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梓「夏祭り」

  1. 名前: 管理人 2010/09/13(月) 00:35:40
    1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:33:07.17


    中野家

    梓「あ、電話。純からだ」

    梓「何だろ、こんな時間に」

    ガチャ

    純『あ、梓? 夏祭り行かない?』

    梓「えー、もう受験生だよ、私たち。もう少しまじめに勉強して……」


    2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:34:09.30
    純『高校生最後の夏なんだからさ、存分に遊ばないと!』

    梓「……まあ、そうかもしれないけど」

    純『勉強ばっかに根詰めてたら、頭がパンクしちゃうよ。ね?』

    梓「……たまにはいいかも、ね」

    純『でしょ? じゃあ決まり! 神社で待ってるねー』

    3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:34:52.40
    梓「ああ、神社のお祭りね」

    純『うん』

    梓「わかった。行くから待っててね」

    純『了解!』

    プッ

    梓「じゃあ、着替えようかな……ジャージ姿で行くのもアレだしね」

    4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:35:36.54
    三十分後

    神社  境内

    梓「お待たせ」

    純「やほー、梓。来ないかと思ったよ」

    梓「まさか。一度した約束は、守るたちなのよ。私」

    純「えへ、よかったー」

    梓「あれ、純一人だけ?」

    5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:36:07.25
    純「うん。そだよ」

    梓「憂は?」

    純「唯先輩と一緒にいちゃいちゃしてるって」

    梓「ああ、明日で唯先輩、帰っちゃうからね」

    純「うん」

    6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:37:07.07
    梓「もう、来年までは会えないのかな……唯先輩達と」

    純「今生の別れじゃあるまいし。大学寮に帰るだけでしょ」

    梓「ま、そうなんだけどね」

    純「じゃあ、行こうよ。お祭り」

    梓「何か、純と二人だけっての初めてな気がする」

    7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:38:06.32
    純「そうだっけ?」

    梓「うん。あまり覚えない」

    純「言われて見るとそうかも」

    梓「でしょ?」

    純「いっつも憂がいたからね」

    梓「うん」

    10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:39:03.29
    純「ま、いいじゃんいいじゃん。二人っきりってのもテンション上がらない?」

    梓「上がるね」

    純「夏祭りってさ、すごく興奮するんだよね」

    梓「わかる気がする」

    純「周りの喧騒っての? そういうのに囲まれてるとさ、テンションだだ上がりでさ」

    11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:40:00.63
    梓「うんうん」

    純「やる気みたいのがみなぎってくるの!」

    梓「あるある!」

    純「あ、早く行かないと!」

    梓「うん。行こっか!」

    12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:41:04.11
    夏祭り会場

    純「うわー、人で一杯」

    梓「人に酔いそうだね」

    梓「なんか、お金とか落としそう」

    梓「純、気をつけてね」

    13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:41:50.71
    純「うん、大丈夫だって。あ、金魚すくいしない?」

    梓「うん。いいね」

    純「おッちゃん、網ちょうだい!」

    屋台の主人「あいよ」

    純「よーし、五匹とるぞ!」

    14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:42:24.29
    数秒後

    純「……網破れた」

    梓「純、金魚すくいへタだねえ」

    純「ち、違うよ! 今回は手元が狂ったんだよ!」

    純「次こそは!」

    15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:43:05.25
    数秒後

    純「また破けた……」

    梓「はは。私にやらせて。もっとうまく出来るよ」

    純「な、じゃあやってみてよ!」

    梓「いいよ、驚かないでね?」

    17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:43:59.12
    数秒後

    梓「こういうのが出来ても、将来生きていけないわけで」

    純「ほーら、やっぱり出来なかったじゃん」

    梓「いや、私は別に? こういうところで才能が開花しても嬉しくないし?」

    純「負け惜しみにしか聞こえないよ」

    19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:44:50.33
    梓「いや、そういうんじゃなくてね。実際問題……」

    純「わかったから、次行くよ」

    梓「次何するの?」

    純「射的でもしよっか」

    梓「あ、射的は得意なんだ!」

    20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:45:26.57
    射的終了後

    梓「へへーん。どうよ! キャラメル二個!」

    梓「あれ? 純は何もないの?」

    純「くぅ! 何も言い返せない!」

    梓「へへー、射的は得意なんだ」

    22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:46:17.16
    純「おかしい、銃身が曲がってたのよ、あれ」

    梓「負けを認めなさい、純」

    純「悔しい! マジで!」

    純「じゃ、じゃあさ、型抜きしようよ! あれなら負けないよ!」

    梓「いいけど、泣かないことね!」

    24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:47:02.04
    型抜き終了後

    純「嘘だ……あと一センチくらいだったのに……なんであそこで割れる?」

    梓「経験の差ね」

    純「くー! 悔しい!」

    梓「まあまあ、負けて悔しいのはわかるから」

    純「うー! うー!」

    26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:47:49.73
    梓「あ、りんごアメ食べない?」

    純「……いいけど」

    梓「じゃ、買おうよ」

    純「うん」

    純「りんごアメ、二つください」

    28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:48:29.46
    屋台のおっさん「600円ね」

    純(一個300円? 高すぎない?)

