FC2ブログ

けいおん!SSまとめブログ けいおん! このブログはVIPで立った「けいおん!SS」をまとめたブログです。

Twitter(更新通知) Twitter(交流用?) 新着SS通知ツール ご意見など 相互リンク,RSS

最新の記事

記事一覧はこちら

最近のコメント

紬「江戸時代の私達」

  1. 名前: 管理人 2010/10/10(日) 19:35:57
    1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 00:55:46.68
    【第一話:梓の猫】

    時は江戸。
    人口百十一万人を越えるこの街で探し物を探すと言うのはとても難しい。

    だからこそ、このお店は繁盛しているのだろう。

    私の目の前にあるお店の看板には探し屋と書いてある。

    私一人ではこの街で行方不明になった猫を探すのはとても無理だ。

    風の噂で聞いたがこの探し屋の主……変わり者らしい。

    梓「……よし!」

    迷ってはいられ無い私の大事な猫を探さなきゃ。


    3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 01:02:35.98
    梓「こんにち……」

    紬「あら?お客?」

    中に入り彼女を見て驚いた。
    金色の髪に青い瞳……こんな容姿をした人がこの街にいたのか。

    紬「どうしたの?」

    それに随分美しい顔立ちをしている。

    梓「あの……探し物を……」

    紬「まぁ!仕事ね!で何を探して欲しいの?」

    梓「猫を……」

    紬「何だ猫なのね……」

    4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 01:08:28.58
    私の探し物を聞いて落胆したようだ。
    無理もない……この街で猫を探そうとするのはとっても大変な事だ。

    梓「あの……やっぱり無理ですかね?」

    紬「無理じゃないわ!」

    梓「……へ?」

    紬「私は何でも探す探し屋よ。たかが猫一匹、一日で見つけられるわ!」

    梓「す、凄いですね……」

    胡散臭い。
    この広い街で小さな猫を一日で見つけられるなんて……胡散臭い。

    6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 01:13:03.29
    紬「胡散臭いと思っているでしょう?」

    梓「うっ……!」

    顔に出ていたのか頭の中で思っている事を言い当てられてしまった。

    紬「貴女お名前は?」

    梓「あ、梓です」

    紬「梓ちゃんね~随分可愛らしい顔立ちをしてるわね~」

    梓「あ、いえ……」

    私は褒められのは苦手だ。
    だって何て反応を返せば良いのか分からない。

    7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 01:18:27.77
    梓「それより猫……」

    紬「わかってるわぁ~じゃあちょっと着いて来て。猫探すわよ」

    梓「え?私の猫を探してくれるんですか?」

    紬「勿論よ。暇潰しには調度いいわ」

    私の猫探しを暇潰しだ何て……まぁ一緒に探してくれると言ってくれてる。

    さっきの言葉は忘れよう。

    8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 01:26:00.52
    紬「ふぅ~気持ち良い日差しね」

    彼女は大きく背を伸ばした。
    ……そう言えば彼女の名をまだ聞いてはいない。

    梓「あの……お名前は?」

    紬「紬よ」

    梓「紬さん……ですか」

    紬「えぇ!今日一日よろしくね!」

    そう言う紬さんに私は頭を下げた。
    頭を上げた時にはもう歩き出していたのだけれど……。

    11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 01:31:14.82
    梓「ま、待って下さい!」

    紬「もう!ちんたらしていたら日が沈んでしまうでしょ!私は日が沈んでからは仕事をしないの」

    梓「そう……ですか」

    眉間に皺を寄せ不機嫌そうに紬さんは言った。
    ……この人、眉が太いなぁ。

    紬「さぁ!早く探すわよ!」

    梓「あ……はい!」

    13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 01:37:46.88
    そう言えば私は紬さんに猫の名前や姿は伝えていない。

    梓「あの……猫の名前とか姿とかは……」

    紬「それはいいわ。猫なんて同じ姿をしたものばかりだし名前何て私が呼びながら探しても反応しないわ」

    だから私を猫探しに着いて来させたのか。

    紬「気まぐれで人に媚び売って餌を貰う……なんて都合の良い生物なの!」

    梓「は、はぁ……」

    紬「だけどそこが可愛いんだけどね」

    14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 01:41:40.70
    しばらく歩いているて人の集まりを見付けた。
    その中から微かに聞こえる三味線の音色。

    紬「あら?もう始まっていたのね!」

    紬さんは走り出し人の集まりの中に混じった。

    梓「あ……紬さん!」

    何が始まったかは知らないが彼女は多分、私の猫の事など忘れているに違いない。

    15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 01:44:40.17
    梓「つ……紬さん!」

    紬「梓ちゃんこっち!場所は空けておいたわ!」

    梓「は、はぁ……」

    紬「三味線……聞きたいでしょう?」

    聞きたく無い!私は一刻も早く私の大事な猫をこの手で抱きしめたい。

    梓「は、早く猫を!」

    紬「しーっ!黙って!」

    17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 01:52:42.03
    三味線の音がさっきよりも大きく聞こえる。

    それもそうだ、私と紬さんの目の前で黒くて長い髪をした女が三味線を弾いているのだから。

    紬「彼女は澪って言うのよ~」

    梓「澪……」

    澪と言う名の女の人は目を閉じ三味線を弾いていた。

    何だかこの三味線の音色は私の心を悲しみで満たすようだった。

    18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 01:58:46.36
    澪「ありがとうございました」

    聞こえるか聞こえないかぐらいの声で彼女はお礼を言った。

    紬「澪ちゃん今日もよかったわぁ~」

    澪「……紬さんですか?」

    何かおかしい。
    彼女の目は紬さんを見てる見てるのに何故、彼女が紬さんだとと確かめる必要がある?

    紬「そうよ~紬よ~」

    19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 02:07:19.02
    澪「毎日聞いて頂いてありがとうございます」

    紬「こちらこそありがとうね~あ、お金が落ちたわよ拾ってあげるわね~」

    澪「お願いします……」

    あぁ、成る程。
    彼女は目が見えていないのか……。

    紬「はいどうぞ!」

    澪「ありがとうございます……」

    紬「どう致しまして~」

    20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 02:13:36.12
    澪「それじゃあ私はそろそろ……」

    紬「えぇ!また素敵な三味線の音色を聞かせてね?」

    澪「はい……」

    彼女は杖を使い歩き出した。
    本当に目が見えないのだろうか?
    そう思うぐらいにしっかりとした歩き方だった。

    紬「じゃあ猫を探しに行きましょうか」

    梓「あ……は、はい!」

    21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 02:21:07.21
    梓「むったーん!むったーん!」

    紬「むったん?」

    梓「あ、私の猫の名前です。呼んだら出て来るかなと思って……」

    紬「随分と変な名付けたわね~」

    変な名と言った彼女に謝らせたい。
    私にじゃなくむったんに謝らせたい!

    むったんはこの名を気に入っているのだ!

    さわ子「おや?梓ではないか」

    23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 02:33:57.79
    梓「あ、版元!」

    このさわ子と言う人は私の売れない絵を店に置といてくれている。

    さわ子「絵の順調はどう?捗ってるかい?」

    紬「まぁ梓ちゃん絵師なの?」

    さわ子「売れない絵師だけどねェ~」

    梓「ううっ……」

    彼女はいい人なのだけど思った事をすぐに口に出す。

    紬「うふふ。売れない絵師なのね~」

    あまり売れないとは言わないで欲しい。

    24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 02:39:34.99
    さわ子「そいじゃ私はここで」

    梓「何処か行かれるんですか?」

    さわ子「決まってるでしょう。酒よ酒!」

    昼間から酒とは贅沢な。

    梓「い、行ってらっしゃい」

    紬「明るい人ね~」

    梓「そう……ですね」

    25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 02:47:09.09
    梓「むったーん!」

    紬「呼んだって出て来ないと思うわよ~」

    梓「わ、分かりませんよ!きっとむったんには私の声は届いてるはずです!」

    紬「そんな分けないわ~」

    この人も思った事をすぐに口に出す人間か……。

    真面目で卑屈な私とは正反対の人間、私もこんな性格になりたかったなぁ。

    紬「着いたよ」

    梓「……へ?」

    26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 02:59:17.97
    紬「聞こえなかったの?ほら着いたわよ」

    梓「ここ……って」

    紬さんが指を指した方向を見ると小さな廃屋があった。

    紬「ここはね~猫屋敷なの!」

    梓「猫屋敷……?」

    紬「えぇ!あ、猫のめし屋と言った方が聞こえは良いわね」

    梓「まさか……まさかこの中にむったんが!」

    紬「探して見たらどう?私は入りたくないけど」

    梓「は、はい!探してみます」

    27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 03:02:36.52
    扉を開けてみる……。

    梓「ううっ……!」

    強烈な匂い。
    それに、あちこちに猫が居る。

    梓「臭い……」

    袖で鼻を押さえながらむったんがいないか確かめて…………。

    梓「…………」

    紬「いたー?」

    梓「…………」

    むったんはいた。
    だが、猫と交尾をしている最中だった。

    むったん…………。

    28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 03:08:13.58
    梓「はぁ……」

    紬「元気出して!ね?ほらお茶よ」

    梓「はい……ありがとうございます」

    むったんは今私と言う親から離れ自由となり廃屋に置いて来た。
    もう……むったんは大人になってしまったのだ。

    梓「はぁ……」

    紬「元気だったしよかったじゃない?」

    梓「はい……」

    また、しばらくすれば私の元に帰って来るのだろうけど……はぁ。

    30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 03:17:25.57
    梓「そう言えば……よくあんな場所を知ってましたね」

    紬「この街の何処にあるかは私の頭に入っているもの。すぐ分かるわ」

    梓「凄いですね……あ、そう言えばお金」

    紬「いらないわ~」

    梓「……え?」

    紬「今日のお散歩はとっても楽しかったの!だからいらないわ。猫も連れて帰って来てないしね」

    梓「で、でも……」

    紬「いいのよ。売れない絵師さんからお金は取れないわ!」

    むったんの事で言い返す気にもならず紬さんから差し出されたお茶を飲んでみた。

    梓「美味しい……」

    紬「うふふ。ありがとう!」


    第一話
    終わり

    31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 03:20:46.78
    少し休憩を挟みます
    30分後には第二話を書きます

    34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 03:53:07.83
    【第二話:春を憂い】

    手を二回叩き神様にお願いをする。

    梓「私の絵が売れますように」

    本当に売れて欲しい。
    飯も満足に食べれない程に金が無い。

    目の前にある賽銭箱に金を入れるのを躊躇うぐらい金が無い。

    心の寄り所であったむったんはあまり家には帰って来ないし……。

    梓「はぁ……」

    35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 04:00:31.15
    やっぱり絵だけじゃ喰っていけないのかなぁ?

    いやいや、私に才能が無いだけかも知れない。

    いっそ春画にでも手を出して……やっぱりそれだけは無理だ。

    憂「あ!お姉ちゃん!」

    振り返ると鳥居の所で女が何かを叫んでいる。

    憂「お姉ちゃーーん!」

    胸に柔らかい物があったっかと思うと私の体は宙を舞い地面へと落ちた。

    36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 04:08:25.06
    梓「あ痛てててっ……ひゃあ」

    犬が倒れた私の体の上に乗っている。
    小さな可愛いらしい犬だったが今の私にとっては凄く怖く見えた。

    憂「あ、お姉ちゃんダメ!」

    噛まれる!
    そう思いギュッと目を閉じて腕を顔の前に差し出した。

    何かヌメヌメした物が私の腕を這う。

    このヌメヌメした物……舌?。

    39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 04:14:57.07
    うっすらと目を開けて見ると犬が私の腕を舐めている。

    憂「ご、ごめんなさい!」

    鳥居で叫んでた女が犬を抱き抱えた。

    憂「もう!ダメでしょ!お姉ちゃん」

    唯「ワンワン!」

    梓「い、いえ……よいしょ」

    立ち上がり犬を抱き抱えている女を見る。

    憂「何処かお怪我はありませんか?」

    梓「あ……ありません……」

    何処と無く私を舐めた犬と顔が似ている。
    流石に失礼か……でも綺麗な顔をしていた。

    40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 04:21:46.44
    憂「お姉ちゃんはすぐに私から離れて綺麗な人に飛び付いちゃうだから!」

    唯「ワン!」

    何故か彼女は犬に向かってお姉ちゃんと呼んでいた。

    同じ母親から産まれたのかな?
    そんな分け無いか……。

    憂「あの~……ご迷惑を掛けて本当にすみませんでした!」

    梓「あ、いえいいんです……」

    41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 04:27:36.35
    憂「何かお詫びをさせて下さい!」

    唯「ワーン!」

    梓「お詫びなんていいですよ」

    憂「近くに美味しい団子屋があるんです!」

    梓「団子!是非お詫びをして下さい!」

    団子なんて久しぶりに食べる。
    まさかこんな事で今日のご飯にありつけるなんて……たまには神頼みをしてみるものだ。

    43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 04:40:06.81
    憂「ここですよ~美味しい団子屋さん」

    梓「団子……団子……」

    純「あ、憂こんにちは」

    憂「こんにちは純ちゃん!」

    唯「ワン!」

    純「唯もこんにちは」

    どうやらこの人の名は憂と言うらしい。
    そして、この犬の名は唯……人間っぽい名だ。

    アレ?この犬……首に何か付けてる。
    都忘れの花柄の布だ。

    44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 04:45:10.86
    憂「どうぞ、お団子ですよ」

    梓「あ、ありがとうございます!」

    一口……二口と団子を口の中に入れる。
    あぁ……久しぶりの団子だ。

    梓「美味しいです!」

    純「そりゃあ私が作る団子だからね」

    憂「もう純ちゃんったら……気に入って貰えて何よりです」

    梓「は、はい!ありがとうございます!」

    45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 04:51:49.43
    唯「ワン!ワン!」

    犬がくれと言わんばかりに私に吠える。

    梓「や、やらないよ!」

    憂「お姉ちゃんの団子はこっちだよー!」

    唯「ワンワーン!」

    ふぅ……私の団子は死守する事が出来た。

    自分でもけち臭いとは思うがそれほど生活に切羽詰まっているのだ。

    憂「お姉ちゃん美味しい?」

    唯「ワン!」

    何故この人はこの食いしん坊な犬をお姉ちゃんと呼ぶのだろうか……。

    非常に気になる。

    46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 05:04:15.40
    梓「あ、あの~」

    憂「何ですか?あ!もっと団子が……」

    梓「ち、違います!何でこの犬……」

    憂「あ、お姉ちゃんの名前は唯です」

    知っている。

    梓「唯をお姉ちゃんと呼んでいるんですか?」

    憂「お姉ちゃんの魂が乗り移っているからですよ」

    お姉ちゃんの魂が乗り移っているから?
    意味が全然分からない。

    47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 05:10:56.73
    梓「魂が乗り移っている?」

