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梓「トリプルパラレリア」

  1. 名前: 管理人 2010/10/08(金) 18:29:08
    2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 19:46:44.10
    ども、中野梓です。
    はじめに断っておきますが、これからの話は私が経験した奇妙な三日間を振り返ってみたものです。

    その三日間は、三連休だったのですが、ある意味ではバタバタし、またある意味では何もありませんでした。

    私はその三日間によって、以前にも増してギターの腕が上達したわけでも、胸がほっこりする思い出を作れたわけでもありません。

    そこにあるのは、ただ三日間が過ぎた、という事実だけです。


    3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 19:51:05.66
    詳しく説明し始める前に、例の三日間の前日。言うならば「0日目」のことから話します。

    「0日目」、お弁当を食べながら、純がいきなり叫んだのです。

    4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 19:52:09.66
    【0日目・梓】

    純「やったー!」

    ムシャムシャとパンを食べていたかと思うと、いきなり純は歓喜の声をあげました。

    喜んでるみたいだけど、どうせ大したことないんだろうなぁ。
    そうは考えても、少しは気になってしまうのがヒトの性です。

    しかしここで食いついてしまったら、目を輝かせて私たちの反応を心待ちにしている純の思う壺になってしまいます。ううむ。

    5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 19:57:48.86
    憂「どうしたの、純ちゃん?」

    私よりも先に憂が聞いてくれました。
    さすが憂。私なんかよりずっとぴゅあぴゅあはーとです。

    純「うん、明日から三連休だからさ!」

    憂「そうなんだぁ」

    三連休。年に数回ほどしかないであろう貴重な三日間だ。
    大したことだった。ごめんね、純。


    こうして私は、もとい私たちは、来たる三連休への喜びとゴールデンチョコパンをムシャムシャと噛み締めていたのです。うむ、甘い。

    6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 20:04:25.36
    【0日目・純】

    ゴールデンチョコパンをゲットして意気揚々と教室に帰った私は気がつきました。

    明日から三連休が始まるということに!

    純「やったー!」

    歯にこびり付いたチョコも気にせず、声をあげました。

    梓と憂は気付いてるかなぁ?
    そう思って2人の反応を伺いました。
    なんだか梓が複雑な表情をしています。どうしたんだろう?

    9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 20:09:33.61
    憂「どうしたの、純ちゃん?」

    純「うん、明日から三連休だからさ!」

    よくぞ聞いてくれた、憂!
    一瞬だけ無視されるかと思っちゃったよ。

    憂「そうなんだぁ」

    とにかく2人とも三連休のことは知らなかったみたいです。
    梓の頬が緩むのが見えました。

    それにしても、明日から三連休だと思うと、ゴールデンチョコパンもいつもより甘く感じます。甘い。

    ああ、早く明日にならないかなぁ。

    11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 20:14:00.46
    【0日目・憂】

    憂「そうなんだぁ」

    三連休かぁ……。
    純ちゃんから少し分けてもらったパンを食べながら、私は三連休に何をしようかと考えていました。

    お姉ちゃんの家に遊びに行こうかな?
    それとも、お姉ちゃんを家に招待しようかな?

    と、そこでお姉ちゃんのことばかり考えている自分が恥ずかしくなりました。
    ダメダメ。お姉ちゃんは大学生なんだから忙しいんだっ。

    明日からは自分のやりたいことをやろう。
    そう決めてから、ゴールデンチョコパンをまた一口食べました。
    それにしても、甘いです。

    13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 20:20:26.88
    【一日目・純】

    純「ふぁ~~あ」

    今は何時だろう?
    枕元をまさぐりましたが、携帯が見当たりません。昨日の夜はあったはずなのに……。

    リビングに降りて、時計を確認します。
    10月7日のAM10:30。
    どうやら私はなかなかグッスリ眠れたようです。

    14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 20:22:49.17
    純「お母さんご飯ー」

    ボサボサの髪を直すのもそこそこに、私は朝ご飯を要求しました。

    しかし、いつまで経ってもお母さん、すなわち朝ご飯は現れません。
    おかしいと思って台所を覗いて見ても、誰もいないのです。

    純「あれー?」

    出掛ける用事なんてまったく聞いてません。
    せめて書き置きでも残しておいてくれれば良かったのに……。

    15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 20:27:16.02
    仕方ないので、私は自分で簡単な朝ご飯を作ることにしました。

    器にコーンフレークを入れ、上から牛乳をかけます。
    純特製の朝ご飯です。簡単です。


    コーンフレークを食べ終わり、器に残った牛乳を飲み干した後、私はあることに気付きました。

    辺りがやけに静かすぎる、と。
    もう昼前だというのに、外から人の気配が感じられないのです。

    外でなにかあったのかな?