    純「はい、600円」

    屋台のおっさん「毎度」

    純「はい、どうぞ」

    梓「ありがと、純」

    29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:49:15.34
    純「うーん、甘すぎる」

    梓「それがいいんじゃない」

    純「私辛党なんだよね」

    梓「え? いらないならちょーだい!」

    純「やだよ! 私のだもん!」

    梓「えー! けちー」

    30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:49:59.75
    純「それはそうと、次何する?」

    梓「くじ引きとか?」

    純「あれってはずれしかはいってないんだよ。一回もあたったことないもん」

    梓「うーん、じゃあ食べまくる?」

    純「いいね! そうしよっか」

    31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:50:56.91
    梓「まずは焼きとうもろこしね」

    純「その後は焼き鳥、綿アメ!」

    梓「焼きそば、チョコバナナ!」

    純「いいねえ、じゃあ、早速買いに行こうよ!」

    梓「うん!」

    32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:51:51.19
    数分後

    純「全部買ったけど……どこで食べよっか」

    梓「あ、あそこの石段のところでいいんじゃない?」

    純「あ、そうだね。そこにしよっか」

    梓「じゃあ、早く行こう。溶けちゃうよ、チョコ」

    33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:53:04.30
    石段

    梓「食べきれるかな?」

    純「大丈夫だよ! 明日から頭にカロリー使うんだから。今のうちに蓄えないと!」

    梓「そうだね。では」

    純梓「いただきまーす!」

    34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:54:01.64
    純「うーん、やっぱり綿アメおいしい!」

    梓「辛党じゃなかったの?」

    純「綿アメは別格だよ」

    梓「ふーん、あ、焼きとうもろこし美味しい」

    純「去年唯先輩さ、リスみたいにそれ、食べてなかった?」

    梓「ああ、げっ歯類みたいにね」

    36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:55:11.94
    純「あれは笑ったな~」

    梓「あれ、憂直伝の食べ方らしいよ」

    純「へー、平沢家ではあーやって焼きとうもろこし食べるんだ」

    梓「うん。憂がやってる姿想像したらおっかしくてさー」

    純「あー、確かに」

    37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:56:03.30
    梓「実際、あーやって食べる方が難しいよね」

    純「だね」

    純「チョコバナナは……普通だなぁ」

    梓「あ、焼き鳥はうまい! いいね、このタレ」

    純「あ、本当だ。すごい美味!」

    38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:57:00.43
    梓「憂も誘えばよかったねー」

    純「本当だね」

    梓「憂と一緒に食べたら、あの食べ方見れたかな?」

    純「あー、みれたかもね。つくづく惜しいことをした!」

    梓「来年は誘おうね!」

    純「うん。来年は――」

    39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:58:04.13
    純(来年、か)

    純(私たち、大学生になってるんだ)

    純(想像できないなぁ)

    純(来年、また来れるかな?)

    梓「――どうしたの? 純」

    純「ううん。なんでもない」

    40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 20:59:01.52
    梓「あ! 花火!」

    純「え? どこどこ?」

    梓「向こう向こう! ほら!」

    純「あ、本当だ!」

    梓「行ってみようよ、あっち!」

    純「え、ちょっとまっt――

    41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 21:00:01.34
    純が制止するより早く、梓は純の手を引いて走り出していた。

    梓「早く早く!」

    純「わかったから! 手を離して!」

    梓「あ、ごめんごめん」

    純「もー、せっかちだなぁ」

    梓「えへへ」

    42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 21:00:47.48
    純「歩いていこうよ。なくなるわけでもないし、ここからでも見えるし」

    梓「そうしよっか」

    純「あー、でもいきなり引っ張られるんで驚いたよ」

    梓「どっか怪我した?」

    純「ううん。大丈夫」

    梓「よかった」

    44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 21:01:32.51
    けたましい音を立てて、花火が燃え盛る。

