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過去の名作たち

  1. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2010/10/17(日) 20:24:39 URL [ 編集 ]
    面白かった
  2. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2010/10/17(日) 20:28:40 URL [ 編集 ]
    どういう意味?無能な俺に解釈をば…
  3. 名前: 2010/10/17(日) 20:48:35 URL [ 編集 ]
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  4. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2010/10/18(月) 00:51:32 URL [ 編集 ]
    ダメだ、途中から頭こんがらがった
  5. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2010/10/18(月) 00:55:24 URL [ 編集 ]
    隣にいるのではという不安が解消されるってことは最後の着信番号は唯の自宅からってことだと
  6. 名前: けいおん!中毒 ◆- ◆- 2010/10/18(月) 01:31:35 URL [ 編集 ]
    大学の友人=唯の器・・・ってそれじゃ話おかしくなるかな
  7. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2010/10/18(月) 02:31:58 URL [ 編集 ]
    面白かったが…
    赤目の女とか殺人犯が警察のふりして家に来るとかの都市伝説は
    現実的な恐怖、人対人の恐怖を描いた話であって
    日常的に入れ替わっているというのもそういう類型だから
    超現実は無しでまとめればもっとよかったと思う

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律「幸せをありがとう」

  1. 名前: 管理人 2010/10/17(日) 16:35:46
    2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 00:09:23.66
    わたしが、桜高を卒業してすでに2年が経とうとしていた。
    わたしたち軽音部のメンバーは別々の大学に進み、たまにメールをする程度の関係に落ち着いていた。
    メールの内容は他愛もない事で、サークル活動や授業の事、近況報告が主な内容だった。
    今日、高校時代の友人である秋山澪から送られてきたメールもそんな他愛もない内容だった。

    (ふむふむ、澪のやつも何だかんだ言って、友達も沢山できたみたいじゃん)

    サークルでバンドを組んでいる事、バイトを始めた事等、メールを通して生活が充実しているという事が伝わってくる。
    メールの最後には、「やっぱり、ムギや律達がいないと少し寂しいな……」とあり、そこらへんは変わってないんだな、と呆れる反面少し笑顔がこぼれる。


    4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 00:11:32.99
    当のわたしも、もともととがっている訳でもなく、明るいといわれる性格のおかげか友達はたくさんでき、充実した大学生活を送っている。
    今も、サークルの友達や後輩と一緒に7泊8日の合宿の真っ最中と言う状況である。

    (んー、何て返すかな。少しからかってやるのもいいな……)

    そう思って返信を打ち込もうとしたとき、

    「…ちゃん?りっちゃん?次、りっちゃんの番だよ?」

    急に声をかけられ、思わず携帯を閉じてしまう。

    「あれれ?どうして閉じちゃうのかなー?もしかして彼氏ですかにゃ?」

    ニヒヒ、と笑いながら、茶化すような口調で話しかけてくる

    「ばっか。わたしに彼氏なんてできるわけないだろ?身を焦がすような恋がしたいですな、全く」

    いつも通り、ふざけた態度で話題を水に流す。
    質問してきた友人も「ですなー」なんて言って笑っている。

    5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 00:13:41.71
    「……と、これが私の嘘話でしたー。……駄目?」

    私は一応皆に聞いてみる。
    嘘話というのは、このサークルの伝統行事のようなもので、嘘の話をする、というエイプリルフールの延長のような馬鹿げた企画である。
    しかし、人間は咄嗟に嘘をつけと言われても、そんなに上手に嘘をつくことなんてできないものだ。
    結局、話す事はどこかに本当の事が入ってくるものである。
    どこが嘘でどこが本当か、それを本人に聞いたり想像したりするのがこの企画の楽しみなのだ。
    以前この企画があった時は、ムギが力持ちである、という事を思いっきり誇張して話した気がする。
    ただでさえ重い机に私が腰かけていたら、汗一つかかずにわたしごとムギが運んでいった話とか、そういう話をした記憶がある。


    6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 00:17:49.55
    「えー?もっと真面目に考えてよー」

    普段からあほな事をしたり、人に突っ込んで笑いを取っている分、要求されるハードルも高くなっているのだろう。
    友達から、はては話に参加している後輩からも非難の声が上がる。

    (まいったなー……こういう話を考えたりなんかで笑いをとるのは苦手なんだよな……)

    「ほらほら、りっちゃん。何か面白い話期待してるよ?」

    後輩もワクワクした眼でわたしを見ている。

    (はぁ……仕方ないか……)

    わたしは観念して、ポツリポツリと語り始める。

    「わかったよ。これから一つ作り話をする。でも、作り話だから質問なんかはやめてくれ。」

    そこまで言うと当然、おもしろみの半分を奪われたも同然だ。友達や後輩から非難の声が上がる

    「まーまーまー、このわたしが皆を楽しませようと考えた話だぜ?退屈はさせないよ。約束する。」

    そこまで言うと、渋々と言った感じで静かになる。

    「……よし。まずは何から話を始めようか。……あれは今日みたいに残暑が厳しい秋の話だったかな……」


    7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 00:19:56.41
    あれは、残暑が厳しく連日30度を超えるような暑さが続いていた、秋の出来事だった。
    見慣れた風景、歩き慣れた道。
    長く滑かなアスファルトの坂を下ると曲がり道があり、そこを右に曲がると5分程で学校につく。
    わたしはその日、少々寝坊した事もあり、小走り気味に学校へと向かっていた。
    時計の針は、朝のHRまであと10分のところをさしていた。

    (よし、ここまで走ればもう大丈夫だな……)

    そう思ったわたしは曲がり道を勢いよく右に曲がったところで走るのをやめ、テクテクと歩きだした。
    額には走ったせいか、うっすらと汗が浮かんでいた。
    それをハンカチで拭いていると、後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。


    8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 00:22:07.58
    「おおーい、りっちゃーん!待って待ってー!」

    タッタッタと小気味よく足音が2つ近づいてくる。

    「何だ、唯隊員。寝坊するとは情けないぞ」

    「あはははは、今日は憂が寝坊しちゃってさあ……」

    「えー?寝坊したのはお姉ちゃんだよー」

    「あ、そうだったそうだった。お姉ちゃんが寝坊したんだった。ごめんね憂-?」

    「もう、気を付けてね?」

    「はは、唯らしいなー」

    「「「あはははははははは」」」

    ……この時、いやもっと前から狂い出していたのかもしれない。
    でも、その時はそれがいつもの通学路の風景で、卒業までずっと続くものだと疑ってなかったんだ。


    9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 00:24:17.22
    私達、いや私にとっての学校での一日っていうのはとても早く過ぎて、とっても楽しみだった部活の時間になったんだ。

    ……この時はあんな事が起こるなんて思いもしなかったよ。

    いつもみたいに部室に集まって、友達が用意してくれたお菓子を食べて一通りだらだらし終えて、さあ練習するぞって時だったかな。

    いきなり、部室に顧問の先生が飛び込んできたんだ。

    いつもなら一緒にだべったりするんだけど、その日は何か血相変えてというか、とにかく様子がおかしくて、私達も固まっちゃったんだ。

    そしたらその先生が、ああ、友達の名前は平沢唯っていうんだけどその子を連れて行っちゃったんだよ。

    何分くらい経ったかな、その唯が部室に帰って来てさ。

    私達は「何の話だったんだ?」って聞いたんだけど、唯は無言で帰る準備してるんだ。

    それで、その時の唯の顔なんだけどさ、真っ青なんだよ、ほんとに。

    顔色が悪いとかそういうレベルじゃなくて、救急車呼ぼうかと思うほど真っ青だったんだ。

    それで唯が荷物持って帰る前に……

    ああ、この辺はあんまり思い出したくないわ。結果だけで勘弁してくれ。

    唯の妹……憂ちゃんって言うんだけどさ、買い物帰りにトラックにひかれてさ……即死だったんだと


    10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 00:26:26.26
    「……ちょっとりっちゃん、いくら作り話だからって友達使ってそんな話するのは……」