    純「よしっ」

    パン、と手を叩いてから、私は外出する準備を始めました。
    私は、考えるより先に行動を起こすタイプなのです。

    16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 20:32:12.90
    【一日目・憂】

    寝過ぎたかなぁ?
    と思い、目覚時計を見やると、短針が9の数字を指していました。

    憂「たっ、大変!」

    ベッドから飛び起きて洗面所へ向かったところで思い出しました。

    憂「……三連休だぁ」

    17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 20:35:07.63
    三連休――休日とは、究極的には何もしなくていい日なのです。
    お姉ちゃんもいないですし。

    私は余裕をもって髪を整えてから、コーヒーを淹れました。

    玄関から取ってきた新聞を広げます。ちょっぴりインテリになった気分です。

    一番目を引いたニュースは、とある有名なロックバンドが、今日解散ライブを行うというニュースでした。
    梓ちゃんは知ってるのかなぁ、と思いながら私は新聞をめくりました。

    18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 20:39:20.67
    昼食を済ませた後、私は携帯に着信が入っていることに気付きました。

    相手は純ちゃんでした。
    遊びに行く約束でもしようとしたのでしょう。ワクワクしながら電話をかけている姿が目に浮かびます。

    私はすぐに純ちゃんに電話をかけ直しました。つまりは私もヒマだったのです。

    しかし、結論から言えば、純ちゃんが電話に出ることはありませんでした。

    電源が切られているわけでも、留電に繋がるわけでもなく、いくら待ってもコール音が鳴り続くだけでした。

    20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 20:44:20.38
    少し不安になりましたが、純ちゃんのことです。きっと心配ないでしょう。
    ……なんて言ったら純ちゃんは怒るかな。

    本当にヒマになった私は、この三連休の間に出された宿題に取り掛かりました。学生の本分です。
    もともと勉強は嫌いじゃないので、勉強はヒマを潰すにはもってこいなのです。

    こんな風にして、私は三連休の一日目を終えました。

    誰とも会うことはありませんでした。

    21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 20:50:08.23
    【一日目・梓】

    その日は何故だか早くに目が覚めました。

    両親とも不在だったのですが、そう珍しいことではないので、私は記念すべき三連休の初日に一人でいられることにむしろ解放感を覚えました。

    梓「自由だーっ」

    自分で言ったちょっと古いお笑い芸人のギャグに恥ずかしくなります。

    これが三連休の魔力なのです。きっとそうだ。

    22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 20:54:33.76
    昼過ぎには出掛けようと決めました。

    確かこの三日間、楽器店でセールをやっていたはずです。
    どうも私はセールという言葉に弱いですね。

    それからトンちゃん。彼にご飯をあげなきゃいけません。

    楽器店を経由してからの桜高。
    進むべきルートを頭の中でなぞりつつ、朝ご飯を食べました。

    23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 20:58:49.57
    昼過ぎ。
    私は身だしなみを整え、家を出ました。

    ここで私はある異変に気付きます。

    あれ、人がいない……?

    中野家の周りは、もともと人や車のあまり通らない一帯ではあったのですが、それらの人の気配や車のエンジン音がまったく聞こえなかったのです。
    本当にまったく聞こえません。

    24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 21:02:38.46
    珍しいこともあるもんだなぁ。
    私は、その程度にしか考えていませんでした。

    楽器店へ向かう途中の大通りに出た時も、街の様子は相変わらずで、その時やっと、私は少し不安になってきました。

    梓「なんで……?」


    案の定、商店街にある全てのお店は絶賛営業停止中で、お目当ての楽器店も例外ではありませんでした。

    梓「セール……」

    こんな時にもセールを気にする私は、意外と鈍い性格なのかもしれません。

    27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 21:07:56.42
    若干の予定変更にもめげず、私は桜高へと足を運びます。

    道中、奇怪な街の様子についての考察を始めました。

    どうして誰もいないのだろう?
    休みだからみんな寝てるのかな?
    私以外に起きてる人はいるのかな?
    憂は? 純は?

    考えれば考えるほど疑問ばかりが浮かんできたので、私は考えることをやめました。私は鈍い性格なのです。

    桜高の校門をくぐった時、これまでの楽観的な考えが打ち砕かれてしまいました。

    梓「わ、わっ」

    桜高の窓ガラスが無残にも粉々に破られていたのです。メタメタです。

    29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 21:14:57.82
    誰もいない街角。叩き破られた母校の窓。
    それらを前にして、私が一番心配したのは、他でもないスッポンモドキのトンちゃんでした。

    梓「トンちゃんっ」

    私は部室に向かって走り出しました。
    学校には守衛のおじさんさえいなかったので、面倒臭い手続きをすることなく校舎に入れました。

    梓「はぁ……はぁ……」

    勢いよく部室の戸を開けました。

    どうやら破られていたのは一階の窓ガラスだけだったようで、部室の窓ガラスはすっかり無事でした。

    30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 21:21:52.02
    梓「トンちゃん!」

    もちろん、窓ガラスが破られていたとしても、私は意に介しません。
    私の頭の中はトンちゃんでいっぱいだからです。ああ、トンちゃん。

    水槽の中で、トンちゃんは元気いっぱいに泳いでいました。
    私の気配に気付いたのか、短い手足を一生懸命に動かしてこちらに可愛いお鼻を向けてきます。

    ああ、トンちゃん。よくぞご無事で!