    憂「はい!この犬はお姉ちゃん何です!」

    この人は自信満々に変な事を言うなぁ……。

    梓「でも、何で魂が乗り移ったんですか?」

    憂「お姉ちゃん……私が小さい頃に死んでしまったんです」

    梓「……え?」

    49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 05:18:53.92
    梓「あ、ごめんなさい……」

    しまった……色々聞き過ぎてしまったようだ。

    憂「いえ、いいんですよ!」

    唯「ワン!」

    憂「あ、もう日が落ちて来てる……私達はもう帰りますね」

    梓「あ、はい!団子ありがとうございました」

    憂「いえ……お姉ちゃん行こう?」

    唯「ワン!」

    50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 05:24:48.49
    憂「お姉ちゃんもうすぐ春だね」

    唯「ワン!」

    憂「お姉ちゃんが死んだ時も春だったよね」

    唯「ワン!ワン!」

    憂「早く神社に帰ろっか!和さんも帰って来てると思うし!」

    唯「ワーン!」

    憂「……春か」

    51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 05:42:34.19
    もうすぐ春が近い。
    私は春が嫌いだ。

    春になると嫌な事ばかり起きる。

    両親に捨てられた日も春だったしお姉ちゃんが死んだ日も春だった。

    他の人はようやく寒さから逃れられると言って喜ぶが、私は冬のあの冷酷なまでの寒さが心地良い。

    私は冬が1番好きだ。
    冬になると楽しい事ばかり起きる。

    53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 05:51:42.21
    和さんと出会い一人っきりの私を引き取ってくれた。

    他にも沢山あるけど1番嬉しかった事はお姉ちゃんが再び犬と成って私に会いに来てくれた事。

    お姉ちゃんが着ていた都忘れの花柄の着物を首に巻き付けた犬。

    私は一目でこの犬はお姉ちゃんの生まれ変わりだと強く確信した。

    54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 06:04:23.71
    私はお姉ちゃんに会った瞬間すぐにお姉ちゃんに抱き着いた。

    お姉ちゃんに抱き着くと私の体や心が暖かくなっていった。

    寒さの中で何時も以上にお姉ちゃんの体温を肌で感じた。

    あの冷酷なまでの寒さだからこそ暖かさをより強く感じたんだと思う。

    だから、私は冬が好きだ。
    寒さの中で人に優しくして貰うと何時も以上に心が暖かくなる。

    55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 06:13:01.93
    幼い頃から今までずっと私を守ってくれたお姉ちゃん。

    ちょっと食いしん坊で甘えん坊だけどお姉ちゃんは何時だって私の味方だ。

    私をずっと守ってくれている。

    私達は二人で唯一。

    唯「ワン!」。

    冷酷なまでの寒さの中で微かな暖かみを感じた。


    第二話
    おわり

    56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 06:19:11.74
    30分休憩を取ってから三話を書きます

    58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 06:52:36.64
    【第三話:都忘れ】

    紬「あら?梓ちゃん?」

    梓「あ……この前の!」

    まさかこんな所でむったんの恩人に会えるとは思っとみなかった。

    梓「何してるんですか?」

    紬「私に仕事を依頼した人と待ち合わせしてるの~」

    奇遇だ。

    梓「私も待ち合わせしているんです!」

    59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 06:56:23.57
    紬「もしかして男の人と……」

    梓「ち、違います!」

    私が待ち合わせしてる人は憂だ。
    この前の事がきっかけで私達はお互い良い友人となった。

    紬「男の人じゃないのね!よかったわぁ~」

    何がよかったのかよく分からないが……ここは触れないようにしておこう。

    憂「あ!梓ちゃん……と紬さん?」

    60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 07:00:36.13
    梓「あ、憂!」

    紬「憂ちゃん!」

    私達はお互いに目を合わせた。

    憂「あれ?何で紬さんが……」

    紬「待ち合わせしてたから~」

    憂「あ、あれ?明日じゃ……」

    紬「明日は雨の予感がするから今日貴女の探し物を探したいの!」

    唯「ワン!」

    62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 07:05:49.75
    今日探し物をするって……憂が来なかったらどうしてたんだろこの人。

    梓「と言うか紬さんも憂と待ち合わせしてたんですね」

    紬「そうよ~あ、団子三つ下さいな」

    純「は~い」

    梓「唯、こんにちは」

    唯「ワン!」

    紬「で憂ちゃん探し物の件なんだけど……」

    憂は何かを無くしたらしい。
    何を無くしたんだろう。

    63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 07:14:16.66
    ん?よく見れば唯の首に巻き付けられていた都忘れの花柄の布が無い。

    唯「ワン!」

    梓「唯、首に巻いてた布はどうしたの?」

    紬「それを今から探すのよ~」

    梓「あぁ、そうなんだ」

    紬さんに頼む程あの布は大事な物らしい。
    私はただ可愛いと言う理由で唯に付けていただけだと思っていた。

    憂「紬さんお願いしますね!」

    紬「えぇ!任せて!」

    64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 07:20:24.62
    紬「それじゃあ探しましょ?」

    憂「え?でも梓ちゃんと遊ぶ約束が……」

    梓「ううん、大丈夫だよ。それに私も一緒に探すから」

    憂「本当!?」

    唯「ワン!」

    紬「随分と友達思いなのね~ただの売れない絵師だと思っていたわぁ!」

    またこの人はそんな事を言う。
    凄く意地悪奴め!

    65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 07:26:54.97
    紬「憂ちゃん何処で無くしたか分かる?」

    憂「分かりません……」

    紬「分からないのね」

    私の猫を簡単に探して見せた紬さんでも今回ばかりはそうも行かないらしい。

    長く考えた末、言った一言が……。

    紬「神社で神様に見付かるようにお願いしましょ!」

    唯「ワン!」

    66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 07:35:54.37
    神社へと神頼みをしに来た紬さんと憂はすぐに賽銭箱に金を入れ手を合わせ祈った。

    お金なんて持ち合わせていない私は祈るだけだったけど……。

    憂はこの神社で和さんと言う人と二人で住んでいる。

    社から少し離れた所にある寺子屋。
    ここで憂は子供達に字の読み書きを教えていると言う事をこの前聞いた。

    紬「あら?梓ちゃんは賽銭箱にお金を入れないの?」

    梓「うっ……!」

    67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 07:48:09.55
    紬「お金を納めず神様に頼み事をするなんて浅はかね~」

    梓「うぅっ!」

    紬「物事には必ず犠牲が付き物なのよ?私達はお金と言う犠牲を払って憂ちゃんの探し物を探そうとしているのに梓ちゃんと来たら……やれやれだわぁ~」

    何と言う性格の悪さ。
    黙っていれば美人なのに……あぁ、勿体ない。

    梓「お金を入れればいいんでしょ!もう!」

    68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 07:54:43.02
    チャリン……はぁ今日の晩飯はまた沢庵だけか……米が食べたい。

    和「あら?賽銭ありがとうございます」

    憂「あぁ!和さん!」

    唯「ワン!」

    紬「この人はどなた?」

    憂「ここの神社の神主さんの和さんです」

    紬「それはそれは、こんにちはぁ~」

    和「こんにちは」

    70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 08:06:55.54
    梓「…………はぁ」

    和「梓ちゃんどうしたの?ため息なんてついて」

    梓「うぅ……何でも無いです」

    紬「梓ちゃんそんな顔しないの神様が見てるわよ」

    こっちは無い金を賽銭箱に入れたのによく言うよ。

    憂「あの……見付かりました?」

    和「いいえ。社の中には無いわね」

    憂「そうですか……」

    71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 08:12:49.69
    紬「あ、そう言えばどうして無くなったのかまだ聞いて無かったわね。憂ちゃん話してみて?」

    憂「はい……お姉ちゃんと散歩をして神社に帰ってお姉ちゃんの首を見たら無くなってました」

    梓「じゃあ散歩していた道を探れば!」

    紬「風で飛ばされて無いんじゃない?」

    和「そうよね……」

    梓「私の猫を探した時みたくすぐに見つけられないんですか?」

    紬「無理だわ」

    72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 08:20:23.68
    梓「そうですか……」

    紬「街を網羅してる私でも行動が分からない物を探すのはとっても苦労するの~」

    梓「え?物は行動したないですよ」

    紬「風で飛ばされたり人が持ち帰ったりで行動するでしょう?」

    梓「あぁ、そっか」

    憂「……やっぱり無理なんですか?」

    紬「いいえ!物事は何でもやってみないと分からないわ。必ず憂ちゃんの探し物を見付けるから安心して」

    憂「……はい」

    73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 08:28:39.83
    紬さんは私には言いたい事をずけずけと言うのに憂が相手だと随分優しい。

    紬「じゃあ神社の周辺を探しましょう?」

    憂「そうですね!」

    梓「あ……唯の鼻を頼りに探して見たらどうですか?」

    紬「それが出来たのならもうやってるわ。今朝、雨が降ったのよ?匂いは消えてるわ」

    梓「そっか……」

    75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 08:36:52.88
    唯「ワン!ワン!」

    梓「はぁ~無いですね」

    紬「そうね~日が落ちそうだし明後日にする?」

    憂「はい……」

    何だか元気が無い。
    彼女の沈んでる顔を見るとこっちまで気分が沈みそうだ。

    梓「憂……必ず見付かるから元気だして……ね?」

    憂「うん……うん……」

    77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 08:46:09.84
    憂「…………うぅっ」

    梓「ど、どうしたの?」

    憂「ぐすっ……お姉ちゃんの……大事な物なのに……無くしちゃった……ううっ」

    憂は泣いていた。
    本当に大事な物を無くした時……人はこうなるだろう。

    憂はただ泣いて唯にひたすら謝っている。
    ごめんね……ごめんね……と。

    唯「クゥーン……」

    78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 08:57:35.98
    紬「明日も探すわ……」

    憂「……え?」

    紬「明日も探す」

    憂「ほ、本当ですか?ぐすっ」

    紬「えぇ」

    彼女とは短い付き合いだが分かった事が二つある。

    一つは自分の言った事は絶対に曲げない事。
    二つは人が涙く姿を見れば自分の言った事を曲げる事。

    彼女が憂に甘い理由が何となく分かったよ。

    80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 09:14:16.05
    梓「じゃあ私は帰るから。明日絶対見付けようね!」

    憂「うん……梓ちゃんありがとう」

    紬「私も今日は帰るわ」

    憂「紬さんもありがとうございます」

    紬「いいのよ」

    梓「じゃあ憂さようなら」

    憂「うん!さようなら」

    私達は別れた。
    この後、憂を神社まで送っていれば……あんな事にはならなかったのに。
    この日の事を私は強く悔やんでいる。


    第三話
    おわり

    81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 09:17:08.62
    30分休みます

    83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 09:51:15.38
    【第四話:別れ】

    痛い……痛い……。

    憂「うわぁああぁあああやめて……やめてぇええええ」

    三人の男によって臓腑が掻き乱される。

    憂「あぐっ助けてぐふぅっ……お姉ちゃん助けてぇえええ!」

    唯「…………」

    憂「お姉ちゃん……あぁぐっお姉ちゃん、ぐっ助け……助けて」

    お姉ちゃん何時ものように……私を助けて……。

    84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 09:55:59.39
    梓「……え?」

    和「だから憂は昨日貴女達の出掛けてから帰っていないの」

    紬「それは本当なの?」

    和「えぇ……貴女達憂に何か言ったりした?」

    梓「い、いえ……何も言ってません……」

    どう言う事だ。
    憂が昨日、私達と出掛けてから帰っていない?

    彼女に何かあったのだろうか……。

    87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 10:01:22.21
    紬「とりあえず憂ちゃん達を探してみない?」

    梓「は、はい……そうですね」

    和「本当に……何があったのかしら……」

    梓「…………」

    紬「梓ちゃん行くわよ」

    梓「……はい」

    和「私は……寺子屋の子供達に読み書きを教えないといけないから……」

    紬「分かってますよ。憂ちゃんは私達で必ず探してみせますから」

    和「お願いね……」

    88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 10:05:43.37
    梓「憂ぃー!憂ぃー!」

    紬「どうして帰らなかったのかしら?」

    梓「……え?道が分からなくなったとか……?」

    自分でもため息が出るぐらいの憶測だ。

    紬「和ちゃんは昨日帰らなかったと言っていたわ」

    梓「何で帰らなかったんでしょう?」

    紬「考えられる店は一つよね……」

    89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 10:09:45.09
    >>88訂正

    梓「憂ぃー!憂ぃー!」

    紬「どうして帰らなかったのかしら?」

    梓「……え?道が分からなくなったとか……?」

    自分でもため息が出るぐらいの憶測だ。

    紬「和ちゃんは昨日帰らなかったと言っていたわ……どうして?」

    梓「分かりませんよ……」

    紬「考えられる事は一つよね……」

    91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 10:18:23.09
    梓「何か分かるんですか?」

    紬「恐らく……私達と別れた後も憂ちゃんは布を探し続けていたと思うわ」

    梓「無くなってしまったのを泣いて悔やむぐらい大事な物ですからね……そりゃあ探し続けますよ」

    紬「日が沈み……暗くなるまで探していた……」

    梓「まさか……誘拐されたとか……」

    紬「多分……そうだと思うわ」

    93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 10:23:46.94
    梓「だったら吉原に行きましょう!あそこならいるかも知れません!」

    紬「無理だわ……女は吉原には入れないわ。吉原は男の為だけの場所……私達が誘拐されない限り絶対に入れない」

    梓「じゃあ憂は……」

    私達と別れ日が沈んだ後……誘拐され吉原の遊女屋に売られた?