    話しの途中で、友達から横槍が入る。

    「……じゃあ、やめるか。皆はどうするよ?」」

    一応、皆にも確認をとってみる。

    「私は、聞きたいです。田井中先輩の話、何か惹きこまれるっていうか……」

    「……私も。毒を喰わば皿までっていうしね」

    「ちょ、ちょっと。あー、もう。幽霊が出てくるとかそういうオチはやめなさいよ!?」

    横槍を入れた友達も結局聞くらしい。

    茶化してきたり、横槍を入れたり、忙しいやつだ。

    私は、大学でできた親友のころころ変わる表情に、少し猫を重ねてみてしまい、ニヤッとしてしまう。

    「……気になるなら、話を始めたのは私だし、最後まで話すよ。えーっとどこまで話したっけ……」

    「友達の妹さんが事故にあったところまでです」

    「あ、そうだったそうだった。じゃ、その子のお葬式から話を始めるか」

    11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 00:28:35.49
    それで後日、その事実は私達にも伝えられてさ。

    私達も憂ちゃんにはお世話になってたし、お葬式には出席したんだよ。

    憂ちゃんと唯は普段から滅茶苦茶仲の良い姉妹でさ。

    私達は唯に何て声をかけたらいいかすっげー悩んだんだよ。

    でも、この時の唯は泣いてなかったんだ。泣かずに妹さんの棺をじーっと見てるんだよ。何か考えるみたいにさ。


    12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 00:30:44.88
    わたし達が

    「唯……我慢しないで、今日くらい泣いてもいいんだぞ?」

    って言ったんだけど、唯は

    「私が泣いてると憂が心配するから」

    って言ってさ。ああ、唯はやっぱり立派なお姉ちゃんだなってわたしはその時思ったんだ。

    それでお葬式の話は終わり。

    その後ばたばたしてたみたいで、結局唯が学校に来たのはそれから3日くらいしてからだったかな。

    唯のお父さんは海外で働いてるみたいで、お母さんはそのお父さんの世話をするために一緒に海外で住んでるんだって。

    それで、唯の両親は唯も海外に連れて行って一緒に住もうとしたみたいだけど、唯が一人でも生活できるって事を何とか証明したみたいで、結局こっちに残る事になったんだ。


    14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 00:33:07.57
    その後はほんとに、あんな事故があったっていうのが嘘みたいに何事もなく時間が過ぎて行ったんだ。

    それで、文化祭が近くなってきた時だったかな……

    私達は、毎年文化祭でライブみたいな感じで演奏してたんだけどさ、練習で結構家に帰るのとかも遅くなったりしてたんだ。

    その時さ、他の部員の皆は気づいてないみたいだったけど、私は毎日同じ時間に唯がどこかに電話をかけてる事に気付いたんだ。

    別にプライベートな事だし、本人に聞こうとも思わなかった。

    でも、何となく私は気になったんだ。

    家にかけるにしても、唯の家には唯一人しかいないはずだし、もしかして彼氏にでもかけてるんじゃないかってね。


    15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 00:35:21.90
    で、次の日唯が電話をかけた時に、傍でこっそり聞き耳をたててたんだよ。

    何かおもしろい話ならからかってやろうって。

    それで、電話が終わるまでずーーーーっと聞いてたんだけど、唯の

    「うん、うん、うん。じゃーねー」

    っていう声しか聞こえなくてさ。

    結構近くにいたのに相手の声とか全然聞こえなくて、その後何日か聞こうとしたんだけど駄目で、いよいよ誰と電話してるのか気になってさ。

    私は唯に聞いちゃったんだよ。


    16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 00:37:30.54
    「毎日誰と電話してるんだ?」

    って。
    そしたら唯は普通に

    「え?家にかけてるんだよ?最近遅くなってるしさぁ。連絡しないと憂が心配するし」

    って答えたんだ。

    わたしは、元気に振舞ってるけどまだ立ち直れてないんだなって、わたし達がしっかり支えてあげないと駄目だなって思ったんだ

    で、19時くらいかな……その日の練習も終わって皆は家に帰ったんだけど、私は先生に用事があって20時くらいまで学校に残ってたんだ

    用事も一通り済んで、街灯がついた道を一人で歩いて帰ってたんだけど、その途中で私はある事に気が付いたんだ……


    17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 00:39:39.51
    (あ……すごいお腹減った。)

    まぁ、その日はお昼も少なめだったし、いつもより遅くなったしでかなりお腹が減ってたんだ

    これは家までもたないな、そう思った私はちょっと遠回りして近くのスーパーに寄って、何か軽食でも買って食べながら帰ろうと思って

    目的地をスーパーに変更してまた歩き出したんだ


    18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 00:41:51.35
    スーパーに着いたのは、20時10分くらいだったかな

    その日の売れ残りの惣菜とかがちょうど半額になってて、人もそこそこ居てさ

    わたしは3割引になってるプリンをカゴに入れてレジに向かおうとしたんだ

    そしたら……さ、一瞬だけど視界の端に、確かに見た事ある人が映ったんだよ

    (あれ?何か見た事ある人がいたような……誰だろ)

    っていう好奇心と、知人なら挨拶でもするかっていう軽い気持ちで私はその人を探すことにしたんだ


    19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 00:44:16.86
    まぁ、そんなに大きいスーパーでも無かったし、結果としてその人はアイス売り場で見つけたんだけど……

    あの時ほど、驚いた事は無いぜ、まじで

    何せ、事故で死んだはずの憂ちゃんにそっくりな人が買い物に来てたんだ

    元気そうにポニーテールをピョンコピョンコ揺らしてアイスを物色してるんだ

    結局その日は、人違いだろう。人違いじゃなかったらそれこそ怖い。

    私はそう思って声をかけたりせずにプリン食べながら家に帰ってドラムの練習して寝たんだ。


    20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 00:46:25.04
    んで、次の日の部活で、

    「いやーまじびびったぜ。昨日むちゃくちゃ憂ちゃんに似た人見つけたんだ。まじで」

    みたいな話を唯がいない時にしてたんだけど、結構しんみりした雰囲気になってさ

    後輩の梓が

    「憂に会いたいですね……」

    って、泣き出しちゃったんだ……

    憂ちゃんが事故にあってから、梓も立ち直ってなかったんだなって事に気付けなかったわたしは本当に軽率で部長失格だったよ……

    そこに唯が遅れて部活に来てさ、泣いてる梓を見つけて言ったんだ

    「あずにゃん?どうしたの?何かあったの?」

    梓は、何でもないです。ゴミが目に入ってしまって……とか、誤魔化してたんだけど

    唯はそういうのに鋭いやつでさ

    「あずにゃん、我慢しないで、大丈夫だから」

    って言ったかと思うと梓をギュッて抱き締めたんだ

    梓もそれでこらえきれなくなったのか、憂に会いたいとか寂しいとかひとしきり泣いて、唯はずっと頭を撫でてて……
    私達も我慢できなくて、ひとしきり唯以外の皆が泣いてさ……
    それでその日の部活は終わったんだ