    スッポンモドキという名のか弱いお姫様を助け出す王子様さながらに、私は水槽を抱えて桜高を後にしました。

    校舎一階の窓ガラスと同じように、トンちゃんのお家が粉々に砕かれる可能性がないとは言い切れなかったからです。

    31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 21:26:43.68
    風呂

    34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 21:59:27.62
    ──────────────

    梓「うわ、暗い」

    家に帰ってから、ギターの練習をしたり、トンちゃんと引っ張り合いをして遊んだりしていると、いつの間にか夜になっていました。

    淡い期待を抱いて窓の外を見てみるものの、相変わらず、外には文字通りの閑静な住宅街が広がるばかりです。

    夜になると、不安な気持ちは増幅してくる気がします。
    これは夢だ。きっとそうだ。

    35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 22:06:01.86
    少しでも不安を紛らせようと、トンちゃんにご飯をあげることにしました。

    梓「ご飯だよー、トンちゃん」

    トンちゃんはスイスイと寄って来て、自慢のお鼻でご飯をつっつきました。

    しかし、彼はすぐにプイと顔を背けると、水槽の底へと戻っていってしまいました。

    どうしたんだろう?
    トンちゃんはご飯が大好きなはずです。
    満腹な時と体調が悪い時以外は夢中になってご飯を食べます。

    36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 22:12:37.03
    トンちゃんには、毎日決められた時間に、私が責任を持ってご飯をあげているので、今日に限って満腹であるはずがありません。

    さっきまで元気に遊んでいたので、体調が悪いとも思えません。

    梓「トンちゃんどうしたの? ご飯、食べないの?」

    心配する私をよそに、トンちゃんは鼻をヒクヒクさせるばかりです。

    梓「トンちゃんが食べないんだったら私が食べちゃうよ? いいの?」

    ヒクヒク。ヒクヒク。

    いくら私とトンちゃんが仲良しでも、ヒクヒクだけじゃ伝わらないことだってあるのです。

    梓「もうトンちゃんなんて知らないっ」

    私はギターの練習に戻りました。

    37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 22:17:34.05
    ──────────────

    しばらくすると、眠気が襲ってきました。

    カーテン越しに街の様子を伺います。
    実際に見なくても、状況に変化がないであろうことはなんとなく分かりました。

    ふと水槽に目をやると、トンちゃんが心配そうに私を見上げています。

    梓「トンちゃん……」

    トンちゃんは私を見捨てないでいてくれます。

    世界に私とトンちゃんしかいないような気がしました。
    案外、本当にそうなのかもしれません。

    39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 22:24:05.20
    梓「ありがとね、トンちゃん。きっと夢なんだよね。明日になったら、全部もとに戻ってるよね」

    トンちゃんの鼻の穴がヒクヒクと動きました。
    これはトンちゃんなりの相槌に違いありません。私とトンちゃんは仲良しなのです。

    さっきはごめんね、トンちゃん。

    トンちゃんから元気を貰った私は、眠ることにしました。

    ベッドにもぐり目を瞑ると、あっという間に意識が遠のいていくのが感じられました。

    40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 22:30:38.49
    【二日目・純】

    それにしても、スケールの大きな夢だったなぁ。
    私以外の人間がみんないなくなるなんて。

    確かそんな設定の映画があったような気がしますが、生憎私はあそこまでヘビーな現実を受け止める強いハートを持ち合わせてはいません。

    昨日は、「これは夢に違いない」と判断するやいなや、家に帰ってグウグウと眠りこけてしまいました。

    さぁ、気を取り直して、三連休をエンジョイするぞっ。
    朝の日差しが眩しいっ。

    41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 22:35:58.84
    枕元の携帯を開きました。
    そういえば昨日の夢では携帯が見つからなかったっけ。

    ディスプレイに表示された日付が私の目に写ります。
    10月8日。

    おや?
    一瞬の思考停止。

    昨日、リビングで確認した日付は10月の7日。そして今日は8日。

    一見当たり前のようにも見えますが、ここで言う「昨日」というのは、まるまる一日が私の夢だった「昨日」のはずです。

    私の10月7日は何処へ!

    42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 22:41:51.67
    まさか昨日は一日中眠っていたんじゃ……。
    いや、一日中寝ているなんて、私のお母さんが許すはずありません。
    彼女は私がどれだけ寝ていたとしても、お昼には叩き起こしにやって来ます。

    じゃあどうして?

    答えは一つしか考えられません。
    昨日の10月7日が「現実」だったのです。

    いやいやまさかそんな。
    そんなバカな。そんな……。

    純「お母さぁーん!」

    私は急いで階下に降りていきました。

    純「はぁ……、お母さんっ?」

    お母さんはいません。
    やっぱり、という気持ちになり、続いて私はパジャマ姿のまま家から飛び出しました。

    43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 22:47:19.29
    ──────────────

    数十分後。
    私はまだ上手く状況を掴めずにいました。

    もしかしたら!
    という気持ちでもう一度携帯を確認しました。
    10月8日。

    やはり10月8日に変わりはなかったのですが、先ほどと違ったことがありました。
    携帯に着信が入っていたのです。

    相手は憂。

    純「ういいいいい!!」

    ほとんど泣きそうになりながら、震える手で憂に電話をかけました。

    44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 22:53:19.17
    【二日目・憂】

    ああ、私としたことが、学校にノートを忘れてくるなんて……。

    きっとこれが三連休の魔力なのです。
    三連休に舞い上がっていたせいで、すっかりカバンに入れ忘れてしまったのです。

    あのノートがなければ宿題を終わらせられません。私は朝から学校へと向かっていました。

    45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 22:58:33.74
    三連休のど真ん中、それも早朝とあれば、街はひっそり静かです。