    梓「そんな……酷い」

    紬「だから男は嫌いなのよ……」

    94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 10:31:09.91
    梓「あ、唯は何処に行ったんですかね?」

    紬「分からないわ……犬が集まりそうな場所は知っているけど此処からは遠いし唯がそこに居るとは思わないわ」

    梓「じゃあ唯は……」

    紬「誘拐された時に殺された……それが1番先に思い付くわ」

    憂は誘拐され……唯は殺された……。

    紬「梓ちゃん希望は捨てちゃダメよ彼女達はきっと何処かで生きているわ」

    95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 10:37:56.81
    紬さんは私に希望を捨てちゃダメと言ったが私にはそれは出来なかった。

    唯は殺され、憂は遊女屋に売られ男達に無理矢理犯される。

    この考えだけが頭に張り付いて離れない。
    希望を持つ余裕は今の私には無かった。

    無理矢理持とうとしても無理だ。

    紬「あら?あの人だかりは何かしら?」

    梓「……人だかり?」

    97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 10:48:09.35
    紬「行ってみましょう」

    梓「は、はい!」

    ここら辺には田んぼしかない。
    人だかりが出来る理由はきっと憂が関係しているだろう。

    人だかりを掻き分け私は見た。

    梓「そんな……」

    獣に噛まれた様な傷を残し倒れる男の死体と頭部が無い唯の死体を……私は見た。

    98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 10:55:37.35
    唯が……死んだ。
    目眩がして頭がクラクラする。

    梓「唯……唯……」

    紬「………………」

    頭部が無い唯の体と男の死体。
    微かな腐臭が漂い私は耐え切れずその場で吐いた。

    梓「そんな……唯……」

    紬「唯の死体を埋めましょう」

    紬さんはただポツリと呟くと小さな体の唯を抱き抱えた。

    99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 11:06:56.34
    和「誰が唯をこんな目に……」

    神社へと戻り唯を埋めた私達は線香をあげながら考えた。

    梓「やっぱり一緒に死んでいたあの男が……」

    紬「男の死体には獣の噛み傷の他に刀傷があったわ」

    梓「……え?」

    紬「昨日の今朝雨が降っていたでしょう?」

    梓「え……あ、はい」

    紬「雨でぬかるんだ地面が太陽の日差しによって固まり……地面に足跡がくっきりと残っていたわ」

    100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 11:16:05.80
    紬「地面の足跡の形からすると唯と裸足の憂……草履を履いた男が三人その内一人はあの死体」

    梓「紬さん……?」

    紬「ごめんなさい話しかけないで貰える?考えを頭の中で纏めているから……」

    梓「……すいません」

    紬「草履を履いた男二人は逃げたようね……地面には点々と足跡が残っていたわ」

    102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 11:21:23.68
    紬「憂ちゃんは生きてるわ誘拐されてなんかいないわ……あの裸足の足跡からすると逃げたようね」

    和「じゃあ憂は……」

    紬「多分……生きていると思うわ全ては憶測……確信するにはまだ早いけど」

    梓「あの男の死体は……?」

    紬「憂ちゃんが殺したんじゃないかしら?そうとしか思えないわ」

    103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 11:27:51.12
    和「でも非力な憂が……大の男を一人殺せるの?」

    紬「唯よ……唯が憂ちゃんを助けてくれた。唯が男に噛み付き怯んだ所で憂ちゃんは男から刀を奪った」

    梓「だから……刀の傷が……」

    紬「だけど……おかしいわ……無数に男の体にあった噛まれたような傷。あれは唯ちゃんなのかしら?」

    和「どう言う事?」

    紬「だって男の体の噛まれた傷と唯ちゃんの口じゃ大きさが全然違うもの」

    105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 11:56:50.03
    梓「大きさが違う?」

    紬「えぇ違うわ……そろそろ憂ちゃんを探しに行きましょう」

    梓「生きてるかも知れないですしね……私も手伝います」

    和「憂が帰って来るかも知れないから私はここで待っておくわ」

    紬「えぇ!お願いね。憂ちゃんを必ず探して見せるわ」

    和「お願いね……血は繋がってはいないけど私の大事な家族なの」

    紬「分かったわ!それじゃあ行きましょう梓ちゃん」

    梓「は、はい!」

    紬さんの憶測を聞いて私は憂が生きているという可能性を見出だした。

    私の数少ない友達……。
    必ず私と紬さんで探して見せる。

    だけど、憂は何処へ行ってしまったの?

    106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 12:03:31.16
    男を殺した後、憂は何処へ行ったのか?

    友達と言えど短い付き合いだ行きそうな場所も思い付かない。

    梓「それにしても紬さん凄いですね。あの死体を見ただけであそこまで読み取れるなんて」

    紬「探し物を探すのが私の仕事だから……」

    梓「憂見付かると良いですね」

    紬「見付かるわ必ず」

    107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 12:15:01.83
    紬「はぁ…………」

    紬さんが何故ため息をついたか大体予想が付く。

    灰色の雲が空を支配して雨を降らせていたからだ。

    紬「雨だわ……」

    梓「よかったですね。雨が降る前に足跡とかが見れて!」

    励まして言ったつもりだが睨まれてしまった。

    彼女の顔には私に話しかけるなと書いてあるようだった。

    触らぬ神に祟り無し。
    今は彼女の存在を忘れて憂を探す事に専念しよう。

    108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 12:28:51.79
    梓「はぁ……見付からない」

    未だに雨は止まずに振り続けている。
    憂を探し初めてから時間は結構経ったと思うのに……手掛かり無し。

    憂は本当は死んだのでは無いか?そんな考えがまた、私の頭を支配し始めた。

    「し、死体だぁあああ死体だぁあああ」

    梓「物騒だなぁ……」

    紬「行くわよ梓ちゃん憂ちゃんと何か関係があるのかもしれないわ」

    梓「え?あ、はい……」

    110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 12:38:11.64
    梓「あ、あぁぁ……」

    まただ。

    「誰か番屋に知らせろ!」

    また……噛み傷。

    紬「…………」

    男の死体には噛み傷があった。

    梓「これって……」

    「獣だ!獣の仕業だァ!」

    憂がこの人を殺したの?

    紬「噛み傷の大きさも履いている草履も同じだわ……」

    111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 12:53:53.34
    梓「はぁ……」

    やはり死体を見ると言うのはいい気分ではない。

    紬「最初に死んだ男と同じ草履に同じ噛み傷……」

    梓「やっぱり憂と関係があるんですかね?」

    紬「恐らく関係あるわ……」

    憂が下手人となる……最初出会った時はこんな事思いもしなかった。

    無惨にも噛み殺された男の死体を二度見ると言うのも思いもしなかった。

    113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 13:01:54.36
    紬「私もう一度死体を見てくるわ」

    梓「あ、はい……」

    紬「梓ちゃんは此処で待っててね」

    梓「はい……」

    よくあんな死体を何度も見れるものだ。
    探し屋だから……死体を探したりした事もあるとか?

    流石にそれは無いか……。

    梓「憂……」

    116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 13:08:56.86
    もし男を殺した人が憂なら……どうして人を殺す?

    唯を殺された復讐に殺すのか?

    あの温厚で暖かい笑顔を見せる憂が人を殺す……あの憂が人を殺す。

    大切な人を殺されたら人間誰しもそうなるのか?

    私には分からない。
    大切な人がいない私には分からない。

    117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 13:14:49.85
    紬「帰って来たわ梓ちゃん」

    梓「あ、紬さん……何か分かりましたか?」

    紬「えぇ、とっても良い情報が手に入ったわ」

    梓「……とっても良い情報?」

    紬「もしかしたら今日中に憂ちゃんを見付ける事が出来るかもしれないわ」

    梓「ほ、本当ですか?」

    紬「えぇ本当よ」

    122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 13:36:20.15
    紬「ついさっき見た死体の男、実は三兄弟らしいの」

    梓「三兄弟?」

    紬「女を襲い誘拐して遊女屋に売り金を貰う三兄弟はそれで生活していたらしいの」

    梓「そんな……そんなの最低です!」

    紬「私も同感だわ。しかもその三兄弟、憂ちゃんの住んでいる神社の近くでよく誘拐をしていたらしいわ」

    梓「あれ……?もしかして……」

    紬「最初に私達が見た死体……あれはゲス三兄弟の次男らしわよ」

    123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 13:44:06.49
    梓「ついさっき見た男の死体は……?」

    紬「三男よ」

    もし憂が唯を殺された復讐をしているのなら。
    次に向かう所は……。

    梓「長男……三兄弟の長男の家に向かいましょう」

    紬「言われなくても分かっているわ」

    もし、紬さんが言う事が全て当たって入れば。
    憂は必ずそこに現れる。

    124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 13:52:23.03
    夜になり満月の月明かりに照らされながら私達は長男の家を見張った。

    紬「月が綺麗ね……こんな月が綺麗な夜に死体なんか見たくなかったわ」

    同感だ。
    私も見たくはなかった。

    そう言えば……憂に布を探してあげる約束をまだ果たしていない。

    今日、憂が見付かったら……一緒に探してあげよう。

    私の唯一の友達の約束ぐらいはちゃんと守ってやららないと……。

    125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 13:58:03.08
    紬「…………」

    紬さんはただ黙って長男の家を見据えていた。

    不幸中の幸いか雨は止んでいた。

    梓「憂……はやっぱり復讐してるんですかね?」

    紬「分からないわ。私は人の心は読めないから……本人に聞いてみたらどう?」

    梓「……はい、見付かったら聞いてみます」

    126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 14:05:24.37
    ガタン……っと長男の家から音が聞こえた。

    私は身を乗り出し長男の家へ向かおうとしたが紬さんは左手で私を制した。

    紬「転んだだけかもしれないわ」

    梓「で、でも一応行った方がいいんじゃ……」

    「ギャアアアアアア」

    断末魔の叫び声が聞こえた。

    紬「憂ちゃんだわ!梓ちゃん行くわよ!」

    梓「は、はい!」

    131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 14:21:22.53
    梓「う、憂!」

    扉を勢いよく蹴り開けると男の悲鳴と獣の唸り声が聞こえた。

    憂の姿も男の姿もまだ確認は出来ない。

    紬「とりあえず悲鳴が聞こえた方へ行って……」

    私と紬さんの前に何かが現れた。

    その何かは男の喉元に喰らい付き鋭い目付きで私を見据えている。
    髪の毛はボサボサで服を着ていないその何かは右手に丸い物を持っていた。

    あれは……。

    梓「唯の頭……」

    132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 14:27:17.98
    すみません寝ます
    差し支え無ければ保守をお願いします

    156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 23:29:34.21
    すみません今起きました
    今から書きます

    158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 23:37:27.97
    紬「憂……ちゃん?」

    憂「…………誰?」

    まるで私の目の前にいる人は憂では無いような気がした。

    姿は憂何だけど……憂とは別の人みたいだった。

    まだ……あどけなさが残るあの瞳……あれは間違いなく憂だ。

    梓「憂……憂!」

    憂「あなた達も私の妹をき、傷付けるの?」

    159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 23:42:36.09
    梓「憂……私は傷付けたりしないよ?」

    憂「……私は貴女達を知ってるよ……私の首に巻き付いていた大事な都忘れの花柄の布……憂と一緒に探してくれた」

    紬「憂ちゃん……?」

    憂「ありがとう……ありがとう……ありがとう……」

    私達に礼を言った後……憂は倒れた。

    梓「う、憂!」

    160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 23:48:51.34
    紬「とりあえず……此処まで運べば安心ね」

    梓「はい……」

    私達はあの場所にいる分けにも行かないので二人で少し離れた桟橋へと憂を運んだ。

    憂「…………」

    何故、私達と会った時の憂は誰?と聞いて来たのだろう。

    倒れながらも唯の頭を離さない憂を見ながら考えるが何も分からない。

    161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/08(金) 23:54:30.60
    紬さんは桟橋の下の川を見ていた。
    その姿は悲しみと戦っているようにも思えた。

    憂は見付かった。
    だけど、復讐と言えど人を三人も殺している。

    梓「…………」

    私達はただ少し暖かくなった風に黄昏れる事しか出来なかった。

    憂「ん……うぅっ」

    梓「憂!紬さん!憂が目を覚ましました」

    163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 00:03:02.42
    憂「梓ちゃん……?」

    梓「う、憂ぃ!大丈夫なの?」

    憂「……うん、そっかお姉ちゃんもういないんだ」

    紬「…………」

    梓「うん……唯はもう……」

    憂「お姉ちゃん私を守ってくれた……」

    梓「……え?」

    憂「ずっと私を守ってくれた……あの男達からも私を……お姉ちゃん……お姉ちゃん……」

    憂はまた私達に涙を見せた。
    唯の頭を抱き締めながらひたすら泣いていた。

    166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 00:13:01.02
    憂は守ってくれたと言っていた。
    唯が私を守ってくれたと言っていた。

    憂「うぅ……お姉ちゃんお姉ちゃん……」

    死んだ唯がどうやって憂を守る?
    いいや、今はそんな事どうだって良い。

    今はただ憂を慰めよう。
    私では彼女を慰められるか分からないけど……力の限り彼女を慰めてやろう。

    私が彼女の肩に手を置こうとした瞬間に彼女は立ち上がった。

    憂「……さようなら」

    167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 00:19:21.67
    梓「え……?」

    憂は走り出した。
    桟橋の先まで彼女は走り出し止まった。

    梓「憂!」

    紬「憂ちゃん!」

    彼女は私達の呼び掛けに振り返る事も無く川を見ていた。

    憂「お姉ちゃんありがとう……私を守ってくれて今度は私が守ってあげるからね……」

    168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 00:31:29.97
    ―――思えばずっとお姉ちゃんが私を守ってくれた。生きている時も犬に生まれ変わった時も……死んだ時もずっとお姉ちゃんが私を守ってくれていた―――

    憂「さようなら……梓ちゃん紬さん和さん」

    憂は桟橋から身を投げた。

    梓「憂……憂ぃ!」

    ―――冷酷なまでに寒い水の中で私はお姉ちゃんを抱き締める。微かだけど確かな暖かさを感じた。次は私がお姉ちゃんを守ってあげるからね―――

    遺体はいくら待っても上がっては来なかった。おかげで憂は何処かで生きている……私は毎日そんな事を思うようになった。

    170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 00:40:14.60
    和「それじゃあ憂は…………」

    紬「はい……」

    憂は何故、桟橋から身を投げたのだろう。
    きっと、死んだ姉を欲するあまり……耐えられなくなったんだと思う。

    紬「それじゃあ私達はお参りをしてから……」

    和「……うん」

    紬「賽銭箱に行くわよ梓ちゃん」

    梓「あ……は、はい」

    172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 00:47:36.32
    和さんと別れた私達は賽銭箱の前に座った。

    梓「何故、憂は私達と会った時に誰?と言ったんでしょうね……」

    紬「あれは憂ちゃんではなく唯ちゃんよ」

    梓「……え?でも、唯は死んだはずじゃ……」

    紬「確かに唯ちゃんは死んだ……でも、彼女の魂までは死んでいないわ」

    梓「魂……?」

    173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 01:01:41.96
    紬「襲われ汚され自分を守ってくれるのは唯しかいない……なのに唯は死んでしまった」

    梓「…………」

    紬「憂ちゃんは恐怖からの守護を欲していたのよ。欲するあまり……死んだ唯の魂が彼女に乗り移り憂は唯となって獣と化した」

    梓「獣……」

    長男を殺した時に憂を見た違和感……もしかして本当に唯の魂が憂に乗り移っていたのか?