    21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 00:48:34.39
    私は、これで梓や他の皆も、もちろん私も気持ちの整理がついて、明日から憂ちゃんはいないけど本当の意味で新しい学校生活が始まるんだ

    ……そう思ってた

    ……そう思ってたんだよ……

    22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 00:50:42.53
    次の日、唯は学校に来なかった。

    HRの時間になっても来なくてさ、私は、唯は遅刻したのか、そう思ってた

    他の皆も多分そう思ってたと思う

    そしたらさ、下の階から、きゃー、だとか、いやーだとか、叫び声が聞こえて来てさ

    私はなんだなんだと思って、野次馬根性丸出しで見に行ってみたんだ


    23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 00:53:23.96
    ……いたんだよ、憂ちゃんが。ニコニコ笑いながら

    「あ、律さん。おはようございますー」

    何て言って。

    信じられなかった。信じたくなかった。

    でも、確かに憂ちゃんがそこにいたんだよ。

    そしたら梓が来てさ、震えながら憂ちゃんに質問したんだ

    「本当に憂……なの?」

    って

    そしたら憂ちゃんは

    「そうだよ?皆変だけど、何かあったの?」

    って感じで……

    そのあと梓や、後輩で憂ちゃんと仲の良かった純ちゃん達が色々質問してるんだけど、全部答えれてるんだよ

    私達が修学旅行に行ってる間に食べたドーナツの事とか、何をしたかとか全部……

    梓達もそれが全部あってるらしくて、段々質問の数も減っていったんだ

    それで、私はふと気になった事を聞いたんだ


    24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 00:55:37.40
    「憂ちゃん……唯はどこにいるんだ?」

    って。そしたら憂ちゃんは

    「お姉ちゃんですか?お姉ちゃんは今は家にいますよ?風邪をひいてるから休んでるんです」

    私が感じていた違和感は、この言葉で確信に変わった。

    結局その場は先生が来て話はまた後日って事で憂ちゃんが帰らされて、とりあえずその場は治まったんだ

    それで、その日の放課後、私は軽音部のメンバーを集めて、話をしたんだ

    25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 00:57:47.36
    「ムギ、澪、梓、今日憂ちゃんが学校に来ただろ?」

    「あ、ああ。らしいな。で、でも憂ちゃんは……」

    怖がりの澪はビクビクしている。いつもならからかう所だけど、その時はそんな雰囲気じゃなかった

    「……実は、憂は生きてた、とかでしょうか?死んだのは別人だった……とか」

    「唯ちゃんの想いが憂ちゃんを蘇えらせたとか……」

    梓とムギがそれぞれ思った事を口にする。

    「……たぶん、両方とも無い、と私は思う。」

    私は、自分の意見を部員に告げた

    「じゃ!じゃあ!あれは憂ちゃんの幽霊なのか……?」

    「澪、落ち着け。これは、私の意見だけど……」

    わたしは深呼吸をして、ゆっくりと口を開いた。

    「多分、あの憂ちゃんは、幽霊でもなければ、ましてや憂ちゃんでも無い」

    「……まさか、りっちゃん……」

    鋭いムギの事だ、何かに勘付いたんだろう


    26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 00:59:57.11
    「ああ、多分な。これから先は辛い話になるだろうけど、話してもいいか?聞きたくないなら帰った方がいいぞ?」

    私はそう言って3人の顔を順番に見た
    ムギも梓も怖がってた澪も、誰も帰ろうとはしなかった

    「……そか。じゃあ、話すぞ?」

    3人は同時にこくりと頷いた

    いつもはティータイムや演奏で賑やかな部室はシーンと静まり返っていて、4人の呼吸の音だけが響いてた

    私はそんな、いつもと違う雰囲気の中、自分の意見をポツリポツリと語り出したんだ

    「なぁ、あの憂ちゃんを見た時、皆は何か違和感を感じなかったか?……私は、何とも言えない違和感を感じたんだ。

    でも、その時はその違和感の正体が何なのか、混乱していたし私自身よくわからなかったんだ。その違和感の正体が解けたのは、私の質問に対して憂ちゃんが答えた時だった。

    唯はどこにいるんだ?私の問いに対して、憂ちゃんは、お姉ちゃんは家にいる、そう答えたんだ。

    おかしいんだよ。憂ちゃんは確かに事故で死んだ。それで火葬も見て、遺骨も特別に納めさせてもらったんだ。なのに、なんで今この地球に憂ちゃんと唯が存在してるんだよ。

    おかしいんだ何もかもが。」


    27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 01:02:33.98
    そこまで言って、私は少し間をとるように呼吸をした。

    自分の気持ちを整理したいという思いもあった

    この先を言ってしまうと、もう戻れなくなりそうだとも思った。

    でも、皆には友達として知っておいて欲しかった、何より、私ひとりで抱えるには大きすぎる事だったんだ

    そして、私は胸の内に溜まっていたものを皆に吐き出していった

    「……友達に向かって、こう言う事は言いたくないけど、多分、唯は……唯の心は……もう、壊れてしまったんだ」

    その先を私が語ろうとした時、急に胸倉を掴まれた

    「律……!言っていい事と、悪いことがあるだろ……!」

    澪だった。澪のやつが、今にもわたしをぶん殴りそうな勢いで掴みかかってきてるんだ

    澪の気持は痛いほどわかった。友達を、急に廃人扱いされたら誰でも怒るだろう



    29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 01:04:41.45
    でも、他の2人が

    「澪先輩、落ち着いてください。律先輩だってこの話をするのは辛いはずです」

    「澪ちゃん、手を離してあげて。りっちゃん、泣いてるわよ……」

    言われて気付いたんだ。わたしはいつの間にか泣いてたって

    ……辛かったんだと思う。唯の事は親友だと思ってた。親友に対して、そんな事を考えてしまっていたのが辛かったんだ

    そんなわたしを見て、澪は

    「……ごめん、律。」

    って言って手を離して、ハンカチを渡してくれてさ

    それで、わたしは涙を拭って、また話を始めたんだ

    「……澪の気持ちはわかるよ。わたしだって唯を急に廃人扱いされたらそいつを殴るかもしれない。

    で、本題に戻すけど、今日来た憂ちゃん、多分あれは……唯、だと私は思う。」


    30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 01:06:55.36
    流石にこの時ばかりは、3人共顔がひきつってた

    「で、でも、唯先輩は修学旅行に行ってて私と純と憂で過ごした時の事は……」

    梓が純粋な疑問を投げかけてきた

    「あの姉妹はすごい仲が良かったし、そう言う事を話しててもおかしくないだろ?」

    その時点で、私は何か違和感をまた感じてた。でもそれは皆には言わずに黙ってたんだ

    それが何なのかわからなかったし、知りたいとも思わなかった。

    わたしは、その違和感……というかしこりのようなものを残して、皆に話をしていった

    「今日、憂ちゃんとして来たのが唯なら、説明がつくんだ。それで、わたしは今日唯と話してみたい、そう思ってる」

    3人の顔が驚きに変わったんだけど、わたしはそれを無視して話を進めていった

    「唯とは私一人で話したい、そう思ってるし、それが一番だと思う。澪、もしあの憂ちゃんが幽霊だった時お前は怖がらずにいられるか?