    まるで私以外に誰もいないみたい!
    ファンタジックな妄想に、自然と足取りは軽くなります。

    そうこうしているうちに、私は桜高に到着しました。

    憂「え……」

    先ほどまでの軽やかな足取りが嘘のように重くなり、あまりの驚きで呆然としてしまいました。

    なんと桜高の窓ガラスが粉々に破られていたのです。メタメタです。

    46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 23:04:00.97
    憂「ど、どうしよう……」

    こんな時はどうすればいいんだっけ?
    警察? 先生?
    緊急時には正常な判断が出来ません。

    桜高の先生に連絡しようにも、連絡先が分からなかったので、私は110番通報することにしました。
    初めての通報に緊張して押し間違えないようにと、慎重に1、1、0、と番号をプッシュします。

    ところがこの時困ったことが起きました。
    警察に電話が繋がらないのです。
    いくら三連休だとしても、警察がお休みだなんて考えられません。

    それから何度かかけ直してみても、警察が電話を取ることはありませんでした。

    47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 23:09:15.30
    私は、どうしようかと途方に暮れてしまいました。

    学校には忘れていったノートが残っているため、このまま家には帰れません。
    そうかと言って、何者かにガラスを破られ、見るも無残な姿になってしまった母校の中に入って行くのは少々気がひける思いがします。

    平沢憂、決断の時!

    散々悩んだ挙句、私は校舎に向かってゆっくりと歩き始めました。

    憂「大丈夫、大丈夫」

    人がいるような気配は感じられないので、学校に入っても安全だろうと思ったのです。

    48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 23:14:21.83
    思ったとおり、学校の中にはガラスを破った凶悪犯どころか、守衛のおじさんさえいなかったので、面倒な手続きをすることもなく校舎に入れました。

    自分の教室でノートを回収してから、私は部室へと向かっていました。
    なんとなく、行かなくてはならないような気がしたのです。

    ドキドキしながら部室の戸を開けると、真っ先にピカピカの窓ガラスが目に映りました。

    憂「良かったぁ……」

    50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 23:18:55.60
    ホッとして椅子に座ったところで、私は、部室からあるものがなくなっていることに気がつきました。

    憂「トンちゃん……?」

    トンちゃんが、それも水槽ごと姿を消していたのです。

    私は、最初こそ焦ったものの、それが梓ちゃんの仕業だと思い当たると、すぐに落ち着きを取り戻しました。

    きっと梓ちゃんが学校に来て、トンちゃんを連れて帰ったんだ。

    もしかしたら、梓ちゃんもあの破られた窓ガラスを見たのかもしれません。

    51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 23:23:38.15
    念のために確認しておこう、と私は梓ちゃんに電話してみることにしました。

    そういえば、昨日は結局純ちゃんと連絡が取れなかったなぁ。
    ヒマだったら折り返して連絡くれればいいのに。

    携帯を確認してみても、誰かから着信が入っている様子はありません。

    きっと純ちゃんの用事は大した用事ではなかったのだ、と結論づけ、私は梓ちゃんに電話をかけました。

    52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 23:27:43.19
    しかし、梓ちゃんは電話に出ませんでした。

    昨日の純ちゃんと同じく、コール音が続くばかりで一向に出てくれません。

    もしかしてまだ寝てるのかもなぁ。

    そんなふうに考えながら、私はノートを小脇に抱えながら、メタメタの桜高を去りました。

    家に向かう途中でやっと私は、街の奇妙さと、自分の置かれた状況に気付くことになりました。

    53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 23:33:01.84
    【二日目・梓】

    三連休の二日目。
    眠い目を無理矢理こじあけ、目覚時計を見ると、もう10時になるところでした。

    昨日は早寝したのに、随分寝てしまいまったようです。

    梓「……あっ!」

    私は窓辺に駆け寄ります。
    街は、世界はどうなったのでしょう。

    梓「……ああ」

    どうやら事態は昨日と変わっていないようです。

    昨日からいったい何が起こっているのでしょう。さっぱり分かりません。

    54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 23:38:42.32
    私はベッドの上にモフッと俯せに倒れ込みました。
    うにゃー、と自分でも訳の分からない叫び声をあげました。

    ひとしきり叫び、少しだけ気が済むと、トンちゃんに「おはよう」を言ってないことに気付きます。
    私はトンちゃんのもとへと向かいました。

    梓「ト~ンちゃ……」

    あれ?

    梓「トンちゃん?」

    昨晩トンちゃんの水槽を置いた机の上に、なにも乗っていません。

    私は目を疑いました。
    トンちゃんが、その愛くるしい姿を水槽ごと消してしまったのです。

    55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 23:45:45.73
    こうなってしまっては冷静でなんかいられません。

    私は、あの中野あずにゃんからはとても考えられないような般若の形相で、家中を探し回りました。

    トンちゃんは、自分で水槽から出られるような身体ではないし、手だってまるでカマボコみたいです。
    カマボコでは水槽を抱えて歩くことも出来ません。

    私は、誰かがトンちゃんを連れて行ったのではないか、と考えました。

    57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 23:51:16.41
    ──────────────

    数十分後、私はフラフラと街を彷徨っていました。

    どうせ誰もいないことは分かっているので、服装はパジャマのままだし、髪は結っていません。

    全てはトンちゃんのためです。

    昨日から謎の現象に巻き込まれている私の唯一の心のよりどころはトンちゃんだったのです。

    彼を失ってしまっては、私はそのうち発狂し、ギターで鍛えた自慢の指で喉をかきむしって、その短い生涯に終わりを迎え……とまではいきませんが、ひどく寂しいのに変わりはありません。