    174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 01:10:51.59
    紬「そうして蘇った唯は憂ちゃんを傷付けた人を……殺していった」

    梓「まさか……そんな事って有り得るんですかね?」

    紬「分からない……分からないわ……彼女達は二人で唯一。彼女達の事は彼女達に聞いてみないと分からないわ」

    梓「…………」

    憂が身投げをした後、長男の家の前に落ちていた着物を袖から取り出す。

    梓「でも憂は……」

    紬「………………」

    176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 01:18:54.08
    紬「あら?それは憂ちゃんの着物よね?」

    梓「あぁ……はい」

    紬「じゃーんこれなーんだ?」

    梓「あぁ!」

    紬さんが自信満々に私に見せた物。
    それは都忘れの花柄の布だった。

    梓「み、見付けたんですか?」

    紬「えぇ!苦労したのよ~。そこで私に一つ提案があるんだけど聞いてくれるわよね?」

    梓「提案?」

    177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 01:27:59.46
    紬「梓ちゃんが持ってる布を貸してちょうだい?」

    梓「いいですけど……何するんですか」

    紬「いいからいいから」

    私は持っていた布を紬さんに渡した。
    紬さんは憂の布と唯の布を結び付ける。

    梓「何するんですか?」

    紬「神頼みよ~布を賽銭箱に入れて二人が次に生まれ変わる時は幸せになりますようにってお祈りしましょ?」

    梓「紬さん……いいですね!それ!」

    179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 01:43:07.52
    私達は二人で布を賽銭箱に無理矢理押し込み入れた。

    手を二回叩いて二人の幸せを神に祈った。
    憂と唯は二人で唯一。

    梓「これで次に二人が生まれる時は幸せになりますね!」

    紬「えぇ!より強い絆で結ばれるわ」

    梓「はい!」

    紬「梓ちゃん都忘れの花言葉って知ってる?」

    梓「え?何ですか?いきなり」

    紬「都忘れの花言葉は別れって言うらしいわよ」

    梓「……別れ」

    今の私達にピッタリの花言葉だ。
    だけど、私達は憂や唯と別れても彼女達は別れてはいない。
    唯と憂は二人で一つ。

    もう一度手を合わせ祈ってみる。
    唯と憂が来世で幸せになりますように。


    第四話
    おわり

    181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 01:51:53.84
    一応、梓偏唯憂偏が終わりました。
    次は律澪偏です。
    30分の休憩を挟むだ後に続きを書きます

    183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 02:24:48.80
    【第五話:過去】

    一年前、私が三味線を弾いていると明るい声の女と出会った。

    明るい女の名は律。
    彼女とはすぐに意気投合し私達はお互い友人同士となった。

    幼い頃から目が見えない私にとって彼女は私の光だった。

    律「おーい澪ー!団子食いに行こうぜー!」

    澪「また、団子を食うのか律?」

    186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 02:28:48.68
    律「えー!いいじゃんいいじゃん団子食おうぜー」

    澪「嫌だ私は魚が食いたい。何処かで食いに行くのなら私はめし屋がいい」

    律「めし屋に団子ってあるか?」

    澪「無い」

    律「じゃあ団子屋に行こうぜー!」

    澪「どうしてそうなる」

    189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 02:33:41.84
    律「あー団子が食いてーよー」

    澪「こう言うのはどうだ?めし屋に行った後に団子屋に行く」

    律「却下だねー私は団子を腹いっぱい喰いたい」

    澪「もういい。私はここで待つから律は一人で団子を食いに行けばいい」

    律「もう仕方ねぇなぁ……そいじゃ行ってくるよ」

    澪「気をつけてな」

    律「わかったー」

    190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 02:44:03.12
    私と律は同性だ。
    同じ性別……私は彼女に恋をしていた。

    流石に出会って間もなくはそんな感情は微塵も無かったが月日が経つにすれ彼女に淡い感情を抱くようになっていた。

    目が見えなく人の姿形を見る事が出来ない私でもそんな感情は抱く。

    律は私の事をどう思っているのだろうか?

    191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 02:52:58.83
    彼女に私の気持ちを聞いてみたいがそれはとても勇気がいる事だ。

    澪「律……」

    それに私と律は同じ性。
    もし、聞いてみて律が怪訝な態度をとれば二度と私の前には現れなくなってしまうかもしれない。

    気持ちが悪いと言われてしまうかもしれない。

    194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 03:09:54.11
    律「たっだいまーっ!あー食った食った」

    澪「おかえり律」

    律「ほら土産に団子持って来たぞ食え」

    澪「あぁ、後からいただくよ」

    律「んだよー今食えよー美味いのに味が落ちるだろォ!」

    澪「仕方ないな……じゃあ今食べるよ」

    律「それでよろしい!」

    195 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 03:15:16.30
    澪「ん……やっぱり純さんの所の団子は美味いな」

    律「だろ?私もあそこは好きなんだ」

    澪「ふぅん……なぁ律知っるか?あそこら辺の近くにある神社には変わった姉妹がいるらしい」

    律「変わった姉妹?」

    澪「犬を姉と呼んでいる姉妹があの神社にはいると聞いた。何故、犬を姉と呼んでいるのか興味は無いか?」

    律「えー…無いよ。澪そういうの好きだよな」

    澪「そういうのとは?」

    律「不思議って言うのか?好きだよな澪」

    澪「まぁな」

    196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 03:24:47.39
    律「何で好きなんだ?」

    澪「私は目が見えない。だから色んな事に興味がある」

    律「あぁ、成る程!じゃあ私の顔にも興味があるのか?」

    澪「親しい友人の顔を知らないんだ。興味が無い方がおかしい」

    律「私も澪には興味があるぞ」

    澪「私に興味がある?」

    律「なーんて洒落だよ洒落」

    澪「何だ洒落か」

    驚いたではないか。

    197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 03:32:13.78
    律「アハハハハッ澪の顔赤いぞー」

    澪「そうか赤いか」

    律「随分と反応が薄いんだな」

    澪「驚いている」

    律「あ、耳まで赤いぞ!まるで猿の尻みたいに赤い」

    澪「失礼な猿の尻とは何だ」

    律「アハハすまんすまん。あ、今日は澪の家に泊まっていいか?」

    澪「あぁ、別に構わないよ」

    198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 03:42:59.31
    律「あ、それともう一つ……澪私の事好きか?」

    澪「な……何?」

    律「好きかって聞いているんだよ」

    澪「それは……友人としてでは無く……恋仲としと言う事か?」

    律「あぁ、それ以外に何がある?」

    私が言えずにいる事を律は随分とサラリと言うものだ。

    怖いと言う感情は彼女には無いのか?

    律「で、どう何だ?」

    200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 03:53:05.79
    澪「それは……好きだよ。友達としても恋仲としても」

    律「やっぱりな何となくそんな気がしていたんだ。いきなりでごめんな」

    澪「…………あぁ」

    律「私……明日見合いに行くんだ」

    澪「見合い?」

    律「あぁ……親が勝手に決めちゃって……最後にお前に気持ちを伝えようと思ってさ」

    澪「…………本当か?」

    律「嘘を言うんだったらもうバラしてるさ」

    今日、律と団子屋に行っていればよかった。

    201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 04:01:11.83
    澪「律が見合い何て……そんな」

    律「まぁそんなに気を落とすなって……会えない分けじゃないんだから」

    澪「…………」

    律「アハハ……もっと早く言おうとは思ったんだけど中々言い出せなくて」

    澪「なぁ、律……頼みがある」

    律「ん?何だ?」

    澪「お前が見合いに行って嫁入りする前に、お前と一夜の思い出が欲しい」

    律「は、はぁ?」

    202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 04:13:36.85
    律「一夜の思い出って交合うって事か……?」

    澪「あぁ……」

    律「大胆な事を言うな澪……」

    澪「すまない」

    律「いいよ。私を抱け……処女をお前に捧げるよ」

    澪「本当か?本当にいいのか?」

    律「あぁ、お前と交じる事が出来たら私も本望だ」

    203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 04:17:40.96
    澪「律……!」

    私は律の手を握った。
    律の手は汗で湿っていたがそれは私も同じだ。

    律「澪……」

    私の手を手繰りよせ律は私に抱きついた。

    そして、唇に柔らかく湿っぽい感触。
    律の唇だ。

    206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 04:31:32.28
    澪「んんっ……はぁっ」

    律は私の口の中で舌をウネウネと動かしている。

    団子を喰ったからか彼女の舌は甘かった。

    律「むふぅっ…………っはぁ」

    唇に柔らかい感触が無くなり今度は私の胸に律の手の感触。

    律「脱がして……いいか?」

    澪「あぁ……」

    律の吐息が耳に吹き付けられ身震いをした。

    着物が律の手によって脱がされる。まだ誰にも見せた事がない私の肌を律にさらけ出す事は……とっても恥ずかしかった。

    208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 04:37:11.41
    背中に柔らかい物が当たる……ほんのちょっと固い物も当たった。

    澪「んんっ……はぁっ……」

    私の後ろで律は抱きしめるように私の胸を揉んでは首筋で舌を這わせていた。

    律も着物は全て脱いだのだろう律の柔らかく滑りの良い肌がとても気持ち良い。

    律「澪……ずっとこうしたかった」

    澪「はぁっはぁっ私もだ……律……」

    209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 04:49:26.29
    下腹部が熱くなって来ている。
    それに、何だか湿り気を帯びている。

    律「指……入れるぞ」

    耳元で律が囁いた。
    私はただ黙ってコクリと頷き律に身を任せた。

    澪「あぁぁっ!」

    陰部に何かが入って来る。

    澪「り、律ぅっ!あぁっ……!」

    律は左手で私の胸を強く掴み。
    右手で私の陰部を探った。

    息が上手く吸えない。

    澪「律……律!あぁっんんっ」

    211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 04:57:42.99
    律「澪……私のにも指を入れてくれ……」

    澪「はぁっはぁっわ、わかった」

    手探りで探るが律の陰部が何処にあるのか分からない。

    ふっと律が私の手を掴んだ。
    そして、そのまま自らの陰部に私の手を当てた。

    律の陰部は湿っており軽く触れただけでもヒクヒクと動いていれのが感触でわかった。

    澪「はぁっはぁっ……入れていいか?」

    律「あ、あぁ……」

    213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 05:06:27.81
    律の陰部に指を入れる。
    陰部の中は何だかゴリゴリしていた。

    それに、熱い。
    陰部がまるで私の中指を飲み込むよう吸い付いている。

    ゆっくりと中指を動かしてみる。

    律「んんっ……!」

    声を押し殺した律のあえぎ声が部屋に響く。

    澪「痛くないか?」

    律「だ、はぁっ大丈夫っ……」

    214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 05:12:29.38
    少しだけ早く動かしてみると律は大きな声を出した。

    陰部が更に強く私の中指を締め付ける。

    律「澪ぉっ……気持ち良い……気持ち良いよっ!」

    律は私の背中に爪を立てながらそう言った。
    凄く興奮してるのだろう痛みは感じなかった。

    今度は中指を上下に早く動かしてみる。

    律「あふぅぅぅんっ!」

    215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 05:20:12.09
    澪「はぁっはぁっはぁっはぁっ」

    律「あぁんっ……澪ぉ澪ぉおっ!」

    不意に私の顔に何かが掛かった。
    水のようだか少し粘りを帯びている。

    律「ご、ごめん……」

    澪「イったのか?」

    律「あ、あぁ……はぁー気持ち良かった」

    澪「私も気持ち良かったよ律」

    217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 05:38:40.75
    律「……なぁ、澪」

    澪「どうした?」

    律「今度、見合いをする相手に……断るよ」

    澪「ほ、本当か?」

    律「あぁ……だからさ澪……今度からは二人で一緒にいよう」

    澪「うん……でも、大丈夫なのか?見合いを断ったりなんかして」

    律「きっと大丈夫だろ。無理矢理、婚約させられそうになったら逃げるしな」

    澪「そうか……」

    218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 05:44:48.34
    律「お前とは交じり合えたしお互いの事をもっと知る事が出来た……ありがとう澪」

    澪「礼を言いたいのは私の方だ。ありがとう律」

    この後、二人で長い時間話し合い朝を迎えた。

    さようならと言う律の声はとっても明るかった。

    私は目が見えない。
    暗闇しか知らない律は私に光を教えてくれた。


    第五話
    おわり

    219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 05:48:40.96
    30分休憩をとります

    221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 06:08:30.59
    【第六話:心中】

    梓「団子だぁ!団子だぁっ!」

    紬「喉に詰まらせないように食べるのよ?」

    梓「三日振りの飯だぁ!」

    団子を手当たり次第に食べる食べる。

    梓「美味しい……美味しいです!」

    純「そりゃあ私が作った団子だもんマズイ分けがない」

    美味しい……本当に美味しい……。

    梓「美味しいです……美味……ぐむっ!」

    223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 06:13:21.24
    梓「ぐむむむっ!」

    純「梓?梓!?」

    い、息が出来ない……。
    団子が喉に喉に……。

    純「ほ、ほら水!」

    純から水を受け取り一気に飲み干す。

    梓「ぷ、ぷっはぁーっ死ぬかと思いました……」

    紬「だから最初に忠告しておいたのに……」

    梓「だって三日振りの飯なんですもん……」

    224 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 06:16:50.62
    純「団子屋の私が言うのも何だけど団子は飯じゃない。菓子よ!」

    梓「腹に入れば何でも飯ですよ」

    紬「食いしん坊ねー」

    違うただ死にそうなぐらい腹が減っているだけだ。

    純「あ、そう言えば二人共知ってる?心中があったんだよ」

    紬「へぇ~心中があったのね~」

    梓「し、心中……」

    225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 06:24:58.96
    純「ほら、ここからすぐ近くに蕎麦屋があるでしょう?その近くで男女が心中してみたい」

    紬「何だ男女なのね」

    心中したのが男女と言う事に何か不満があるのかこの人は……。

    純「男の指が切り落とされ……ハメたまま死んだらしいよ」

    梓「ハ、ハメたまま…………」

    紬「ふぅん」

    梓「でも、良くその男女は心中しようと思いましたね」

    227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 06:33:37.65
    純「本当……私ならいくら愛する人でもそれだけは無理」

    本来、心中の意味は『真心』と同じで男女の『二心たき処を表す印』を指す。

    その行為は誓紙・爪はぎ・入れ墨に指切・貫肉そして行き着く先が心中死。

    真心の死である。

    それに心中は大罪だ。

    228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 06:42:59.94
    心中死は大罪……心中死をした者を弔ってはいけない。
    一方が残った場合主犯とし斬首。

    双方が残った場合、三日間日本橋に全裸で晒され公民権を剥奪。

    若い娘が全裸で晒され手荒な仕打ちを受ける事もある。

    梓「怖いなぁ……」

    純「怖いね……」

    心中があった事を話しておいて何が怖いね……だせっかくの団子がまずくなったじゃないか。

    229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 06:51:31.96
    紬「心中なんてやるもんじゃないわね~」

    梓「そうですよね……」

    紬「日本橋に晒され男達に無理矢理犯されるだなんて嫌だわ~」

    この人は恐ろしい事を随分と涼しい顔で言う。

    梓「そう言えば紬さん今日仕事は?」

    紬「休みよ~梓ちゃんは絵を書かなくていいの?」

    梓「書いたって売れないですもん……」

    純「元気だしなよ。団子一つやるから」

    梓「本当ですかぁっ!いただきます!」

    231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 06:57:14.96
    梓「はぁ~……久しぶりに水以外でお腹いっぱいになりました!紬さんと純さん奢ってくれてありがとうございます」

    紬「いいのよ~じゃあお金かえして?」

    梓「……へ?」

    紬「冗談よ~びっくりした?」

    梓「あ、当たり前ですよ!」

    紬「それじゃわ私達はもう行くわね。純ちゃんさようなら」

    梓「さようならー」

    純「また来るんだよ~」

    梓「お金があったらね……」

    233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 07:07:24.83
    梓「ふわぁ~……お腹いっぱいになったら眠たくなって来ましたよ」