    ムギ、梓、あの優しくて暖かかった唯が壊れてたらお前らは耐えられるか?

    ……それにわたしはこの部の部長だ。結果は勿論皆に伝えるし、隠し事はしない、約束するよ」


    31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 01:09:15.29
    その後、3人もそれを了承してくれて、その日は少し話して解散になったんだ

    それで、家に帰ろうとしてる時に不意にわたしの携帯が鳴ったんだ

    何だろ、って思って着信見るとさ………………

    お母さんからで、帰りにスーパーで大根買って帰って来てっていうメールだったんだ

    で、ちょうど小腹もすいてたし、ちょうどいいやって思って私はスーパーに寄って帰る事にしたんだ

    スーパーは夕飯の支度何かをしてる主婦で混み合ってて、わたしは大根とあんぱんを持ってレジの最後尾に並んでた

    そしたら、後ろから声をかけられたんだ


    32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 01:11:25.09
    「あれ?律さんじゃないですか?」

    って……

    その声には聞き覚えがあって、でも誰の声なのか思い出せなくてさ

    ただ、振りむいちゃいけない、思い出しちゃいけないって、脳が、体が、細胞レベルで警告してた気がする

    でも、私は振り向いちゃったんだ

    ……背筋が凍るってのは、ああいう事を言うんだろうな

    憂ちゃんだ……憂ちゃんが私に声をかけてきてたんだよ

    34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 01:13:48.60
    わたしは何が何だかよくわからなかったのと、びっくりしてしまったので

    「お、おお。久しぶり」

    とか、よくわかんない事言っちゃってさ
    そしたら憂ちゃんに

    「あはは。久し振りって、今日学校で会ったじゃないですか」

    何て言われて、余計しどろもどろになっちゃってさ

    でも、頭の中はかなり落ち着いてて、逆にこれはチャンスだと思ってた

    もし、唯の家に行って唯に直接聞いても、知らない。私は風邪でずっと寝てたって言われたら、こっちにはそれ以上追及する事はできないだろ?

    でも、目の前には憂ちゃんの恰好をした唯がいる。これなら、問いただせば逃げる事はできないって思ったんだ

    それから何とか、憂ちゃんと話をしながら帰ろうって事になって、先に会計を済ませたわたしは憂ちゃんが会計を済ませるのを待ってたんだ



    35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 01:16:43.44
    ――わたしは一旦ここで話を区切る

    わたしが話を始めてから、部屋の中にお喋りなんかは無くなって、皆私の話に聞き入っている

    何か、じめじめとまとわりつくような、そんな嫌な雰囲気を割って、私は口を開く

    「……あー、なんか喉渇いたな。ちょっとジュース買ってくるわ。何か欲しい人いる?」

    わたしが立ち上がりかけた時、

    「あ、私も喉渇いたので、私が行ってきます。律先輩は待っててください」

    後輩がすかさず立ち上がる
    わたしは上下関係とか、自分が上に立つ分にはそんなに気にしないけど、どうやら気を遣ってくれたらしい

    「ほんとに?じゃあ悪いけどお願いしちゃおっかな。」

    わたしは、ペットボトルのお茶ね、そう言って後輩にお金を渡す

    「お茶ですね、わかりました。他に何か欲しい人はいますか?」

    皆が一斉に、私リンゴジュース、炭酸、私もお茶、等と言ってその後輩にお金を渡す

    健気にメモをとって、買いに行こうとする後輩に、さきほど横槍を入れてきた友人が

    「後輩ちゃん一人じゃそんなに持つの大変でしょ?私は自分が飲むのは見てから決めたいし、ついでについていくわ」

    といって一緒に部屋を出ていく。
    やっぱり、自分で買いに行けばよかったな。私は少し反省して、2人が帰ってくるのを待つことにした。


    36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 01:19:44.66
    合宿所のロビーにある自販機の前で、私は後輩と一緒に皆のジュースを買っている。

    かなり量が多く、小柄な後輩では1回で運ぶのは大変だっただろう

    後輩もすみません、ありがとうございますとお礼を言ってくる

    わたしは、いいからいいから、なんて照れ笑いを浮かべて自分が飲むジュースを選ぶ

    昔から、お礼を言われるのには慣れていない

    なにか、背中に虫が這っているような感覚を覚えてしまうのだ

    むずむずするような、こそばゆいような、でも決して不快ではない。

    そんな不思議な感覚を感じながらジュースを選んでいると、不意に後輩が真面目な声で聞いてくる

    「……先輩は、律先輩の話、作り話、だと思いますか……?」

    リンゴ100%のジュースにしようと思ってボタンを押しかけた指を、ピタリと止めて私は後輩の顔も見ずに答える

    「……わかんない。りっちゃんとの付き合いは、大学に入ってからは一番私が長いと思うけど、全部りっちゃんの事を知ってるって訳でもないしね。ま、りっちゃんのあんな顔を見るのは私も初めてなんだけどね」

    話しをしているりっちゃんの顔は、どこかいつもの明るさが無いというか、無理に話している感じがするというか。

    とにかく、いつものりっちゃんからは想像もできないような顔だった。

    それも、話の演出、そう言われればそれで終わり。少なくとも、私はそう思っている


    37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 01:22:11.40
    「でも……」

    喉まで出かけた自分の言葉を遮るように、ボタンを押すと、ゴトンという音がしてジュースが落ちてくる

    「?先輩?でも、何ですか?」

    後輩が不思議そうにこちらを見てくる

    「んー、何でもないよ?ほら、皆が待ってるし、話の続きも気になるし、さっさと帰ろう?」

    わたしはそう言って、両手で何本かジュースを持つ。

    後ろから後輩が、先輩。待ってください、なんて言ってトテテテとついてくる

    あの時、喉から出かかった

    「でも、嘘だろうと本当だろうと、過去になにがあったとしても、りっちゃんは私の親友だよ」

    なんて言葉、恥ずかしくて言える訳がない。
    それに、何か律とは、わざわざ口に出して確認する、そんな関係はとっくに終わっていると思ったのだ。


    38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 01:24:22.94
    「先輩?顔が少し赤いんですけど、大丈夫ですか?」

    心配そうに後輩が覗き込んでくる。

    私は

    「まだ暑いからねー。あー、冷房にあたりたい……」

    そう言って、ピトリ、と後輩の顔にジュースをあててみる。

    「ひゃっ!……もー、冷たいですよー」

    「あはは、ごめんごめん」

    後輩の反応を楽しみつつ、私達2人は皆が待っているサークルの部屋を目指して歩き出した


    39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 01:26:48.39

    2人が帰ってきたのは、ジュースを買いに行って5分後くらいだった

    冷房のきいた部屋で、それぞれが自分の頼んだ飲み物を手に、話が始まるのを待っている

    わたしは、お茶を一口飲んで口を潤すと、話を再開する

    「よっし、喉も潤ったし、ここから最後まで一気に行っちゃうか。えーと、ムギが梓のツインテールを掴んで振り回したところからだっけ?」

    「そういうの、ほんとにいいから」

    ジュースを買いに行った友人がそう言いながら、服の中にペットボトルを投入してくる

    「うひぃ!ば、ばか!冷たいだろ!わかった、まじめに話す。まじめに話すから、皆も入れようとするのはやめてくれ」

    皆を制すると、わたしはオホン、と咳払いをして、今度こそ話を再開した


    41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 01:29:26.40
    えーと、どこまで話したっけ……