    58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/06(水) 23:56:19.17
    気付くと私は桜高に辿り着きました。

    すると、そこで私はとんでもないものを目にしました。

    梓「え、直って……」

    なんと昨日はメタメタに破られていた桜高の窓ガラスが、今では全てピカピカに光っていました。
    私は一気に混乱します。

    まさか一日でガラスを全部交換できるとは思えません。もしそうならば、いったい誰が交換したというのでしょう。

    59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 00:01:01.64
    もしかして、昨日私が桜高に来たのは夢だったんじゃ……。

    それは一見筋が通っているように思えます。

    トンちゃんを家に連れて帰ったことも夢だったならば、きっと彼は今でも部室で鼻をヒクヒクさせていることでしょう。

    私は募る気持ちを押さえ、部室へと駆けて行きました。

    思った通りです。
    部室にトンちゃんはいました。
    昨日と同じく、私の気配に気付くと水槽の奥からスイスイと姿を現しました。

    梓「トンちゃん!」

    60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 00:06:46.70
    私は昨日と同じく、トンちゃんを家に連れて帰ることにしました。

    梓「もう大丈夫だよ、トンちゃん」

    そう言うとトンちゃんは鼻をヒクヒクとさせました。

    トンちゃん『梓ちゃんの方は大丈夫じゃないみたいだけどね』

    梓「う、うるさいっ」

    私とトンちゃんは親友同然です。

    61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 00:13:07.44
    家に帰っても、私は何かをする気にはなれませんでした。
    今の状況に、本格的に危機感を抱き始めました。

    もしかして、一生このまま……?

    お父さんやお母さんとも、憂や純とも、先輩たちとももう会えないの?

    梓「嫌だよぉ……」

    視界の端で水槽の中のトンちゃんがご飯を食べているのが見えました。

    62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 00:25:56.93
    あまり人いないみたいだし、このへんにしておく

    朝になっても残ってたら保守も兼ねて投下して、夜には完結させる

    64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 00:37:10.99
    >>63ありがとう

    寝る

    73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 06:30:20.98
    保守ありがとう

    まとめて投下できないから落ちない程度に間を開けて投下していく

    規制されないことを願う

    76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 07:52:14.14
    【三日目・梓】

    梓「んにゃ……」

    どうやら私はいつの間にか眠っていたようです。

    三連休の最終日だというのに、相変わらず街にはひとっこひとりいません。

    明日は学校あるのかなぁ。
    みんな来るのかなぁ。

    私はボンヤリとそんなことを考えていました。

    78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 09:00:30.73
    梓「あっ……」

    私はまたしても気付きました。
    なんと、またまたトンちゃんが姿を消しているのです。

    しかし、私はうろたえません。
    トンちゃんが部室に戻ったであろうことは、殆ど確定的に感づいていたからです。

    私は桜高へ行く準備を始めました。
    準備と言っても、誰に見られるわけでもないので、相変わらずパジャマのままです。

    玄関まで出て来た時、郵便受けに新聞が入っているのが見えました。

    80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 10:46:36.60
    この新聞を配達してくれた人は何処かにいるのでしょうか。

    考えてみても分からないので、とりあえず私は新聞を読んでみることにしました。

    ──────────────

    梓「えっ!」

    私は、とあるロックバンドが解散するというニュースに驚きました。
    明日、解散ライブを行うそうです。

    何処にも人がいないのに、ライブなんて……、と思いましたが、もしかしたら明日になれば何事もなかったように普通の生活が始まるのかもしれません。

    そんな僅かな希望を胸に、ふんすと意気込んで私は桜高にいるトンちゃんを迎えに、桜高へと出発しました。

    84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 12:29:29.37
    トンちゃんを家に連れて帰るのは、今日で三回目になります。
    もうお手の物です。

    無音の街を通り抜け、少しすると桜高に着きました。

    学校の窓ガラスは一枚も破られてはおらず、私は、やっぱり初日に見た惨状は幻覚だったんだ、と考えました。

    86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 13:28:46.46
    部室からトンちゃんを連れて帰る途中、どこかから甘い匂いがしてきました。

    花や香水の匂いとは違う……ええと、これはなんの匂いだっけ?

    私は、トンちゃんと一緒に匂いの元へと向かいました。

    そこは、私たちの教室でした。

    中を覗くと、教室の真ん中に見覚えのあるものが置いてあります。
    それは、かのゴールデンチョコパンでした。

    89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 15:30:41.49
    そのゴールデンチョコパンは、まるでずっと前からそこにあったように澄していて、また「僕を食べて」と訴えかけているようでもあります。

    その時、私のお腹が小さく鳴りました。

    トンちゃんがこちらを見上げます。

    梓「なにトンちゃんっ、仕方ないでしょ!」

    私がプンプン怒ると、トンちゃんはいつものように鼻をヒクヒクさせたあと、水槽の奥へ入ってしまいました。

    私はゴールデンチョコパンを食べました。
    もちろん、お腹が空いていたからです。

    一口、また一口と食べるうちに、三連休が始まる前日に純と憂と一緒にこのパンを食べたことを思い出しました。

    91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 17:00:02.38
    すると、そこでおかしなことが起こりました。