    赤、青、緑。様々な色の花が、夜空を彩る。

    梓「綺麗だね」

    純「うん、とても」

    自然に感想がもれる。

    梓「でも、花火って何か寂しくならない?」

    45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 21:02:24.61
    純「え?」

    梓「すぐに終わっちゃうところとかさ、何か寂しいな」

    純「あー、わかるかもしれない」

    梓「ま、だから綺麗なんだけどね。一瞬で終わっちゃうから」

    純「――だよね」

    46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 21:03:14.21
    梓「夏、終わっちゃうね」

    純「そんな感じがするね」

    梓「あーあ、本格的に受験勉強やらないとなー」

    純「悪夢のような日々だね」

    梓「まったく」

    48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 21:04:00.69
    純「ま、それで大学は入れるんなら、お安いものなのかな?」

    梓「落ちたら悲惨だね」

    純「浪人は嫌だなー」

    梓「なのにお祭りなんか行ってるんだからね」

    純「ま、今日くらいは休んでもいいんじゃない?」

    49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 21:05:02.44
    純「明日から本気出すし」

    梓「明日もそれ言わないでよ」

    純「どんどん上乗せしてくんだ」

    梓「いまに破産するよ」

    純「そうかな?」

    梓「多分ね」

    50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 21:05:58.75
    純「でもさー、不安になってくるなー。受かるかどうか」

    梓「いくら勉強しても、そればかりはね」

    純「もー、大学も義務教育にして欲しいな」

    梓「だったら楽だよね」

    純「でしょ? 将来偉くなって、大学も義務教育にするんだ!」

    51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 21:06:52.83
    梓「応援してるよ」

    純「私が偉くなって……そのときは、梓を秘書にしてあげるね」

    梓「夢のような話だね」

    純「まあね、確かに」

    でもさ、と純は語を継ぐ。

    53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 21:07:46.07
    純「子供のうちしか、夢は見られないんだよ」

    純「今のうちに夢見といた方が得じゃない?」

    梓「あと二年しか、夢を見られないのかー」

    純「大人になったら、今度は夢を叶えるんだ」

    梓「なるほどー」

    54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 21:08:42.29
    純「あ、花火もクライマックスに近づいてきたね」

    梓「本当だ。どんどん大きくなってるからね」

    純「あーあ、もう終わっちゃうよ。私の安息」

    梓「まあね。でもさ、受験終わったら毎日がパラダイスじゃない?」

    純「まだ半年もあるよ……」

    梓「あ、本当だ」

    55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 21:09:13.21
    数十分後

    梓「花火、終わったねー」

    純「うん。帰ろうか」

    梓「うん。帰ろう」

    二人は神社を出た。

    57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 21:10:00.92
    純「お祭りの騒がしさがさ、まだ耳に残ってるよ」

    梓「うん。いきなり静かになったから、耳がきーんってなる」

    純「耳鳴りみたいだね」

    梓「そうだね」

    純「明日には直ってるだろうけどさ」

    58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 21:10:55.41
    静寂に包まれた夜の道は、なんだかとても気味が悪い。

    純「なんか、怖くなってきちゃった」

    梓「不気味だよね」

    純「ねえ、手繋がない?」

    梓「うん。繋ごっか」

    59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 21:11:57.67
    純「あー。手、繋いでると何か安心するよ」

    梓「確かにね」

    純「明日で、唯先輩たちともお別れかぁ」

    梓「しんみりとする話題、ふってこないでよ」

    純「でもさ、むなしくない?」

    60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 21:13:18.15
    梓「うん、むなしいって言うか、寂しいかな?」

    純「あーあ、これといったこと何も出来なかったなー」

    梓「そうかな? 楽しんでくれたと思うよ」

    純「そうかな?」

    梓「そうだよ。それにさ」

    61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 21:14:04.66
    純「何?」

    梓「唯先輩達にとって、私達と再開できたことが何よりも嬉しいんだと思うよ」

    純「……うん」

    純「そうかもね」

    梓はつい、と空を見上げる。

    溢れんばかりの星空。

    62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 21:14:59.76
    梓「夏っぽい夜空だね」

    純「あ、本当だ」

    梓「あ、あれ火星じゃない?」

    純「あの赤いの?」

    梓「うん」

    純「ああ、火星だね」

    梓「何か、イイね」

    純「うん。何かね」

    64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/12(日) 21:16:35.18
    梓「――ねえ、純」

    純「何? 梓」

    梓「来年も、また来ようね」

    純「今度は、皆で」

    梓「うん。皆で――」

    空を見ながら二人は、ゆっくりと歩いていく。

    より長く一緒にいられるよう、ゆっくりと歩いていく。

    梓の手の暖かさに、純はひたっていたかった。
                                   終わり

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