    ああ、そうそう、それで憂ちゃんと話をしながら帰ることになって、ちょっと待ったらレジ袋をさげて、スーパーから憂ちゃんが出てきたんだよ

    それで、何か適当な話をしながら、人通りの少ない路地まで歩いたんだ

    話してみると、憂ちゃんにしかみえないんだよ。

    でも、おかしいんだ。だから、私は勇気を振り絞って、こう言った

    「なあ、もうやめにしないか?唯」

    って
    憂ちゃん……いや、唯は

    「律さん?お姉ちゃんがどうかしたんですか?」

    ってとぼけてるんだけど、私はそんなの構わずに

    「……唯。憂ちゃんは……もう、死んだんだ……わかってるんだろ……?何でそんな事するんだよ……なあ」

    「お前は唯なんだろ?何で、憂ちゃんのふりしてるんだよ。頼むからもとの唯になってくれよ……」

    って問い詰めたんだ

    42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 01:31:40.55
    そしたらさ……笑ってるんだ、唯のやつ

    追い詰められたような笑いじゃなくて、心底おかしいって感じでさ……

    私が絶句してたら、唯はポニーテールをシュルルルってほどいてこう言ったんだ

    「あははははは!りっちゃんたら何言ってるの?憂が死んじゃっただなんて、誰から聞いたの?」

    って……

    わたしは、金縛りにあったみたいに動けなかった

    嫌な記憶を本能的に忘れちゃったのか?それとも、悲しすぎて壊れちゃったのか?

    私の頭の中に、発狂っていう単語が浮かんで、怖いというより無性に悲しくなってさ……

    わたしは泣きそうになりながら聞いたんだ

    「じゃあ、あの日、事故で死んじゃったのは誰なんだよ……」

    って

    43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 01:33:55.42
    わたしはこの質問には答えられないと思ってた

    だって、あの日、事故にあったのは憂ちゃんのはずなんだ

    葬式にも唯はいたんだ、答えられるはずがない、そう思ってた

    「うーん、誰なんだろうね?よくわかんないや」

    わたしは耳を疑った

    誰なんだろう?どういうことだ?

    「さわちゃんから憂が事故にあって死んじゃったって聞いた時は焦ったよ?でも、憂は生きてるし、誰のお葬式なんだろうね」

    「ちょっと待てよ、唯。どういう事だ?何が言いたいんだ?」

    ……意味がわからなかった、わかりたくもなかった


    47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 01:36:57.48
    「だって、憂はここにいる。……ここにいますよ?律さん」

    ……狂ってしまったんだ、唯は。

    わたしはそう思った。好きすぎて壊れてしまったんだ。

    そう思った、いや、そう思わないと自分が狂ってしまう、そう思った

    「律さん?顔色が悪いみたいですけど、大丈夫ですか?」

    「……ふざけるのもいい加減にしてくれ、唯。わたしをからかって……おもしろいのかよ……」

    もう、わたしは諦めかけてた。

    そんなわたしを見て不思議そうに唯は言ったんだ

    「律さん?大丈夫ですか?私が憂で。」

    「私が唯だよ?りっちゃん?見分けがつかないなんて、ひどいよー」


    48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 01:39:22.11
    わたしはまた言葉を失った

    何も言えないわたしを、唯は心配そうにじっと見てくる

    わたしはその雰囲気に耐えかねて、適当な質問、いや懇願にも近い思いで言葉を投げかけた

    「なあ、唯、頼むよ……もとに戻ってくれよ……修学旅行の時、いつまで経っても友達だって約束したじゃないか……お前は、唯なんだろ?……頼むよ……」

    「んー、そんな事言ったっけ?でも、私は唯だよ?りっちゃん、ほんとに大丈夫?」

    わたしは、あの時感じた違和感を思い出した

    何だろう……何かが引っかかる……

    そんなわたしを、大丈夫?なんて聞きながら唯が覗き込んでくる

    ……そこで、体調が悪いみたいだ、とか適当な事を言って切り上げれば良かったんだ

    これ以上突っ込まずに、自分がおかしかった、そういう事にしておけば良かったんだ


    50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 01:42:19.87
    「あ、そうだ、りっちゃん。よかったらうちに来ない?憂ったら、お夕飯の材料買いすぎちゃったみたいで……」

    って言われてさ、私はその誘いに乗っちゃったんだ

    今思うと、怖いもの見たさとかそういうのもあったかもしれない、でも、その時は唯を助けてやりたかったんだ

    諦めかけてたけど、助けることができるなら……自分に出来る事はなんでもやろう、そう思ったんだ

    そのあと、わたし達は唯の家、平沢家までほとんど無言で……

    いや、正確に言うと唯だけがしゃべってた

    あたかも誰かとしゃべってるみたいに楽しそうに、さ……

    まあ、そんな感じで平沢家についたんだけど、正直こっから先はよく覚えてないんだ

    だから、かなり曖昧になるけど許してくれ

    55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 01:46:54.49
    ……家についた時、唯は両手に荷物提げてて、わたしが扉を開けようと思ったんだ
    そしたら唯が

    「憂-、ドア開けてよー」

    って言うんだよ

    わたしは、自分で荷物持ってるのに、入れ替わっても一緒だろって思ったんだけど……

    ……………開いたんだよ、ドアが

    ギイーって音たてて、開いたんだよ……

    意味がわからないだろ?わたしもわからなかった

    で、唖然としてたらさ、電気がパチッてついたんだよ

    唯の家には唯一人しかいないはずなんだ

    でも、唯はわたしの隣にいるんだ、なのに、自動化されたみたいに……ドアが開いて、電気がついて……

    ……固まってるわたしを見て唯は言ったんだ

    57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 01:49:04.20
    「ほら、憂いるでしょ?りっちゃん」

    62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 01:53:13.59
    ……憂ちゃんは死んだはずなんだ、じゃあ、唯は何と住んでるんだよ……

    ……わたしは、怖かった

    親友を見捨てて逃げたかった

    ……いや、逃げるべきだったんだ

    わたしは結局、唯につれられて平沢家に足を踏み入れた

    唯は荷物をさげて台所に向って行って、私もそのあとをついていったんだ

    それで、キッチンに着いたんだけど、その時唯が言ったんだ

    「憂-、ここに荷物置いとくよー」

    ……答えは当然、返ってこなかった

    そしたら唯が

    「うん、わかった、お姉ちゃん」

    って自分で答えてさ

    63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 01:55:31.10
    ああ、やっぱりさっきのは何かの間違いか、自動化されてただけで、この家には唯一人しかいないんだって思った

    それと同時に、唯が壊れてしまったって事の証明にも思えて、悲しい反面……正直ほっとした

    でも、唯……いや、憂ちゃんが

    「お姉ちゃん、すぐ料理できるから、部屋で律さんと一緒に待ってて?」

    そう言った時に…………確かに聞こえたんだ

    ……タタタタタタタって階段を上がる音が…………

    おかしいんだ……

    死んだのは憂ちゃんで、生きてるのは唯のはずだ

    いや、唯が憂ちゃんに言った時も”何か”は反応したんだ

    わたしは、目の前にいるのが唯なのか、憂ちゃんなのか、わからなかった


    65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 01:58:29.53
    その後も、憂ちゃんは唯と一緒に待っててくださいって言ってきたんだけど、わたしは嫌だった