    紬「太るわよ~」

    梓「ううっ……あれ?この蕎麦屋……」

    紬「純ちゃんがあった心中があった場所ね~」

    遺体は回収されたらしい。
    地面には血が太陽の光りに照らされ渇いていた。

    梓「何か……怖いですね。早く行きましょう」

    紬「そうね~あら?あそこにいる人って……」

    紬さんが指を指した方向を見てみると澪さんが立っていた。

    234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 07:15:27.82
    紬「澪ちゃん?」

    澪「紬さん……ですか?」

    紬「そうよ~」

    彼女は目が見えない。
    だから、声で人を判断しなくちゃならない。

    私はあまりこの人とは話した事はないから喋べらない方がいいだろう。

    紬「そこの蕎麦屋で心中があったらしいわね~」

    澪「えぇ知ってます。誰が話してるのを聞きました」

    235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 07:24:58.91
    紬「物騒よね~」

    澪「はい……」

    何だか澪さんは悲しそうな顔をしている。

    澪「心中……あの、私帰りますね」

    紬「えぇ、今日は三味線は弾かないの?」

    澪「すみません……そう言う気分じゃないので」

    紬「そう、なら仕方ないわね」

    澪「じゃあ私はこれで……さようなら」

    紬「さようなら澪ちゃん」

    236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 07:33:35.82
    梓「何であんな悲しそうな顔をしていたんですかね?」

    紬「分からないわ。気になるけど触れないようにしなきゃ」

    梓「え?どうしてですか?何があったか聞けばいいじゃないですか」

    紬「知る事を欲くばってたら人間関係がおかしくなっちゃうわ」

    梓「そうなんですか?」

    紬「そうよ。それに澪ちゃんは何か困ってる事があれば私に相談するわ。それまでは無理に聞きたくはないの!」

    237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 07:41:19.73
    どうやら澪さんと紬さんは仲が良いらしい。
    仲が良さそうには見えないけど。

    紬「それじゃあ私そろそろ帰るわね~」

    梓「あ、はい!気をつけて下さいね」

    紬「わかってるわよ~それじゃあまたね」

    梓「はい、また……」

    私も帰るか……。
    久しぶりにお腹もパンパンだし今日はいい夢を見れそうだ。


    第六話
    おわり

    238 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 07:44:18.26
    30分の休憩をとります

    242 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 08:14:34.07
    【第七:過去2】

    律と交合った日から一ヶ月が経った。

    あの日から私は律とは会っていない。

    目が見えないから律の家へ行く事も出来ずに私はただ彼女を待ち続けた。

    あの日……律は見合いを断ると言っていた。
    もしかして親と何かあったのだろうか?

    243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 08:21:47.95
    思えば律と出会ってから毎日のように彼女と会っていた。

    律が私の部屋に来て私を外へ連れ出して……辺りの風景や花の名前を教えてくれる。

    そんな日々が一ヶ月も無い。

    私には律と一ヶ月会っていないだけで拷問のように感じる。
    早く律と会いたい。

    また彼女に辺りの風景や花の名前を教えてもらいたい。

    244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 08:27:20.17
    この日も律が私の家へ来る事は無いだろう。

    そう思い床に着いて寝ようとした時に律は来た。

    一ヶ月振りに聞く彼女の声はとても新鮮だった。

    律「澪、またせてごめんな」

    澪「り、律か?」

    律「あぁ……私だ」

    今まで何をしていたんだ。ずっと待っていたんだぞ……とは言えなかった。

    彼女が泣き始めたからだ。

    245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 08:34:28.75
    律「澪ぉっ……私無理矢理……無理矢理っ!」

    澪「どうしたんだ?」

    彼女が泣く声は始めて聞いた。
    ヒグラシが鳴く声よりも悲しい声だ。

    律「無理矢理、婚約させられたっ……!」

    澪「無理矢理?」

    律「だから……逃げて来たんだ……なぁどうすりゃいい?」

    澪「…………私の家に住めばいい」

    247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 08:38:47.01
    律「ダメだ……私が毎日お前の家に行っている事は親にバレている」

    澪「律の親が訪ねて来ても嘘を付けばいいじゃないか!」

    律「嘘はいずれバレもんだ……その場凌ぎにしかならないさ」

    澪「じゃあ……どうする?」

    律「…………」

    澪「とにかく今日は此処に泊まれ親が来ても私が嘘を付いて追い払うから」

    律「あぁ…………」

    249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 08:45:08.79
    幸いこの日は律の親は来なかった。

    後で聞いた話だと律と見合いをした相手は有名な歌舞伎役者で金を腐る程に持っているらしい。

    だから、無理矢理。婚約させられたのか……律が不敏で仕方が無かった。

    好きでも無い者と契りを交わす。

    私の想像以上に彼女は深く傷付いただろう。

    今は疲れて寝息をたてている律を手探りで探す。

    手が頭に触れ彼女の頭をそっと撫でた。

    250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 08:51:56.96
    私も寝よう……そう思い彼女の横に寝転んだ時にトントンっと家の戸をを叩く音が聞こえた。

    体を起こし耳を澄ましてみる。
    トントントントン。

    澪「来た……か」

    律を踏まないように慎重に立ち上がり戸を開けてみる。

    聡「姉ちゃん……いますよね?」

    幼い少年の声が聞こえた。

    251 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 09:01:17.23
    そう言えば律は弟がいると言っていた。
    こんな夜中に小さな弟を私の家へ差し向けるとは……何と言う親だ。

    澪「……いないよ」

    律の弟には悪いが帰って貰おう。

    聡「嘘……ですよね?姉ちゃんが行きそうな所って此処以外に無いですもん」

    澪「だからいない……悪いが帰ってくれ」

    252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 09:09:18.95
    聡「姉ちゃんと合わせて下さいよ!」

    澪「何度も言わせるな律はいない」

    聡「…………」

    律「聡……か?」

    いつの間にか律が私の後ろに立っていた。

    今出て来たら連れ戻されるのに……何を考えているんだ。

    律「澪、聡は大丈夫だよ。私が逃げられたのは聡のおかげなんだ」

    澪「……え?」

    254 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 09:19:33.00
    話しを聞いた。
    親に見張られ逃げ出せない律を救ったのは弟らしい。

    律「こんな夜中に外を出歩いたら危ないだろ!」

    聡「姉ちゃんごめん……でも、心配だったから」

    律「心配するのは私だって……」

    澪「とりあえず。朝まで此処に止まるといいよ」

    聡「ありがとうございます……」

    律「全く……」

    心配して来たのにその言い草は無いだろう。
    そう言いたかったがこの状況だ彼女を攻める事は出来ない。

    255 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 09:24:55.90
    律「聡、今日もう寝ろ」

    聡「うん……あ、母ちゃん達には言わないから」

    律「当たり前だ」

    聡「それじゃあ……おやすみ」

    律「あぁ……おやすみ」

    澪「良い弟さんじゃないか」

    律「……そうか?」

    澪「あぁとても姉思いの弟さんだ」

    律「やめろよ……聡が聞いてるだろ……ってもう寝てる」

    澪「疲れたんだろう。ゆっくり休ませてやろう」

    257 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 09:30:22.07
    律「なぁ……澪?」

    澪「どうしたんだ?」

    律「私、夢を見たんだ」

    澪「寝てる時なら誰だって夢ぐらいみるさ」

    律「違う……何か現実的な夢だったんだ。怖くて目が覚めたら聡がいるんだもんびっくりしたよ」

    よっぽど怖かったのだろう。
    律の額には汗が光っていた。

    258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 09:34:54.74
    澪「どんな夢を見たんだ?」

    律「私がお前を殺す夢……恐ろしいかった」

    澪「大丈夫ただの夢だ安心しろ」

    律「あ、あぁ……」

    澪「そろそろ私達も寝るか……」

    律「そうだな……おやすみ澪」

    澪「おやすみ律」

    259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 09:44:24.26
    ドンドンドンドンドンドンドンドン。
    五月蝿い……。

    戸が激しく叩き付けられている。

    律「来た……」

    聡「姉ちゃんどうするの?」

    澪「二人共隠れてて私が何とかするから」

    律「わ、わかった……聡隠れるぞ」

    聡「うん……」

    戸を開けた瞬間、誰かが私の肩を力強く掴んだ。

    260 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 09:53:04.35
    「律は律は何処なの!?」

    肩を揺さぶられながら甲高い女の声が聞こえた。

    「ここにいるんだろ!出せ!」

    次に野太い男の声……律の両親だ。

    澪「律はここにはいません。律に何かあったのですか?」

    「ここにいるのは分かってるの!早く律を出して頂戴」

    澪「だからいません!帰って下さい」

    「早く出せ!」

    私の言葉を聞く耳を持っていない……か。
    どうやって追い返そう?

    262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 10:05:18.91
    澪「だからいないって言ってますよね!帰って下さいよ」

    「もういい!退け!」

    体が強く押され尻餅を付く。

    「律!此処にいるんだろ?相手は金持ちなんだ!無理矢理にでもお前を結婚させるぞ」

    驚いた……この両親。
    律を金持ちと結婚させて自分達だけ楽をするつもりか……。

    澪「いくら探してもいないって言ってるだろ!早く帰れ!」

    「五月蝿いわ!目が見えない癖に生意気な小娘ね」

    左頬に鋭い痛みが走った。

    澪「うぅっ……」

    264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 10:17:19.46
    律「澪に手はだすなよ!」

    澪「り、律……」

    今、出て来たら連れ戻されるぞ。

    「見付けた……」

    「ほら、帰るわよ!」

    律「嫌だ!私は……私は絶対帰らない」

    「五月蝿いんだよ!だから、コイツを岡場所か吉原に稼ぎを送らせればよかったんだ!」

    澪「…………」

    腹の底から……黒い感情が巻き上がって来る。

    266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 10:26:23.36
    「男なら俺の仕事の跡を継げるが男じゃない……対して金も稼ぐ事すら出来ない!ただ婚約するだけで金持ちになれるんだ早く来い!」

    律「絶対に……嫌だ!」

    「いいから早く来なさい!」

    私は手探りで探していた。
    確かここら辺に私の杖があったはずだ。

    澪「……あった」

    手に硬い感触。
    紛れも無い私の杖だ。

    268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 10:38:38.73
    杖を持ち立ち上がる。

    言い争う声で分かる……律の両親が居る場所。

    声がする方向に私は杖を振りかざす。

    律「み、澪……?」

    力強く……杖を振ると硬い物が何かに当たった。

    「ぐぅっ……」

    見事に当たったようだ……。

    澪「律!早く逃げろ!」

    律「あ、あぁ……!お前も一緒に来い!」

    律は私の手を取り走り出した。
    そして、私達は疲れなど忘れてひたすら走り続けた。

    269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 10:46:31.39
    律「はぁっはぁっはぁっはぁっ」

    澪「はぁっはぁっはぁっはぁっ」

    律「あは……あははははこんなに走ったのは久しぶりだな澪!」

    澪「はぁっはぁっ……そうだな」

    律「お前の三味線が取られた時もこんなにいっぱい走ったよな」

    澪「そんな事もあったな……」

    律「あぁ、あの時の澪の顔と来たらもう傑作だったよ!」

    270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 10:57:26.25
    澪「………………」

    律「まるでさ!猿のような顔をしてさ私の商売道具がー!商売道具がーってさ叫んでてさ!」

    澪「………………」

    律「三味線を澪から奪った男をさ……二人で走って追い掛けて……楽しかった」

    澪「………………」

    律「あの時が1番楽しかった……もう、あの頃には戻れないのかな?」

    澪「………………」

    律「何か言ってくれよ……なぁ澪!」

    272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 11:08:40.38
    澪「分からない……ごめん分からないよ律」

    律「……だよな。私はこれからどうしよう」

    澪「私の家で一緒に住もう!」

    律「ダメだ……また私の親が来る。何よりお前に迷惑が掛かるし……」

    澪「……じゃあ二人で何処か遠くに行こう」

    律「もうお前に迷惑は掛けたくないんだ……澪」

    澪「掛けていい!沢山掛けていいから……」

    律「…………結構ツライんだよ」

    澪「ツライ……?」

    273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 11:16:51.22
    律「好きな奴に迷惑を掛けるのってツライんだ」

    澪「律…………」

    律「なぁ澪?私の最後の頼みを聞いてくれるか?」

    澪「あぁ……何でも聞くよ」

    律「……一緒に心中しよう」


    第七話
    おわり

    274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 11:19:45.60
    30分休憩をとります

    276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 11:49:44.70
    【第八話:過去3】

    私は小さい頃から親に虐待をされていた。

    茶をこぼしたら殴られ夜遅くまで起きていたら全裸で家の外に出されたりした。

    弟の方は私と比べてみると親の対応が違くもの凄く可愛いがられていた。

    憎くは無かった。
    ただ、羨ましかった。

    私には見せた事は無い母親笑顔を聡は毎日のように見ていたんだから。

    278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 11:54:23.19
    私が十八才を過ぎた頃……街を歩いていると三味線の音色が聞こえた。

    綺麗な音色だ……そう思って三味線の音色の方へ無意識に足が動きだしていた。

    三味線を弾いている人は綺麗な人だった。
    長い黒髪に細く白い指。

    私は三味線の音色と彼女の美しさに目を奪われ、ただ三味線を弾く彼女をジッと見詰めていた。

    279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 11:59:49.61
    彼女は三味線を弾き終わり、しゃがんで地面に何かの絵を書いていた。

    いいや、絵を書いているんじゃない。
    小銭が入った椀を手探りで探していた。

    彼女は目が見えていない。
    そうわかった瞬間、私は椀を拾いあげ彼女にソッと手渡した。

    ありがとう。
    最初に聞いた彼女のこの言葉を今でも鮮明に思い出せる。

    280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 12:08:50.40
    それから、私達は日が落ちるまで話し続けた。

    親近感……そんな物を感じたのは私の方では無かったと思う。

    この日から私は澪と友人となった。

    家に招待され夜が明けるまで狂ったように話続けた。

    喜怒哀楽をあまり人に見せない人間なんだろう。
    澪はあまり笑わない。

    笑う時は愛らしい笑顔を見せるのだけど。

    281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 12:19:23.21
    月日が経つにつれて私達は更に仲が良くなった。

    笑顔も当たり前のように私に見せてくれた。

    喜怒哀楽の感情も全て私に見せてくれた。

    喜んだ時は子供のようにあどけなく怒った時は凄く怖い。

    悲しんでいる時は私まで悲しくなり楽しんでいる時は私まで楽しい気分になる。

    澪は私の光だ。

    282 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 12:30:54.72
    澪「……心中か」