    フッと身体の力が抜けたかと思うと、私は上手く立っていることさえ出来なくなり、その場にへたりこんでしまったのです。

    徐々に意識も遠くなっていくのを感じ、焦ります。

    梓「あ……、トン、ちゃん……」

    失いかけの意識の中で、私が最後に目にしたのは、水槽の底から鼻だけを出してヒクヒクとさせるトンちゃんの姿でした。

    94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 18:56:10.58
    【三日目・憂】

    私以外の人たちがみんないなくなってしまったという奇怪な現象は、少なからず私を動揺させました。

    梓ちゃんや純ちゃんと連絡がとれなかったことも相俟って、私はいてもたってもいられなくなったのです。

    私は純ちゃんの家の前に来ていました。

    95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 19:28:19.02
    私の携帯に電話が来たということは、きっと彼女たちも何処かにいるはずなのです。

    自宅を除いた場合の、二人のいそうな場所を考えるにあたって、一番最初に思い付いたのは学校でした。
    が、昨日のような桜高の惨劇の中に、二人がわざわざ足を踏み入れるとは思えず、ならばいっそのこと直接会ってやろう、と思って来たのです。

    軽く深呼吸をしてからチャイムを鳴らしました。

    憂「……純ちゃん」

    無音。

    もう一度チャイムを鳴らしてみますが、音沙汰がありません。

    ドアノブに手を掛けてみると、どうやら鍵はかかっていません。

    私は意を決して家の中へ入って行きました。

    97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 19:45:11.10
    家の中で、純ちゃんはかわいらしい寝息を立てていた……なんてことはなく、ただただ沈黙が家中を支配していました。

    捜索を続けていると、私は純ちゃんの部屋を見つけました。
    隅のベッドには几帳面にシワを伸ばされたシーツが敷いてあります。

    純ちゃんにしては意外だなぁ、と感心していると、枕元に無造作に転がっている携帯電話が目に入りました。

    私は反射的に携帯を手に取ると、真っ先に着信履歴を確認しました。
    やはり昨日、私からの着信が一件入っています。

    つまり、純ちゃんは少なくとも昨日から、携帯も持たずに消えてしまったんだ。

    そう予想すると、私は純ちゃんの携帯をポケットに滑り込ませ、家を出て行きました。

    98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 20:03:52.33
    本当に不思議なことばかりで、次に自分がどうすべきかも分かりません。

    いつも通りならなにも怖がることはない。
    そう信じて、私は校舎へと入って行きました。

    まず向かったのは部室です。
    二人がいそうな場所を選んで歩きます。

    結果、二人は部室にもいませんでした。
    トンちゃんさえいない部室は、家にいる時よりもずっと寂しげに感じられます。

    憂「ふぇぇ……」

    そろそろ泣きたくなってきました。
    私はトボトボと部室を出ます。

    100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 20:26:56.49
    階段を降りて行くと、ふと甘い匂いが鼻をつきました。

    憂「あっ!」

    ハッと気付きます。
    これはあのゴールデンチョコパンの匂いに違いありません。

    憂「純ちゃんっ?」

    私は匂いのする方へ向かいました。
    ゴールデンチョコパンのあるところに純ちゃんはいるはずです。

    しかし、辿り着いた教室に純ちゃんはおらず、ゴールデンチョコパンも食べかけでした。

    この食べかけが何よりも私を安心させました。

    誰か、このパンを食べた人がいるんだ!
    純ちゃんかな? 梓ちゃんかもしれません。

    不安定だった心を落ち着かせられた私は、ゴールデンチョコパンをちぎり、ムシャムシャと食べ始めました。

    102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 20:34:56.94
    憂「あまっ」

    久し振りに心が暖かくなるような気がしました。
    まるで身体がフワフワと浮いているようです。

    フワフワとした気分を堪能していると、だんだん意識が遠くなっていきました。

    憂「あ、れぇ……?」

    それからあっという間に、私はその場で眠るように気を失ってしまいました。

    103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 20:36:02.85
    どうしよう
    オチがまとまらない

    106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 20:48:05.83
    【三日目・純】

    もうダメだ! 耐えられない!

    しかし、いくら嘆いても、世界は変わる気配がありません。
    自分の無力さを痛感します。

    私は、いっそ開き直ることにしました。
    どうせ誰もいないのなら、普段やれないことをやってしまおう。
    極度の寂しさの裏返しです。

    107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 20:53:29.43
    私は商店街へ赴くと、適当な店の中へ勝手に侵入し、片っ端から美味しそうなものを袋に詰め込みました。

    お菓子やジュースを始め、なるべく高級そうな食べ物を選びます。
    アイスは溶けるといけないので選びません。

    満足した私は、両手に袋をぶら下げて歩きます。

    行くあてもなくフラフラしていると、いつの間にか私は桜高の前に立っていました。

    つい三日前のことなのに、随分と懐かしい気がします。

    108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 20:58:51.69
    三連休に入る前日、憂や梓とパンを食べていた時のことを思い出しました。
    あの時はまさかこんなことになるなんて考えもいなかったなぁ。