    わけのわからないものといるくらいなら、目に見える、唯といた方がましだった

    悪いし、手伝うよ。そういって無理やり料理を手伝ってたんだけど……

    おかしいんだよ

    唯って、かなり不器用なやつで、料理なんてできないし、包丁持たせたら危なくて目が離せない、そんな奴だったのに……

    何年もずっと家事やってきたみたいな感じで、手際もいいし、包丁の扱いもめちゃくちゃ上手いんだよ

    それを見てわたしは、以前感じた些細な違和感を思い出したんだ

    でも、その時はその違和感が何なのかわからなかった……いや、今でもはっきりとはわからない

    そんなモヤモヤした気持ちで料理を手伝ってたんだ、そしたら

    「あ、すいません、お醤油買い忘れてたみたいで……ちょっと買ってくるので、お留守番しててもらえませんか?」


    67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 02:00:48.77
    最悪だよ、ほんとに

    わたしが行くよ、そう言ったんだけど、それは悪いからお姉ちゃんとお留守番しててくださいって……

    結局わたしが折れて、ビクビクしながらテレビを見てた

    何事もなく時間は過ぎて行って、足音も何もかもわたしの思い込みで、この家にはわたしと唯しかいなかったんだ、そういう結論が出そうな時だった

    プルルルルルルって、突然電話が鳴ったんだよ

    心臓が止まるかと思ったけど、よく考えたら、唯……いや憂ちゃんからだろって思ってさ

    唯の家の電話は、かかってきた電話番号を表示する機能があるんだけど、それを見たらやっぱり憂ちゃんからだったんだ

    (これは、スーパーはもう閉まってたのかな?)

    とか思って電話に出ようとしたんだけど……

    68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 02:02:57.01
    …………聞こえたんだよ、トンッ、トンッ、トンッて……

    電話の呼び出しブザーの合間に、ゆっくり階段を降りてくる足音が……

    寝起きか何かだったのか、ゆっくりゆっくり近づいてくるんだよ

    わたしは、電話をとりに来たんだろう、直観的にそう思った

    だから、急いでテレビの方に戻って、気付いてないふりをしたんだ

    足音はどんどん近付いてきて、電話の辺で足音がしなくなったって思ったら、呼び出しの音がピタッと止まったんだ

    ……”何か”が電話に出たのか、それとも、憂ちゃんが誰も出ないから切ったのか……

    今考えると、馬鹿だと思うよ

    わたしは、何だか無性に気になってさ、確かめてやろう、そう思ったんだ

    ……やけになってたんだと思う。”何か”がいないって事を何とか証明したかったんだと思う


    71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 02:05:43.38
    わたしは、おっかなびっくり見に行ったんだ……

    それで、恐る恐るモニターを見たんだけど……

    そこにさ……出てたんだ……

    …………通話中って文字が……

    わたしは驚いてさ

    やばいと思って逃げようとした拍子に、電話に腕が当たって受話機が外れたんだ

    ……聞こえたんだ、受話機の向こうから「今、~のコンビニだけど、アイス食べる?」

    って憂ちゃんの声が……

    楽しそうに”何か”と話す憂ちゃんの声だけが部屋に響いててさ…………

    ……それから先は悪いけどよく覚えてない。ただ、必死に走ってたって事と誰にも会わなかった事は覚えてる。

    気付いたら私は、自分の部屋で布団にくるまって朝を迎えてたんだ


    72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 02:08:15.69
    それで、その日は学校に行く気にもなれなくて休むって連絡しようと携帯を開いたんだけど……

    ……かかってきてたんだよ、唯の家の電話から……

    普通なら、いなくなったわたしに、どうかしたのっていう連絡が来た、そう思うんだけど

    ……時間がおかしいんだよ

    モニターを見た時さ、時間は19時40分だったんだ

    ……19時41分にかかってきてたんだ

    唯の家から、近くのコンビニまで、どんなに急いでも5分はかかるはずなんだよ

    なのに…………


    73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 02:10:24.42
    わたしは、その日学校には行かなかった

    唯に会いたくなかったし、話を一旦自分の中で整理したかったんだ

    わたしは何回か違和感を感じたって言ってただろ?

    それについては、多分これだっていう答えが出たんだけど……

    ま、それは話しの続きでわかるよ


    それで、他の3人……澪とムギと梓を、唯は絶対に連れてくるなって言って、わたしの家に呼ぶ事にした

    家には一人ずつぱらぱらと来て、わたしを含めて4人揃ったところで話を始めたんだ

    「……で、律。昨日はどうだったんだ……?」

    澪が恐る恐る聞いてきた


    74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 02:12:34.32
    「そうだな、結果から言うと、あの憂ちゃんが幽霊だった方が100倍ましだったな……」

    3人の顔が強張り、私の部屋に重苦しい空気が流れる

    わたしは、昨日の出来事をできるだけ細かく話していった

    スーパーで憂ちゃんに会った事、帰り道に憂ちゃんと話した事、そこでの内容……

    でも、私は唯の家に何かが居た事は話さなかった、いや、皆には話してはいけない気がした

    昨日あった事を思い出すふりをして、唯の家での事はほとんどでっち上げて話した気がする

    一通り話終えると、皆は疑問に思ったことを質問してくる

    「唯は生きてるんだろ?精神科とかに連れていったら治らないのか?」

    とか

    「唯先輩が憂が生きてるって思いこんでるって事ですか……?」

    とか、まあ当然の疑問だろう

    77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 02:14:47.96
    「……わたしにも、正直よくわからないんだ。……だから、わたしがこれから話す事は仮定の話だと思ってくれ」

    わたしはそう前置きをして、今度は自分の考えを語り始めたんだ

    「なあ……皆はさ、わたしの話を聞いて何か違和感というか、もしかして……とか思わなかったか?」

    皆は不思議そうな顔でわたしを見てきた

    「梓……梓はさ、憂ちゃんにいろいろ修学旅行の時のこと質問してただろ?どうだった?」

    「どうだった?って、全部答えられてて、これは憂なんじゃないかって思いましたけど……」

    やっぱり、わたしは確信にも近い何かを得た

    「……唯に、修学旅行の事を聞いたんだ。ずっと友達でいようって言っただろ?って。皆は覚えてるか?」

    わたしはムギと澪に聞いてみる

    2人とも、よく覚えてる、そう答えてくれた

    79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 02:18:04.45
    皆、何か違和感を感じたんだと思う。

    「もし、もしもの話だけど、二人が日常的に入れ替わっていたとしたらどうだ?あの時、梓達と一緒にいたのが、実は今生きている唯だったとしたら?」

    3人共、言葉を失ってた。

    わたしは構わずに話を続ける

    「実際そう考えると、いろいろな事に辻褄が合うんだ。

    やけに料理が上手かったこと、梓の質問に答えられたこと……それだけじゃない、クリスマスの事を覚えてるか?」

    ムギと澪、2人が、あっ、という表情を浮かべた

    「そうだ、憂ちゃんがギターを弾いてくれただろ?ちょっと練習しただけで、やけに上手で私達はびっくりしただろ?

    わたし達は、唯に似て才能があるんだな、そう思った。でも、いくら何でも上手くなりすぎだ、そう思わなかったか?澪」

    「……正直、少し嫉妬してしまう位上手になってたな」

    澪はそう言って、楽しかった頃を思い出したのか、下を向いてしまった

    81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 02:20:17.05
    「あれだって、日常的に入れ替わってギターを弾いていたのだとしたら?