    長い沈黙を破り彼女はポツリと呟いた。

    家族からも見捨てられた……だけど私は一人では生きてはいけない。

    このまま澪と暮らすのは悪くは無いが彼女にまた迷惑は掛けたく無い。

    いや、一緒に心中死をする事も彼女にとっては大きな迷惑だ。

    本当に我が儘な頼みだ。
    私は何て馬鹿なんだろう……さっきの話は無しにしよう……そう言おうとした瞬間、澪がまた沈黙を破った。

    澪「心中者は死後の世で結ばれると言われている」

    284 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 12:37:48.77
    律「……え?」

    澪「死後……来世に至ってまで変わらぬ己変わらぬ愛を誓う」

    律「なぁ澪?……さっきの話しは……」

    澪「お前と心中するのも……悪くは無いかもな」

    律「…………澪」

    澪「お前と心中し……死後の世界でも私達は結ばれる。来世でも結ばれる……何故、心中死は大罪扱いされるんだろうな律」

    律「…………」

    286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 12:49:34.19
    澪「私は律となら心中をしても良いよ」

    律「死ぬのが怖くないのか?」

    澪「怖いよ。だけど、お前のこれから先の人生を考えるともっと怖い」

    律「……………」

    澪「心中をしよう律……死んだ後も極楽浄土で同じ蓮華の上で生まれよう」

    律「本当に……いいのか?」

    澪「あぁ、来世ではお前の顔が見られるかも知れないしな」

    287 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 13:02:14.41
    私達は二人で川へと向かった。

    近くに止めてあった船から縄を調達しお互いの体に巻き付けた。

    律「……本当にいいのか?」

    澪「あぁ……」

    澪の生唾を飲み込む音が聞こえた。

    律「やっぱり私……親の元に帰り婚約するよ」

    澪「それだけは駄目だ!……駄目だ。嫌なんだ律が他の人の物になるのは……お前が悲しい思いをするのも嫌なんだ」

    288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 13:11:08.79
    律「…………もし、生きてたらどうする?」

    澪「その事は考えないようにしよう……良い事だけを考えながら死のう」

    律「……そうだな」

    澪「じゃあ……行こうか……」

    律「……うん」

    私達は川の中へと歩を進めた。
    冷たい水が気持ち良い。

    289 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 13:20:17.66
    律「また来世で会えるかな?」

    澪「会えるさ必ず……」

    律「………………」

    川が急に深くなり私達は足を取られ沈んだ。

    死ぬと言う恐怖の中、私達はお互いに抱き締め合い接吻を交わした。

    二人の体が水の中へ沈んで行く。
    段々と意識が薄くなる……。

    目をうっすらと開いて澪を見た。
    彼女は最初に私に見せたあの笑顔を私に見せてくれた……。

    死んだ後も……極楽浄土で……同じ蓮華の上で生まれよう。

    291 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 13:28:03.64
    ・・・・・・・・

    犬……の声が聞こえる。

    澪「ん……ふぅ……」

    何も見えないは目が見えないから当たり前か……。

    そうだ、もし私が死んだのなら律がいるはずだ。
    音を頼りに彼女を探してみるが犬の声以外、何も聞こえない。

    和「あ、やっと目を覚ましたみたいね」

    知らない声が聞こえた。
    この声の主は神様なんだろうか?

    293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 13:37:48.60
    澪「アナタは神様ですか?律は何処にいるんですか?」

    和「え……違うし知らないわよ。それより大丈夫なの?アナタ川の浅瀬で倒れていたのよ?」

    澪「……え?」

    和「見付けた時は顔が青白かったの。最初は死んでいると思ったけど……生きててよかったわ」

    生きてて……生きててよかった?

    澪「ここは極楽浄土では無いんですか?」

    和「いいえ。違うわよ」

    294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 13:49:52.69
    澪「嘘だ…私は死んでいるんですよね?」

    和「何処からどう見ても生きてるわよ?」

    じゃあ私は……私達は。

    澪「律は?律は何処にいるんですか!?川で私を見付けたんですよね?女がもう一人いませんでしたか?」

    和「いなかったわね……」

    私達は……心中を失敗した。

    澪「律、律……ううっ……」

    297 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 13:58:52.95
    律はあのまま川の底へと沈んだのだろうか?
    それとも、流されたのだろうか?

    もしかしたら……もしかしたら律は生きているのかも知れない。

    唯「ワン!」

    さっきよりも近くで犬の声が聞こえた。

    憂「あ!お姉ちゃん!」

    足に何かが這い身震いをした。

    唯「クゥーン……クゥーン……」

    多分、犬が私の足を舐めているのだろう。

    299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 14:02:08.52
    憂「ご、ごめんなさい……」

    澪「………………」

    唯「クゥーン……」

    律を……律を探さなきゃ。
    立ち上がり歩くが何かにぶつかる。

    澪「痛っ……」

    憂「だ、大丈夫ですか?」

    和「……貴女、もしかして目が見えないの?」

    301 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 14:08:54.87
    澪「……はい」

    和「やっぱり……最初、私と話す時、人の目を見て話さないから人見知りだと思っていたけど……憂、彼女の体を支えてあげて」

    憂「はい!」

    憂と呼ばれた女が私の肩を掴んだ。
    足元には犬がいるのだろう毛が私の足をくすぐっている。

    和「ねぇ?よかったらでいいんだけど何で川で倒れていたのか教えてくれない?」

    澪「…………誰にも言わないと約束してくれますか?」

    和「勿論、約束するわ」

    302 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 14:15:04.64
    澪「心中したんです……最愛の女性と……」

    憂「し、心中!?」

    澪「お互いの体を縄で縛って……川で心中をしようとしたんですけど……」

    和「そう……辛いだろうからそれ以上は話さなくていいわ……見付けたのが私でよかったわね」

    澪「……ありがとうございます」

    もし見付かったのがこの人では無かったら……今頃、私は酷い仕打ちを受けていただろう。

    303 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 14:25:54.15
    澪「律を……律を探さなきゃ」

    和「その律と言う人は一緒に心中をした人?」

    澪「……はい、今も何処かで私を待っているかも知れません……だから探さないと」

    和「でも、貴女以外の人は川にいなかったわ……その律と言う人はもう……」

    澪「……川に連れて行って下さい。律はまだ生きています……」

    根拠は無かった……。
    だけど、律がまだ生きている……そう思わなければ救われ無かった。

    306 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 14:38:23.06
    和「わかったわ……じゃあ憂この人を川まで連れて行ってあげて」

    憂「あ、はい!分かりました」

    澪「……ありがとうございます」

    憂「いえ……それじゃあ行きましょっか!お姉ちゃん行くよ」

    唯「ワン!」

    今、この人は犬に向かってお姉ちゃんと呼んでいたのか?

    もし、そうだとしたら……犬をお姉ちゃんと呼んでいる人はこの人だったのか。

    308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 14:47:37.13
    憂「着きましたよ!」

    唯「ワン!」

    澪「……誰か人はいないですか?」

    憂「私達、以外は誰もいませんね」

    澪「そうですか……」

    その場に座り込む。
    涼しい風が心地良い。

    澪「今日は私……ここにいます。付き合わせる分けにもいきませんし……帰っていいですよ」

    憂「え?で、でも…………」

    澪「お願いします……一人になりたいんです」

    309 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 14:57:05.72
    憂「分かりました……それじゃあ私達はこれで……行くよお姉ちゃん」

    唯「ワン!」

    澪「…………わざわざ送って貰いありがとうございます」

    憂「いえ……いいんですよ……あの、死んじゃ駄目ですよ!」

    澪「はい……律を見付けるまでは死ねません」

    憂「……律さん見付かると良いですね!じゃあさようなら」

    唯「ワンワーン!」

    澪「さようなら……」

    310 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 15:09:25.82
    いくら待っても律は私の目の前には現れなかった。

    少し肌寒い。
    鈴虫の鳴く声がちらほらと聞こえる。

    澪「律……まだかな」

    寂しさを紛らしたくて一人言を呟いてみた。

    誰も返事はしてくれない。
    余計に寂しくなるだけだった。

    澪「律……何処にいるんだろう?」

    ジャリ……背後で足音がした。

    澪「まさか……律?」

    311 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 15:20:59.09
    紬「ごめんなさい。人違いだわ」

    澪「…………」

    律じゃ無かった……。

    紬「こんな夜に一人でずっと座ってるわね~気になって来ちゃったわぁ~」

    澪「ほっといて下さい……」

    紬「ほっとけ無いわよ!」

    お節介な人だな。
    私にあまり関わって欲しくない。

    紬「貴女、探し物があるんじゃない?」

    澪「……え?」

    312 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/09(土) 15:33:20.00
    紬「何かを無くしたからこんな所でずっと座っているんでしょう?」

    澪「…………」

    紬「もしよかったら私も貴女が無くした物を探すのを手伝うわ」

    澪「簡単に見付かる物じゃないですよ……」

    紬「そうなの?それじゃあ一人で探すのは不安よね~どう?私と一緒に貴女が無くした物を探してみない?」

    澪「…………」

    紬「私は探し屋と言う仕事をやっているの。私にまかせれば貴女の探し物すぐに見付かるわ!」


    第八話
    おわり

    348 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 02:08:09.23
    【第九話:一蓮托生】

    澪「ぐうっ……く、苦しい……」

    見た私は見た。

    澪「やめ……やめてっ……」

    いくら待っても姿を現らわさない律の姿を私は見た。

    暗闇の中、蛍の光りのような淡い光を放ちながら私の首を絞める律の姿を見た。

    澪「苦しい……ぐるじっ……」

    確かに律の姿を私はこの目で見た。

    354 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 02:46:48.45
    梓「はぁー……」

    お腹が減り過ぎて絵を書く気にもならない。

    梓「団子が食べたい…」

    何故、私はこんなにも金が無いのだ。

    紬「梓ちゃーん!」

    梓「……ん?」

    どうやら来客のようだ。
    家の外から紬さんの声が聞こえた。

    355 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 02:50:51.98
    梓「どうしたんですか?」

    紬「饅頭怖くない?」

    梓「いえ怖くないです」

    紬「私には梓ちゃんが饅頭を恐れてるように見えるわ~」

    何を言ってるのか全く理解が出来ない。

    梓「何で私が饅頭を怖がるんですか?」

    紬「素直に饅頭怖いと言っていれば梓ちゃんに饅頭をご馳走したのに……」

    あぁ……成る程、落語か全然気付か無かった。

    梓「饅頭怖いです!」

    357 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 02:57:30.70
    紬「じゃあ一緒に饅頭を食べに行きましょう!」

    梓「え?……いいんですか?」

    紬「勿論よ」

    この前の団子の時もそうだが紬さんは人に色々と食べ物をご馳走するのが好きらしい。

    有り難いのだが何か裏がありそうで怖い。

    紬「早く行きましょう!」

    梓「あ、はい!」

    まぁ、タダで饅頭が食えるのだ。
    先の事は考えないようしよう。

    358 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 03:04:12.67
    饅頭屋に辿り着いた私と紬さんは席に座り饅頭を頼んだ。

    梓「饅頭なんて久しぶりに食べますよ!」

    紬「売れない絵師だからあんまり饅頭が食べれないのね!」

    梓「失礼な!頑張って絵を書いてるんですからね!」

    紬「梓ちゃんの絵って見ていて面白くないのよね~」

    梓「なっ……何ぃっ!」

    359 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 03:14:53.33
    紬「色使いも下手だし……この前に見た燕の絵なんて死んでいる燕を見ているみたいだったわ~」

    随分と真っ直ぐに色々と言ってくれる……。

    梓「あはは……」

    紬「まぁ頑張ってね梓ちゃん!」

    梓「はい……」

    紬「あ、ほら!饅頭が来たわよ~」

    梓「饅頭!」

    360 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 03:24:20.19
    梓「饅頭……美味しいです」

    紬「そう?よかったわぁ~」

    梓「紬さんも食べないんですか?」

    紬「口の中に物を入れて話さないの」

    梓「あ……すみません!」

    紬「私は饅頭は食べなくていいわぁ~」

    梓「そうですか。じゃあここにある饅頭は全部……」

    紬「梓ちゃんのよ~」

    梓「本当ですか!ありがとうございます!」

    362 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 03:35:58.23
    紬「これで梓ちゃんは私の助手になったわね!」

    梓「ぶっふーっ!」

    思わず饅頭を吐き出してしまった。
    今……この人は何て言った?

    梓「じょ……助手?」

    紬「梓ちゃんは今日から私の助手よ~」

    梓「へ?それは一体どう言う意味ですか?」

    紬さんは饅頭を指差した。

    梓「あ…………」

    363 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 03:44:35.90
    紬「私の助手になれば饅頭沢山食べられるわよ!」

    梓「饅頭……沢山……」

    紬「毎日毎日、饅頭が食べられるわよ?団子も食べられるわよ?」

    梓「饅頭……団子……」

    紬「もっと沢山食べたいわよね?」

    梓「饅頭……団子……沢山食べたい……」

    紬「じゃあ助手になる?」

    梓「な、なります!」

    紬「それじゃあ決定ね~」

    366 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 03:54:54.70
    食べ物につられて助手となった分けだが……何とも情けない話だ。

    梓「はぁ……」

    まぁいいだろう。
    探し物を探すだけで饅頭や団子が沢山食べれる。
    以外と悪くは無い話なのかも知れない。

    紬「あら?饅頭もう全部食べ終わったの?流石、食いしん坊の梓ちゃんね!」

    何度でも言うが私は食いしん坊では無い。
    ただ、死にそうなぐらい腹が減っているだけだ。

    367 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 03:59:54.23
    紬「それじゃあ探し物を探しに行くわよ」

    梓「えー!もうですか!」

    紬「当たり前よ。ほら、早くと立ち上がって」

    梓「はぁ……分かりました」

    紬「梓ちゃん凄い怠け者ね~」

    私は怠け者じゃない。
    飯を沢山食った後は動くのが面倒なだけだ。

    梓「あ、そう言えば何を探すんですか?」

    紬「澪ちゃんの恋人よ~」

    369 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 04:08:59.26
    梓「澪さんの恋人……?」

    澪さんに恋人なんていたのか……。
    行方不明にでもなったのだろうか?

    紬「頼まれた日から探しているんだけど中々見付からなくてね~困ってるの」

    梓「へぇ~何時、頼まれたんですか?」

    紬「去年の夏よ~」

    梓「去年の夏!?」

    370 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 04:16:06.73
    紬「そうよ~本当に見付から無いの~」

    私のむったんや憂の布を探し当てた紬さんでも見付けられない物があるみたいだ。

    でも、この人が見付られないんじゃ……私が手伝っても無駄だと思うんだけどなぁ。

    梓「澪さんの恋人ってどんな人なんですか?」

    紬「分からないわ~律と言う名前と女性って事は分かってるんだけどね~」

    あぁ……そうか。
    澪さん目が見えないから容姿を伝えようにも伝えられないのか。

    梓「ん?……女性?」

    371 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 04:26:49.47
    紬「どうかしたの?」

    梓「あれ?女性って言いました?」

    紬「言ったけどそれがどうしたの?」

    梓「澪さんの恋人を探すんですよね?何で女性なんですか?」

    紬「澪ちゃんの恋人は女性なのよ~」

    梓「は、はぁ?それって……同性愛ですか?」

    紬「そうよ~いい物よね~」

    ここは突っ込まないようにして置こう。

    梓「澪さんの恋人は女性何ですね……」

    373 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 04:36:49.63
    紬「あ、こんな所で長話してないで早く行きましょうよ」

    梓「は、はぁ……」

    去年の夏から行方不明になった澪さんの恋人。
    本当に探しても見付かるのだろうか?