    その瞬間、私の頭の中で、プツンと何かが切れました。

    両手の袋を放り投げると、グラウンド脇に転がっていた、恐らくソフトボール部のバットを掴み上げ、校舎の窓ガラスに片っ端から叩き付けていきます。

    頭は真っ白になっていました。

    溜まっていた不安や恐怖、苛立ちが一気に爆発してしまったのです。

    109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 21:06:51.49
    気付くと私は、涙を流しながらポツンと突っ立っていました。
    なんだか少しだけ胸が軽くなった気がします。

    そこでやっと悲惨な校舎を見て、ハッと我に返りました。

    純「ど、どうしよう……」

    そうは言っても所詮誰に咎められることもありません。
    私は気にせずその場を立ち去ろうとしました。

    ふと、そこで思い立ちます。
    そういえば、ベースを部室に置いたままにしていたなぁ。

    誰もいないのだから、家で思う存分練習をしよう!
    と、私は素敵なことを思い付いたので、ベースを取りに部室へと向かいました。

    111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 21:12:59.37
    軽音部の部室では、スッポンモドキのトンちゃんを飼っています。

    人がいなくなってしまったこの状況で、亀はどうなっているのでしょう。
    私は部室の戸を開けました。

    トンちゃんの入った水槽は、普段と変わらず、そこにありました。
    彼がいるのか確認しようと近付いて行くと、私の気配に気付いたのか、トンちゃんは手足を一生懸命動かして水槽の奥から泳ぎ出てきました。

    純「トンちゃん!」

    思わぬ自分以外の生物との遭遇で、私のテンションは上がります。

    112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 21:16:52.37
    私はトンちゃんを水槽から出し、しばし戯れました。

    純「おお、トンー」

    呼び捨てにもしてみます。

    トンちゃんをひっくり返しては起こし、ひっくり返しては起こし、を満足するまで繰り返した後に、ご飯をあげようと思いました。

    トンちゃんを水槽に戻し、ご飯を入れてあげます。

    私はトンちゃんのご飯係ではないので分かりませんが、確か梓はこうやっていたはずです。

    113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 21:24:30.24
    ここで困ったことに、私はご飯係ではないので、トンちゃんが普段どのくらいご飯を食べているのか分かりません。

    これくらいで足りるかな?
    いや、もう少し……。

    散々悩んだ末、私はトンちゃんが食べたいだけ食べさせることにしました。
    ご飯係も難しいものです。

    満腹になったであろうトンちゃんを尻目に、私は校舎内を探索することにしました。
    もしかしたらトンちゃんのように、まだ何か生き物がいるかもしれません。

    114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 21:29:54.03
    部室前の階段を降りて行くと、教室の方から甘い匂いがしてきました。

    純「これはっ」

    間違えるはずはありません。
    まさしくゴールデンチョコパンの香りです。

    まさか誰かが食べて……。

    私は教室へと走り出しました。

    せっかくの期待も虚しく、教室には誰もおらず、肝心のゴールデンチョコパンは半分以上が食べられていました。

    純「……はぁ」

    悔しがる気持ちを紛らわそうと、私はゴールデンチョコパンを食べました。
    満腹になったトンちゃんを見たおかげで、自分もお腹が空いていたので丁度良かったのです。

    115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 21:37:44.93
    純「甘ーい」

    パンの甘さにウットリしながら部室へ戻ろうとした時です。
    足に力が入らなくなり、私はその場にへたりこんでしまいました。

    純「んあ、あれっ?」

    私は突然の出来事にどうすることも出来ませんでした。

    そして、同時に謎の激しい睡魔に見舞われた私は、瞬く間に深い眠りへと落ちて行ったのです。

    116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 21:43:44.94
    【四日目・梓】

    ガヤガヤと騒がしい教室。
    みんな何事もなかったかのように楽しそうな会話を繰り広げています。

    梓「お、おはよー」

    緊張しながら教室へ入ると、いきなり視界が真っ暗になりました。

    純「あずさぁっ!」

    純が私に抱き付いてきたのです。
    純の匂いがします。

    117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 21:50:37.37
    梓「むぐっ……な、なに?」

    久し振りに会えた純に私も抱き付いていたかったけど、変な趣味があると思われたくないので振りほどきました。

    純「この三日間! 大変だったんだからぁ!」

    梓「三日間?」

    そんなの、私の三日間に比べたら絶対大変じゃない。

    憂「純ちゃんね、この三連休中ずっと独りぼっちだったんだってぇ」

    梓「へぇ……」

    へぇ……。
    え?

    118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 21:57:15.45
    純「怖かったんだよー。ねっ、憂?」

    憂「う、うん」

    梓「ちょっと待って! ……どういうこと?」

    それから私は純から詳しく話を聞きました。

    街に誰もいなくなったり、奇妙なことが立て続けに起こったりと、私が過ごした三日間とほとんど同じでした。

    純「それでさ、今日になったら何事もなかったみたいに一日が始まったんだよね!」

    119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 22:04:59.76
    同じだ。

    純「憂もほとんど同じ体験したんだって」

    憂「ちょっと違うところもあったけどね」

    思いがけない事実に面食らってしまいましたが、私は気を持ち直して言いました。

    梓「それ、私も同じ……」

    純憂「ええっ!?」

    121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 22:41:05.85
    【四日目・純】

    その日の朝、気付くと私は自室のベッドの上にいて、突然お母さんに叩き起こされました。

    純「お母……さん……」

    突然泣き出した愛娘に向かって、三日ぶりに会った母親が放った言葉は「早く学校行きなさい」という感動の欠片もない厳しい一言でした。

    悪夢から覚めた私は、ルンルン気分で学校へと向かいました。

    122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 22:50:17.44
    教室に入ると、憂を見つけました。

