泣いた
  10. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/02(水) 23:41:42 URL [ 編集 ]
    映画でこのネタは無いだろ
  11. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/03(木) 08:02:05 URL [ 編集 ]
    いや、このネタじゃなくて幼馴染みネタ?ってゆーの?
    アニメでも描かれてるような関係が見たい(´`)

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