    梓「まずは何処に行くんですか?」

    紬「此処から少し離れた場所に川があるでしょう?そこに行きましょ!」

    梓「何で川なんですか?」

    紬「澪ちゃんとその恋人はそこで別れたらしいの~」

    374 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 04:47:14.21
    梓「別れた?」

    紬「えぇ!別れたって言っていたわ!」

    梓「別れたのなら澪さんは律さんが何処に行くか聞いてるんじゃないんですか?」

    紬「さぁどうかしら?私も詳しい事は彼女に聞いていないのよね~律と言う女を探して欲しいとしか聞いていないの~」

    梓「名前と性別が分かった所で本当に見付かるんですかね?」

    紬「先の事は分からないわ~それじゃあ川に行きましょう?」

    梓「あ、はい!」

    375 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 05:01:57.44
    川へと着いた私達は律と言う女がいないかすぐに探した。

    だが、私達以外に人の姿は見えない。

    梓「人一人いませんね……無駄足でしたね」

    紬「いいえまだ分からないわ!座りながら人が通るのを待って、その人が律さんかどうか聞くのよ~」

    梓「は、はぁ……」

    紬「日が落ちるまで梓ちゃん聞き込み頼んだわよ!」

    梓「えぇー!私がですか?」

    紬「……饅頭」

    梓「もう……分かりましたよ」

    376 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 05:12:35.40
    梓「はぁ……でも、此処人通りますかね?」

    こんな場所に川があったなんて始めてしった。

    紬「時々、来るわよ?」

    梓「時々ですか……」

    紬「ほらほら!背筋伸ばして!そんなんじゃ探し物を見付けられないわよ!」

    梓「うぅ……あれ?」

    私の視界の隅っこで何かが動き物影に隠れた。
    イタチや猫かと思ったがどう考えても大きさが違う。

    梓「今、何かいましたよ」

    377 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 05:30:34.80
    紬「本当?猫かイタチじゃない?」

    梓「いえ……人間一人分の大きさでしたよ」

    紬「じゃあ行ってみましょう!律さんかも知れないわ!」

    梓「はい!」

    私達は物影に隠れた人を見る為に歩き出した……が。

    どうやら、そこまで行く必要は無かったようだ。
    物影に隠れた人はひょっこりと頭を出し額の汗を拭っていた。

    紬「あら?澪ちゃん?」

    378 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 05:36:39.48
    私が見た人は澪さんだった。
    それにしても……額に凄い汗が出ているなぁ。

    澪「紬さん……?」

    紬「そうよ~澪ちゃんどうしたの?凄い汗ね~」

    布を取り出して澪さんの汗を拭いながら紬さんは言った。

    澪「髪留めを無くしたみたいで……探しているんです」

    あぁ、だからこんなに汗を流していたのか。

    379 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 05:45:27.56
    紬「髪留めを無くしたの?よかったら私達も一緒に探そうか?」

    澪「はい……お願いします」

    紬「それじゃあ梓ちゃん探すわよ~」

    梓「あ、はい!分かりました」

    落とした物を見付ける……そんな簡単な事でさえも目が見えない彼女にとっては、山に落とした針を見付ける事ぐらいに難しい事なのだろう。

    私達は目を凝らしと澪さんの髪留めを見付け始め……。

    紬「澪ちゃんの髪留め見付けたわよ~」

    流石だ早い。

    381 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 05:53:14.21
    澪「ありがとうございます……見付かってよかった」

    紬「いいのよ~」

    梓「紬さん早かったですね……」

    紬「そうかしら?」

    澪「あの……そちらの幼い声の方は?」

    幼い声……。
    これでも二十歳なのにそんな事を言われるのは始めてだ。

    紬「あ、まだ紹介していなかったわね~私の助手であり売れない絵師でもある梓ちゃんよ~」

    売れない絵師は余計だ。

    382 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 06:00:53.70
    梓「こんにちは……貴女の事は紬さんから聞いてます」

    澪「そうですか……」

    紬「澪ちゃんまた律さんを待っていたの?」

    澪「はい……」

    紬「本当に何処に行ったのかしらね~全然見付けられなくてごめんね」

    澪「いえ、いいんです」

    385 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 06:11:44.77
    ん?澪さんの首筋に何か黒い痣がある。
    よく見てみると人間の手の様な痣だ。

    澪「紬さん……?」

    紬「なぁに?」

    澪「今朝……律を見たんです」

    見た?彼女は目が見えていないはずだ。

    紬「そう、よかったわね~」

    紬さんは澪さんに髪留めを渡しながら言った。
    紬さんは澪さんが言った事に疑問を抱いていない……そんな表情をしていた。

    386 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 06:22:04.07
    澪「だから……此処に行けば律とまた会えるそんな気がして……」

    梓「あぁ!私律さんを見付ける為にいい事を思い付きました!」

    紬「いい事?」

    梓「何で今まで気が付かなかったんだろ……番屋ですよ!番屋に言えばいいんじゃないですか?」

    澪「それだけは辞めて下さい!」

    澪さんは怒鳴るように言った。

    澪「番屋だけはダメなんです……それだけはダメなんです!」

    388 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 06:27:42.47
    梓「何で番屋じゃダメなんですか?」

    澪「とにかく番屋じゃダメなんです……」

    行方不明を手っ取り早く探すには番屋に言うのが1番なのに……番屋に頼れない理由が何かあるのか?

    澪「お願いします……番屋には言わないで下さい」

    梓「わ、分かりました……」

    紬「ねぇ澪ちゃん?」

    澪「……何ですか?」

    389 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 06:38:15.06
    紬「澪ちゃんさっき律さんを見たって言ったわよね?」

    澪「はい……」

    紬「どんな容姿をしてたか分かる?」

    澪「分かりません……覚えていないんです」

    紬「覚えていない?」

    澪「確かにこの目で始めて律を見ました……だけど容姿が思い出せないんです」

    紬「そう、それなら仕方がないわね~」

    目が見えないのにどうやって律さんを見る事が出来る?
    何故、大事な恋人の姿を始めて見たのに思い出せない?

    考えた結果、私の頭にある事が思い浮かんだ。

    390 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 06:47:44.49
    彼女は夢を見ていたのではないだろうか?

    私も幸せな夢を見ていて朝起きると全く思い出せない事が多々ある。

    例えば夢の中で団子をお腹いっぱいに食べるが、朝起きると夢の中で何をお腹いっぱい食べていたのか思い出せない……そんな事が多々ある。

    だけど彼女に貴女が律さんを見たのは夢なんじゃないですか?なんて言えるはずがない

    そんな事、残酷過ぎてとても私には言えない。

    391 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 06:55:23.32
    紬「あ、気になっていたんだけどその首の痣はどうしたの?」

    澪「首に痣なんかありますか?」

    紬「えぇ、まるで人の手のような痣があるわよ」

    澪「きっと律の手だ。今朝私の元に現れて律に首を絞められましたから……」

    梓「首を絞められた……?」

    澪「はい……」

    紬「澪ちゃん律さんに首を絞められるような事を何かしたの?」

    澪「してないです……」

    393 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 07:03:11.61
    紬「何もしていない?じゃあなんで大事な恋人の首を絞めるのかしら?」

    澪「きっと……律は怒っているんです」

    紬「怒っている?」

    澪「約束を破ってしまったから……」

    紬「律さんと何かを約束していたの?」

    澪「はい……これから言う事は絶対誰にも言わないで下さい」

    395 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 07:11:48.03
    ……全て聞いた。
    律さんの親の事も心中死しようとした事も全て聞いた。

    澪さんは大粒の涙を流しながら全て話してくれた。

    紬「ありがとう全部話してくれて……」

    澪「ずっと……罪悪感を感じていたんです……お金も取らず理由も聞かずに律を探してくれている紬さんにずっと罪悪感を感じていたんです……」

    紬「ううん、いいのよ……」

    澪「ずっと律を探してくれて本当に本当にありがとうございます……」

    396 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 07:21:21.40
    紬「澪ちゃん今日は疲れたでしょう?家まで送ってあげるからゆっくり休んだ方がいいわ」

    澪「はい……そうします……」

    紬「梓ちゃん行きましょ?」

    梓「はい……」

    澪さんにこんな悲しい過去があった何て……私は知らなかった。

    そして、彼女の大事な恋人を意地でも探したいと思った。

    397 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 07:31:45.41
    澪さんを送り届けた後、私達は近くの飯屋へと入った。

    梓「澪さん……可哀相ですよね」

    心中をしようとして失敗……今も生きているか分からない恋人を探す為に暗闇の中を生き続ける……そんなの悲し過ぎる。

    紬「梓ちゃん?」

    梓「はい……どうしたんですか?」

    紬「律さんが見付からない訳がわかったわ」

    398 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 07:41:06.75
    梓「……え?」

    紬「死人に口無し……いくら私でも広い川の中に沈んだ死体を探すのは難しい……」

    梓「それって……」

    律さんが死んだって事なのか?

    紬「探すのを投げ出した分けじゃないわ……これは飽くまで私の予想よ」

    梓「じゃあもしかしたら律さんは生きているのかも知れないって事ですか?」

    紬「可能性は低いわね……」

    399 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 07:53:57.19
    梓「……じゃあ澪さんの首の痣は……アレは律さんが付けたんですよね。それが本当なら律さんは生きているはずです!」

    紬「そうね。生きているといいわね……」

    紬さんは何かを悟っているような口調で私に言った。

    紬「私も律さんに生きていて欲しいわ……澪ちゃんの為にもね」

    400 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 08:02:35.16
    紬「そろそろ行きましょうか」

    梓「行くって何処にですか?」

    紬「澪ちゃんの家よ。私の予想が当たっていれば今夜律さんの行方が分かるわ」

    梓「ほ、本当ですか!?」

    紬「多分……律さんの姿は生か死か今日、全てが分かる」


    第九話
    おわり

    401 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 08:05:09.37
    30休憩を取ります

    403 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 08:39:30.33
    【第十話:一蓮拓生2】

    澪「家に泊めて欲しい?」

    紬「えぇ!泊めて欲しいの~」

    今日で律さんの行方が分かる何て本当だろうか?
    それに何で澪さんの家に泊まる必要があるのだろう?

    澪「いいですけど……何も出ませんよ?」

    紬「大丈夫よ~あ、澪さんの為に団子持って来たのよ~」

    本当、何を考えているか分からない人だ。

    404 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 08:45:28.31
    澪「団子……ですか」

    紬「えぇ!純団子って店の団子屋なの!結構美味しいのよ~」

    澪「……立ち話も何ですしとりあえず入って下さい。」

    紬「わかったわ~あ、梓ちゃんは団子食べちゃダメよ!」

    梓「なっ……!」

    紬「これ全部、澪ちゃんのだから~」

    梓「わ、分かりましたよ……」

    406 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 08:53:32.35
    澪さんの部屋の中は荒れていた。
    浴衣の帯が床に投げ出され部屋の隅には蜘蛛が巣を作っている。

    澪「汚いでしょう?」

    梓「そ、そんな事ありませんよ!個性的なお部屋ですね!」

    澪「掃除をしたいんですが……出来なくて困っているんです……今まで律が全部してくれていたから」

    紬「いい人ね律さんは……あ、団子を食べましょ?」

    澪「……はい」

    408 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 09:04:49.94
    私は団子を食べる澪さんをずっと眺めていた。

    団子が食べたいから眺めているんじゃない。
    団子を食べる彼女の顔……とても悲しそうだ。

    澪「美味しいです……」

    紬「本当?気に入って貰えてありがたいわぁ~」

    澪「律もこの団子好きでした。純団子と言うお店……神社の近くですよね?」

    紬「そうよ~」

    澪「あの神社には犬をお姉ちゃんと呼んでいる人がいるらしいですよ」

    410 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 09:13:08.84
    梓「犬をお姉ちゃんと呼んでいる人……」

    憂の事だ……。

    澪「私はあの人達にも世話になった事があります……何時かお礼を言わないと」

    梓「私も憂には世話になりました」

    澪「憂……?」

    梓「あ、犬をお姉ちゃんと呼んでいる人の名です」

    澪「そうですか……憂と言うんですね。悲しい名だ」

    411 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 09:20:10.70
    梓「でも、人の事を思いやれる良い人でした」

    澪「私も彼女には感謝しています……私を拾ってくれたあの人にもあの犬にも……紬さんにも貴女にも礼を言わないといけない人が沢山いる」

    紬「優しいわね澪ちゃん」

    澪「いえ……私は優しくなんか無いですよ。団子もういりませんお腹いっぱいになりました」

    紬「そう……残りは梓ちゃんにあげていい?」

    澪「……どうぞ」

    413 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 09:34:12.89
    梓「むふぅ~美味しい」

    澪「私そろそろ寝ますね」

    梓「あ、はい!」

    澪「おやすみなさい……」

    紬「おやすみなさい澪ちゃん。いい夢見られるといいわね」

    澪「……はい」

    414 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 09:42:40.94
    梓「じゃあ私達も寝ましょうか!」

    紬「あ、言うの忘れてたわ今日は徹夜よ」

    梓「て、徹夜!?」

    紬「まぁ訳を話したいから外に行きましょう?」

    梓「わ、分かりました……」

    澪さんを起こさないように私達はそっと外に出た。

    梓「それで何で徹夜をするんですか?」

    415 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 09:55:15.40
    紬「律さんが来るからよ~だから徹夜をするの」

    梓「律さんが来る?」

    紬「澪さんが言ってたでしょう?律さんが来たってだから今日も来ると思うの」

    梓「まさか……澪さんには悪いんですけど……夢じゃないんですか?」

    律さんが首を絞める夢を澪さんは見た。
    その夢を澪さんは現実と勘違いしてしまって夢だと疑ってもいない。
    そんな私の考えを紬さんは真っ向から否定した。

    紬「夢なんかじゃないわ」

    417 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 10:03:56.34
    梓「夢じゃ……ない?」

    紬「えぇ澪さんが話した事は夢じゃない……彼女は律さんの姿を見たし律さんは彼女の首を締めた。これは紛れも無い現実よ」

    梓「あはは……まさか」

    紬「だから徹夜して待っていれば律さんは来ると思うの」

    私には律さんが来るとは到底思え無かった。

    今まで姿を現らわさなかった律さんが何故今になって姿を現す?