    唯は、一つの事を覚えたら、よくその前の事を忘れてたよな?それも入れ替わっていたのだとしたら?」

    それだけじゃない、わたしはそういって話を続けた

    憂ちゃんが事故にあった日の朝の会話をとっても、そう考えると異常なものになるんだ

    あの日、あの日の朝までは憂ちゃんだった、その時の唯が寝坊したから唯は「憂が寝坊した」、そう言ったんじゃないか?

    「気を付けてね」は互いの認識に差が生まれてたから言ったんじゃないか?

    ……もしかすると、わたし達と初めて会った時の唯は憂ちゃんだったんじゃないか?

    誰も否定しなかった……いや、できなかったんだと思う

    わたしも少し疲れて一息置いてたんだけど、その時ムギがこんな質問をしてきたんだ


    82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 02:22:26.71
    「ねえねえ、りっちゃん。今生きてるのは唯ちゃんなの?憂ちゃんなの?」

    って

    「……それは、もっとわたしの推測の域を出ないんだけど……それでもいいか?」

    うん、だとか、はい、だとかそれぞれから肯定の返事が返ってきたから

    わたしは、ふーって深呼吸をして、わたしの推測を話した

    「たぶん、わたし達がそれをわからないみたいに、唯……生きてる方にもわからないんだと思う。

    葬式の時の唯の様子、思い出せるか?何か考えるみたいに憂ちゃんの棺見てたろ?それで、「私が泣いてると憂が心配するから」って言っただろ?

    わたしの話を聞く前だと、立派なお姉ちゃんで終わる話だけど、わたしの話を聞いた後だと、ニュアンスがかなり変わる、そう思わないか?

    入れ替わりをずっと続けてるうちに、もともとどっちがどっちだったかわからなくなった、っていうのが正しいのかな……」

    84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 02:24:51.57
    皆下を向いて考え込んでた

    すると何か思いついたのか、ぱっと顔を上げて梓が質問してきたんだ

    「でも、それだと悲しまないっていうのはおかしくないですか……?どっちがどっちだかはわからないけど、自分の片割れが死んだっていうのはわかるはずだと思うんですけど……」

    「……多分だけど、入れ替わりを続けるうちに、それぞれの中で、例えば、唯の中には憂ちゃんの。憂ちゃんの中には唯の人格が形成されていったんじゃないか?

    それで、続けるうちに自分はもともとどっちだったかを忘れていったんじゃないか?

    ……こんな事言いたくないけど、言ってしまえば唯と憂っていう人格を演じるだけの器になってしまったんだと思う

    1つの器の中に唯と憂っていう2つの人格があって、それが2つあったと考えたら?器が2つあった時はどちらかがどちらかをって感じでその時その時で演じてただけで、1つが壊れてしまっても、唯と憂は1つの器の中で生き続けているとしたら……?

    憂ちゃんは、唯の中で生き続けてるんだ。いや、もしかしたらあの日死んだのは、唯として生まれてきた方かもしれないな……」

    誰も、何もしゃべらなかった

    ふと、わたしの脳裏にあの日のことがよぎった

    85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 02:27:34.13
    唯は

    「憂はここにいる」

    確かにそう言った。唯の心の中にいる、ムギ達はそう思っているだろう

    でも、わたしはまた違った風に思えたんだ

    得体のしれない何か、確かに存在していたけど、目には見えないなにか

    もしかしたらあれは……あれこそが器なのではないだろうか

    体、という箱が壊れてしまっただけで、その中にしまわれていた器は壊れていなかったのではないだろうか……

    それなら、どちらの名前で呼ばれても反応していた理由も、憂ちゃんは死んでいないという主張も納得できる

    そして、未だに、”2人”で演じ続けているのではないだろうか……



    87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 02:30:31.37
    「……つ?……律?」

    澪が悲しそうな顔でわたしを呼んでるのにも気付かないくらい、わたしは考え事に没頭してた

    ああ、悪い悪い、どうしたんだ?って言ったら、澪のやつが、呟くような声で聞いてきたんだ

    「……唯は、……もう、もとに戻らないのかな……?」

    戻るさ、そう言ってやりたかったけど、嘘はつきたくなかった

    「……なあ、澪。わたし達は、事故があって、唯が壊れてしまった。そう思ってただろ?」

    澪は小さく頷いた

    「たぶん、違うんだ。今の状態を狂ってる、そういうなら……わたし達と出会った時点で唯は、唯達は狂ってたんだ。

    わたし達は、その壊れてる状態の唯しか知らないんじゃないか?いや、壊れていない状態の2人を知ってる人間はたぶん、いないんだ……」

    「じゃあ、唯は壊れてないのか……?わたし達が知ってる唯と変わっていないなら、また前みたいに付き合えるのか……?」

    わたしは、しばし考えた

    そう、今の状態を普通だというなら、付き合いを続けても問題はないはずだ

    だけど、あの日いた何かは、関わってはいけないものだ、直観的にそう思った


    93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 02:39:43.93
    「……やめた方がいい、わたしはそう思う。もちろん、絶交しろとかそういうあれじゃない。

    ただ、家にいったりだとか、そういう踏みこんだ付き合いは止めた方がいい、と思う。一定の距離を置くんだ。

    この話を聞いて、唯は異常だ、そう思っただろ?

    ……なあ、皆はこういう有名な話、知ってるか……?」


    94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 02:41:55.06
    ――
    「……と、これでわたしの話は終わり!いやー、すっかり長くなっちまったなー」

    部屋の中は静まり返っていて、冷房だけが音をたてている

    「明日も早いんだし、もう寝ようぜ」

    わたしはそう言っていそいそと布団に潜りこむ

    顔は冷房で涼しいのに、布団の中は暖かい。そのギャップに何とも言えない心地よさを覚える

    「……あの、律先輩。一つだけ教えていただいてもいいですか?」

    後輩がおずおずと聞いてくる

    「……質問は受け付けないつもりだったけど、特別に答えてあげよう。何が聞きたい?」

    コロン、と寝返りをうって、皆の方に頭を向ける

    「……どこが本当で、どこが嘘なんですか……?」

    「……うーん、そうだなー……」

    ニヤッと笑みを浮かべて、わたしは口を開く

    「この話しは作り話、っていうのが嘘……かな」

    わたしはいたずらっぽくそう言うと、また寝返りをうってそっぽを向く

    他の皆も、トイレにいったりして寝る準備を始めたということが、聞こえてくる音でわかる

    95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 02:44:05.90
    少しして、静寂に包まれた部屋の中で、わたしは頬を伝って、涙が枕を濡らしていることに気が付いた

    わたしがそれを拭おうとした時、何か温かいものがわたしの手にふれた

    「……りっちゃん?起きてる?」

    隣で寝ている親友が、わたしの手をそっと握っていた

    わたしは無言でその手を握り返す

    「ふふっ、起きてるんだ。……ねえ、もっと教えてほしいな、りっちゃんのこと」

    わたしは顔を向ける

    多分、そうとうひどい顔をしていただろう

    でも、こいつにならそんな顔を見られても構わない、むしろ……見てほしい、知ってほしい、そう思った

    「……」

    親友は、無言で手を握ったまま、もぞもぞとわたしの布団に入ってくる

    おいおい、わたしがそう言って親友を制止しようとした時―――

    96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 02:46:15.07
    ギュッ

    わたしは、ふかふかの布団の何十倍、何百倍も温かい感覚に包まれた

    石鹸のような、微妙に甘くて清潔感溢れる香り

    そんな親友の香りが胸一杯に広がっていく

    振り解く事もできた。

    でも、振りほどけなかった。

    わたしは、泣いた

    あの時、救ってやれなかった後悔が。

    皆に嘘をついた後ろめたさが。

    そして、どこか懐かしい感覚が。

    全てがわたしの双眸から、涙となって溢れて、親友の胸を濡らしていく

    子供のように泣きじゃくるわたしを、親友は優しく包んで、ずっと頭を撫でてくれた

    98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 02:48:23.97
    その日、わたしたちは夜が明けて、空が白んでくるまで語り明かした