    久し振りの再開を喜んで、抱き付いてみると、意外にも憂は嫌がりません。
    それどころか、私の制服に顔を埋めてメソメソと泣き始めたではありませんか。

    純「ちょっ、ちょっ!」

    やっとのことで憂をなだめると、彼女はポツポツとこの三日間の出来事を話始めました。

    それを聞いて、私がおったまげたのは言うまでもありません。

    123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 22:59:03.87
    しばらくして、梓が登校して来ました。

    またしても抱き付いてみたものの、梓からは冷静にひっぺがえされてしまい、ちょっと残念です。

    梓「むぐっ……な、なに?」

    私と憂の気も知らないで、梓はひどい人間です。

    純「この三日間、大変だったんだからぁ!」

    梓「三日間?」

    梓が、驚いたような、怪訝そうな顔をしました。

    124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 23:04:05.41
    【四日目・憂】

    私と純ちゃんは、梓ちゃんにこの三日間の出来事を話しました。

    途中で梓ちゃんは、驚いた顔をしたり、納得するような顔をしたりしていました。

    全部話し終わると、梓ちゃんが静かに言いました。

    梓「それ、私も同じ……」

    純憂「ええっ!?」

    私と純ちゃんは、声を揃えて驚きました。

    まさか純ちゃんだけでなく、梓ちゃんも私と同じ体験をしてたなんて……。

    125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 23:10:08.43
    梓ちゃんは、梓ちゃんの三日間について話してくれました。

    やっぱり、私たちとほとんど同じです。

    でも、ちょっとずつ違うところがあるのはなんでだろう?

    126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 23:13:51.27
    【梓】

    全て話し終えると、私たちは自然と黙り込んでしまいました。

    私たちは、自分たちに起こった事件について考えを巡らせていました。

    偶然にも似た経験をしたことに加え、それぞれの三日間で同じ点もあれば、食い違う点もあって……。

    純「どういうことなのー」

    梓「私だって分からないよー」

    そんなこんなで、話はまったく進みません。

    127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 23:19:29.47
    私と純が困り果て、諦めかけた時、それまで黙っていた憂が口を開き始めました。

    憂「私、なんとなく分かったかも……」

    純「ほんと!?」

    梓「なになに?」

    私と純が余りにも食い付いたからか、憂は少し怯んでから喋り出しました。

    憂「たっ、たぶん、私たちはそれぞれバラバラの世界に飛ばされちゃったんじゃないかなぁ?」

    純「はっ?」

    128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 23:25:13.36
    【純】

    私は耳を疑いました。
    梓も私と同じく、突拍子もない憂の発言にびっくりしています。

    そんな私たちを無視して憂は続けました。

    憂「たぶんね、三つの世界があって、そこに私たちが一日ずつ別々に飛ばされたんだよぉ」

    頭がついて行けません。

    129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 23:30:11.66
    梓「ちょっと待って! 三つの世界? どういうこと?」

    憂「ほらぁ、パラレルワールドだよ」

    パラレルワールドって……。

    私は混乱しながらも憂に聞きました。

    純「パラレルは分かったけどさ、なんでそう思ったのさ?」

    憂「うん。私たちの話では、ちょっとずつ食い違ってた箇所があったでしょ?」

    梓「うんうん」

    憂「例えばさぁ、純ちゃんは三日目に学校で窓ガラスを破ったでしょ?」

    純「う……、うん」

    なにやら恥ずかしい過去の傷をつつかれたような気分です。

    憂は独特の緩い口調で淡々と続けます。

    130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 23:40:28.41
    純「えっ、ちょっと……」

    憂「こういうことだよっ」

    憂はそういうと、サラサラと紙に次の図を描きました。

    『純→梓→憂→純→梓→憂……』

    純「これは?」

    憂「三つの世界が、一日おきにこんな風にループしてたんだよっ」

    梓「これのせいでトンちゃんがいつの間にか部室に戻ってたり、ロックバンドの解散ライブの日が違ったりしたんだよ」

    純「な、なるほど……」

    この通りにパラレルワールドが進行していたなら、筋が通ります。

    まさか私たちが経験した三日間がこんなことになっていたなんて……。

    132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 23:43:42.21
    ここで、ある疑問が私の頭に浮かびました。

    純「なんで?」

    憂「え?」

    純「なんでこんなことが起きたの?」

    133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 23:46:07.62
    【憂】

    憂「え?」

    純「なんでこんなことが起きたの?」

    純ちゃんからの鋭い質問に私は閉口してしまいました。

    何が原因で、私たちはパラレルワールドなるものに巻き込まれてしまったのでしょう。

    憂「うーん……」

    私が困っていると、梓ちゃんが話を割ってきました。

    梓「ああっ!」

    134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 23:50:53.78
    純「どっ、どうしたの?」

    梓「授業始まっちゃうよ!」

    純「ほ、本当だー!」

    こうして私たちは授業の用意に追われ、結局例の三日間についての考察はお預けとなりました。

    放課後もなんやかんや忙しくて、再びあの三日間について考えることはありませんでした。


    おわり

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