    考えれば考える程、疑問が疑問を呼ぶ。

    419 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 10:22:03.40
    紬「それじゃあそろそろ戻りましょう」

    梓「え?……は、はい!」

    再び澪さんの家へと戻った私達はすっかり眠っている澪さんを見た。

    紬「幸せそうな表情ね」

    きっと律さんの夢を見ているのだろう。
    彼女は笑みを浮かべながら寝ていた。

    彼女の笑顔を始めて見た。
    とても美しい。

    紬「じゃあそろそろやりましょうか!」

    梓「何をですか?」

    紬「決まってるじゃない掃除よ」

    421 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 10:29:04.40
    澪さんは掃除をしたくても出来ないと言っていた。

    朝になるまでの暇潰しにもなるし、何より澪さんの為にもなる。

    梓「はい!掃除やりましょう!」

    紬「じゃあ私は寝るから梓ちゃん頼んだわよ~」

    梓「えぇぇー!」

    紬「うふふ。冗談よ冗談!」

    422 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 10:38:30.40
    一通り掃除をし終わり私達は休憩を取る事にした。

    梓「結構、綺麗になりましたね」

    紬「えぇ!澪ちゃん喜ぶと思うわ~」

    梓「そうですね!」

    ギシッギシッ。
    何かが軋む音が聞こえた。

    澪さんが寝返りを打っているのか……。
    最初、私はそう思っていたが違うようだ。

    急激な冷気が部屋を包みまた何かが軋む音が聞こえる。

    425 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 10:45:26.11
    ギシッギシッギシッ。

    梓「な、何ですかこの音……」

    紬「しーっ黙って」

    ギシッギシッギシッ。

    私は見た。

    澪「ぐうっ……!」

    私達以外、誰もいないこの部屋に急に現れ澪さんの首を絞める女の姿を見た。

    澪「く、苦じい……っ!」

    律「澪……澪ぉっ!」

    427 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 10:57:49.80
    澪さんの名前を呼んでいる女は透けていた。

    彼女越しに壁が見える。
    幽霊……彼女はもしかして幽霊なのか?

    この寒いぐらいの部屋の冷気に透けた体……。

    律さんの行方は生か死か……今日、全てが分かる。

    紬「貴女……律さんよね?」

    彼女は律さんなのか?

    429 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 11:08:39.59
    律「……お前らは誰だ?」

    幽霊は澪さんの首を絞めるのを止め私達を見た。

    紬「私は紬この人は梓……澪ちゃんの友達よ」

    幽霊とはもっと怖い物だと思っていた。

    私は彼女に恐怖の感情は抱いていなかった。
    むしろ、彼女を見て悲しいと思った。

    だって彼女は涙を流している。
    幽霊も涙を流すんだね……。

    430 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 11:19:17.86
    律「そうか……澪の友人か……私は律だ」

    紬「そう……やっぱり律さんなのね」

    律「あぁ……」

    紬「ずっと貴女を探していたの澪ちゃんも私も……ずっと探していた」

    律「そうか……」

    律さんは澪さんを見た。

    律「綺麗な寝顔だ……狂うぐらいに愛おしい」

    夜明けを伝える鳥の声が聞こえた後……律さんは消えた。

    431 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 11:28:37.55
    紬「やっぱり律さんは死んでいた……みたいね」

    梓「……はい」

    生きている者は幽霊にはならない。

    紬「この事を澪ちゃんに伝えないと……あまり言いたくは無いのだけど……」

    戸の隙間から太陽の日差しが差し込んだ。

    それから、数時間後……私達は澪さんに律さんが死んでいる事を伝えた。

    彼女の泣き顔は直視出来ない程、悲しい表情だった。

    434 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 11:37:42.84
    紬「未練が残っていたのよ」

    団子の串を食わえながら紬さんは言った。

    紬「心中死するも自分だけが死に……愛する者はまだ生きている。だから彼女は幽霊となり澪ちゃんの元へ現れた」

    この世に大きな未練を残す者は幽霊となると言われている。

    梓「でも……何で澪さんの首を絞めてたんですかね?」

    紬「……幽霊は自分が居ると言う事に気付いて貰えないと寂しくなるらしいわよ」

    435 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 11:43:20.17
    梓「寂しくなる?」

    紬「そうだから印を残すの」

    梓「あぁ……澪さんの首の痣」

    律さんは澪さんに伝えていたんだ。
    私は側にいると……。

    梓「また律さん……澪さんの元に現れるんじゃないですかね?」

    紬「ううん……彼女はもう気付いていると思うわ……律さんが何時でも側に居ると言う事を」

    梓「だから……もう現れない」

    紬「えぇ、現れない」

    436 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 11:49:48.58
    梓「何で紬さんは律さんが幽霊として出るって分かったんですか?」

    紬「川で澪ちゃんの話しを聞いた時……思い出した事があるの」

    梓「思い出した事?」

    紬「これよ」

    紬さんは私に瓦版をそって手渡す。

    川で白骨死体が見付かる。
    瓦版にはそう書いていた。

    紬「もしかしてこの白骨死体は律さんじゃないかな?と思ったの」

    440 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 12:16:22.25
    紬「それから……澪ちゃんの首の痣を見てもしかしたら律さんが幽霊として、側にいると伝える為に痣を付けたんじゃないかなって思ったの」

    梓「よくそんな事を考えましたね」

    紬「本当よね。自分でも当たっているか不安だったわ……」

    でも、当たっていた。

    梓「紬さん……やっぱり貴女は凄いです。普通の人ならこんな事思いもしませんもん」

    紬「あら?皮肉?」

    梓「とんでもない。褒めてるんですよ」

    441 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 12:28:43.44
    紬「じゃあ、そろそろ行きましょう」

    梓「そう……ですね」

    紬「後で番屋に行きましょう。そこに律さん骨があるから団子を供えましょう」

    梓「はい……あ、澪さんも誘いませんか?」

    紬「そうね。このまま無縁仏として弔われるのはあまりにも可哀相だものね」

    心中死をした者は弔う事は許されていない。
    だが、私達にはそんな事気にもならないし私達以外にその事を知るのは誰もいない。

    律さんが愛する者を思いながら死んだ。
    それでいいじゃないか。

    442 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 12:36:38.00
    ―――私は何時ものように三味線を弾きに行こうと思った時、律の声を聞いた。

    こっちだよこっちだよ。
    律は私にそう言っていた。

    杖を手にし外へ出て彼女の声を追い掛けた。

    こっちだよこっちだよ。

    澪「り、律……待って!」

    声が遠くなって行く。
    私は必死に追い掛けた。

    律は死んだと聞いた……私もその現実を受け止めた。

    なのに、聞こえるんだ律の声が聞こえるんだ。

    443 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 12:42:31.03
    必死に追い掛けた。
    もっと近くで律の声を聞きたい。

    澪「待って!律待って!」

    何かにぶつかりながらも必死で彼女の声を追う。

    「おい!待てっ!」

    こっちだよこっちだよ。

    澪「律!待って!」

    446 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 12:53:31.40
    幻影を追い続ける足はやがて宙を切り水の中へと沈む。

    狂うぐらいに愛おしい澪の顔を私は見た。

    ずっと見たかった律の顔を私は見た。

    「身投げだァー!女が一人川の中へ飛び込んだぞー!」

    薄れ行く思考の中、 私の手に律の手が重なった。

    律「会いたかったよ澪」

    彼女の笑顔を見た後、眩しいぐらいの光が私を包んだ―――

    死んだ後も極楽浄土で同じ蓮華の上で生まれよう。

    第十話
    おわり

    448 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 12:58:56.64
    律澪偏終わりです
    30分の休憩をとった後、最終話を書きます

    458 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 13:25:15.69
    【最終話:具会一処】

    紬「澪ちゃんが死んだ……」

    今朝の瓦版を見て私は衝撃を受けた。

    澪ちゃんが死んじゃうなんてそんな……。

    紬「澪ちゃん……うぅっ……ずずっ澪ちゃん」

    梓「紬さん来ました……どうしたんですかぁ!?」

    459 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 13:28:11.57
    紬「あ、梓ちゃ……梓ちゃん!」

    梓「一体何があったんですか?団子を盗まれたんですか?」

    紬「違う……違うの!澪ちゃんが死んでしまったの……ぐすっ」

    梓「……え?」

    紬「澪ちゃんが死んでしまったのよぉ……うぅっ」

    梓「と、取り敢えず落ち着きましょう……落ち着きましょう……」

    460 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 13:32:46.20
    紬「何で……何で死んでしまったの……」

    梓「わ、分かりません……」

    紬「後追い自殺……してしまったの?……私のせいで後追い自殺してしまったの?」

    梓「紬さんのせいじゃ……ないですよ……」

    紬「私のせいだわ……澪ちゃんに律さんが死んでいた事を知らせたから、それで衝撃を受けて……」

    梓「紬さん泣かないで下さいよ……」

    462 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 13:35:58.13
    紬「……ひっぐ」

    梓「ほら、これで涙を拭いて下さい……」

    紬「ありがとう……梓ちゃんありがとう……」

    梓「……団子食べに行きましょう。私、紬さんが言った事に気を付けて絵を書いたら結構いい値で売れたんです。今日は私が団子を奢りますよ!」

    463 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 13:44:06.62
    紬「……本当?」

    梓「はい!団子屋に行って……団子を沢山買いましょう!それから憂と唯……澪さんと律さんにお供えしましょう!」

    紬「梓ちゃん……いい人ね」

    梓「どう致しまして!今日は私の奢りです!早く行きましょう!」

    紬「うん……分かったわ……」

    464 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 13:52:26.64
    ・・・・・・・

    梓「団子あるだけ下さい!」

    純「な、何?」

    梓「あるだけ下さい!」

    紬「ううっ……ぐずっ」

    純「何で紬さんが泣いているの?」

    梓「いいから団子をあるだけ下さい!今日は私の奢りです!」

    純「へぇ~明日は大雨が降るね~分かった持って来るから待ってて!」

    梓「団子が来ますよ紬さん!紬さんが大好きな団子ですよ!ほら、泣き止んで下さい」

    紬「梓ちゃん……何て優しいの……ううっ……ひっく」

    466 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 13:59:13.61
    純「はいお待たせ!」

    梓「ありがとうございます!はい、お金です!」

    純「うわっ本当に奢るんだ……」

    梓「じゃあお供えに行きますよ!紬さん」

    紬「うぅっ……分かったわ……」

    梓「まずは憂と唯にお供えしましょう!」

    467 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:04:50.77
    ・・・・・・

    和「あら?久しぶりね」

    梓「あ、久しぶりです」

    紬「お久しぶりです……」

    和「元気無いわね……何かあったの?」

    梓「はい……あ、憂と唯にお供えをしたいんですが……」

    和「お参りにわざわざ来てくれたのね。ありがとう……」

    梓「い、いえ……団子を持って来ました」

    和「憂の遺体はまだ見付かっていないから唯のお墓に団子を供えてくれると嬉しいわ」

    469 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:12:09.34
    梓「唯……元気にしてた?私は元気にしていたよ。憂早く見付かるといいね……」

    紬「梓ちゃん……」

    梓「あ、唯が大好きな団子を持って来たんだ!そっちで食べてね!一人で食べちゃダメだよ?ちゃんと二人で分けて食べてね」

    紬「梓ちゃん……売れない絵師なんて言ってごめんね」

    梓「いえ、いいんですよ。それじゃあ次は律さんと澪さんの所へ行きましょう」

    471 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:26:37.99
    ・・・・・・・

    梓「澪さんは此処で身を投げたんですか……」

    紬「瓦版にそう書いてあったわ……ここの川は律さんの骨が見付かった場所でもあるの」

    梓「そうですか……残りの団子全部川に流しましょっか!」

    紬「えぇ……そうね」

    梓「それじゃあ紬さんお願いします」

    紬「分かったわ……」

    472 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:31:21.91
    紬「……澪ちゃん探し物中々を見付ける事が出来なくてごめんね……貴女の三味線の音色とても素晴らしかったわ……死後の世界でも来世でも律さんと幸せになってね」

    梓「せーので団子を川に流しましょう」

    紬「そうね……」

    梓「せーのっ!」

    紬「……それっ!」

    473 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:40:01.28
    ・・・・・・・

    紬「……梓ちゃん何か色々とありがとうね」

    梓「いえ、いいんです。あ、紬さん?」

    紬「どうしたの?」

    梓「紬さんの為に絵を書いて来たんです」

    紬「本当?」

    梓「はい!花の絵なんですけど……どうぞ見て下さい」

    紬「……さねかずらの絵ね」

    475 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:48:55.02
    梓「知ってるんですか?あまり綺麗な花では無いですよね」

    紬「綺麗な花では無いわね……でも、好きな花だわ」

    梓「私も好きです。さねかずら……花言葉知ってます?」

    紬「えぇ……確か再開だったわよね」

    梓「はい……」

    紬「梓ちゃん具会一処と言う四字熟語を知っている?」

    梓「え?知らないです」

    478 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 14:52:57.57
    >>475訂正
    梓「知ってるんですか?あまり綺麗な花では無いですよね」

    紬「綺麗な花では無いわね……でも、好きな花だわ」

    梓「私も好きです。さねかずら……花言葉知ってます?」

    紬「えぇ……確か再会だったわよね」

    梓「はい……」

    紬「梓ちゃん具会一処と言う四字熟語を知っている?」

    梓「え?知らないです」

    481 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/10(日) 15:02:48.79
    紬「先立つ人も何時か仏の元で逢うだろう……そう言う意味なの」

    梓「さねかずらの花言葉と少し似てますね」

    紬「そうね。また、来世で唯や憂ちゃん、澪ちゃんや律さんと会えるかしら?」

    梓「きっと再会出来ますよ」

    紬「来世で梓ちゃんとも再会したいわ」

    梓「それはちょっと……」

    紬「え!?嫌なの?」

    梓「冗談ですよ。紬さんよく冗談を言って私を困らせていましたよね?」

    紬「そうかしら?」

    梓「そうですよ!これからも冗談を言ってずっと私を困らせて下さいね」

    紬「うふふ嫌だわ」

    梓「えーっ!」

    紬「冗談よ梓ちゃん♪」


    紬「江戸時代の私達」
    END

    コメントを書き込む コメントを読む(3) [けいおん!SS] ブログランキングへ 人気ブログランキングへ このSSをはてなブックマークに追加


関連?商品

過去の名作たち

律「唯にゃん」
唯「純ちゃんがいけないんだからね!」
唯「恐怖のお婆ちゃん」
  1. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2010/12/29(水) 01:25:55 URL [ 編集 ]
    なかなかグロいけどいい話だな。つかこれ、当て屋の椿パロ?だよな?
  2. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/16(水) 10:20:30 URL [ 編集 ]
    当て屋の紬ってか

    律澪は心中も悪くないな
  3. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2011/03/17(木) 02:08:53 URL [ 編集 ]
    おもしろかった

コメントの投稿(コメント本文以外は省略可能)




管理者にだけ表示を許可する

テンプレート: 2ちゃんねるスタイル / 素材サイト: 無料テンプレート素材.com / インスパイヤ元:2ch.net /
これより下はないよ・・・
消費者金融比較
キャッシングローン
消費者金融 利息
ブログパーツ

ギャルと女子高生