    お互いが出会った時の事、出会ってから今までの事、そして、出会う前の事

    色々な話をしたし、色々な話を聞いた

    結局、お互いがお互いを親友、そう呼ぶ事は無かった

    でも、何故かわかりあえている、そう思えた。声に出して、言葉にしてしまうと、それが薄れてしまうような気もした。

    わたしたちが寝たのは、結局鳥の鳴き声が聞こえてくるようになってからだった

    わたしは、自分の隣で先に眠ってしまった親友の寝顔を見る

    にへーっと薄ら笑いを浮かべた寝顔は、だらしなくもあったが、とても愛しく思えた

    ありがとう、おやすみ。わたしはそう呟いて、ほっぺたに軽くキスをした

    誰かに見られていたら、恥ずかしくて爆死する。

    そんなレベルの行為だけど、せずにはいられなかった

    99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 02:50:33.55
    厚い雲に覆われていた心に、少しずつ青空が広がっていく

    そんな清々しい感覚の中でわたしは眠りに落ちていった

    きっと、この時のわたしの顔もだらしなく薄ら笑いを浮かべていたであろう事や

    そういえば澪のメールに返信してないとか、そんな事はその時は一切気にならなかった

    わたし達2人の笑顔は、その2時間後。

    1つの布団で、抱きあって幸せそうに眠っている所を発見されるまで崩れる事は無かった


    103 名前:エピローグ[] 投稿日:2010/10/17(日) 02:53:38.77
    ――平沢唯が死んだ――


    107 名前:エピローグ[] 投稿日:2010/10/17(日) 02:56:29.22
    わたしはその報せを受け、ひとり電車にゆられながら、生まれ育った街へと向かっている

    高校時代の友人の朴報、普通であれば涙を流すものであろう

    だけど、わたしの胸中は複雑だった

    楽しかった時の事、友人の眩しい笑顔の事を考えれば悲しくなる

    しかし”あの記憶”が蘇ると、多少の恐怖と、どこかホッとしている自分に気づき、自己嫌悪にかられる

    ひとり電車の中で、そんな悶々とした時間を過ごしていると

    「次は~桜ケ丘~、桜ケ丘~」

    車掌のどこか抜けたようなアナウンスが響いた

    わたしは慌てて荷物を掴むと、降車する人の流れにのまれながらも桜ケ丘の地に降り立つ


    109 名前:>>107訂正します、朴報→不幸。[] 投稿日:2010/10/17(日) 02:58:47.01
    わたしはその報せを受け、ひとり電車にゆられながら、生まれ育った街へと向かっている

    高校時代の友人の不幸、普通であれば涙を流すものであろう

    だけど、わたしの胸中は複雑だった

    楽しかった時の事、友人の眩しい笑顔の事を考えれば悲しくなる

    しかし”あの記憶”が蘇ると、多少の恐怖と、どこかホッとしている自分に気づき、自己嫌悪にかられる

    ひとり電車の中で、そんな悶々とした時間を過ごしていると

    「次は~桜ケ丘~、桜ケ丘~」

    車掌のどこか抜けたようなアナウンスが響いた

    わたしは慌てて荷物を掴むと、降車する人の流れにのまれながらも桜ケ丘の地に降り立つ



    110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 03:01:35.98
    ―――懐かしいな―――

    わたしがこの街に帰ってくるのは実に2年振り、大学に進学してから初めての帰省となる

    変わらない風景、変わらない街並、あの頃はいつも見ていたものだが、久々に見ると新鮮に見える

    燦々と照りつける太陽の下、時計を確認すると、時計の短針は午前11時を回ったばかりだ

    葬式の予定は午後3時からなので、時間はまだまだある

    (少し散歩でもするか)

    予定を決定したわたしは、ふらふらと街へ向って歩き出した

    111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 03:04:03.00
    2年振りで目に映る景色は新鮮に感じるとはいえ、実際に歩いてみると、交差点を曲がるとどこに着くかや、細い路地の一本一本まで正確に把握している自分の記憶力に少し驚かされる

    (ああ、あのアイス屋。唯が好きだったな……)

    (この喫茶店で、5人でよくだべってたっけ……)

    (この楽器屋で唯がギー太を買ったんだよな……)

    気が向くままに歩いて行きつく先は、どれも軽音部の思い出が詰まった場所ばかりだった

    つまらない事で笑い、くだらない事で盛り上がり、どうでもいい事で喧嘩して……

    次の行先も決定しないまま歩いていると、わたしの頭にふとある場所が思い浮かぶ

    高校時代、もっとも長く過ごした場所で、一番思い出が詰まった部屋

    わたしは、桜ケ丘女子高等学校を次の目的地に決定した

    ――また、”皆”に会えるかもしれない――

    112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 03:06:29.75
    自分でも馬鹿げている、そう思う希望だが、何故かその時は信じたくなっていた

    わたしは歩き慣れた道を歩いて行く

    長く滑かなアスファルトの坂

    そしてその先にある曲がり角

    その曲がり角を右に曲がり、学校に歩いて行こうとした時、うしろで足音と自分を呼ぶ声が聞こえた気がして、足を止めてわたしは振り返った


    113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 03:08:38.62
    ――誰もいない――

    ガッカリしたような、安心したような不思議な気持ち

    わたしはまた、学校に向けて歩き出す

    もう一度呼ばれた気がしたけど、今度は気にせずに歩く

    気がつけばわたしは、見慣れた校門をくぐり、校庭に到着していた

    (やっぱり、誰もいない、か)

    ふぅっと一息ついて、時計を覗き込む

    時計は午後2時をさしていた

    (そろそろ会場に行かなきゃなー……)

    わたしが重たい腰を上げ移動しようとした時―――

    114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 03:10:51.78
    りっちゃん!りっちゃんよね!?」

    後ろからわたしを呼ぶ声が、今度ははっきりと聞こえた

    「久し振り!りっちゃんたら少し大人っぽくなったんじゃない?」

    振り向くと、金髪をふわふわとゆらしながら近づいてくる琴吹紬の姿が目に入る

    「ムギ!会いたかったぜ!久し振りだなー!」

    「私もよ、りっちゃん」

    礼服姿の親友の変わらぬ姿に、顔が自然に緩んでいく

    「りっちゃん。澪ちゃんと梓ちゃんもあっちにいるんだけど、一緒に会場まで行かない?私、久し振りにお話したいなあ」


    115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 03:13:10.10
    それから会場に到着するまでの間、私達4人は色々な事を話した

    大学の話だったり、音楽の話だったり……

    わたしの話は主に大学でできた親友の話だった

    ―――

    「へー、そんな娘と友達になったのか。なんか毎日おもしろそうだな」

    「おもしろそうっていうか、律先輩とコンビでいると騒がしそうですね。でも、にぎやかでとっても楽しそうです」

    「ねえねえりっちゃん。私その娘に会ってみたいな。今度紹介してくれない?」

    「わ、私も会いたい!」

    「私もです!」

    「あー、そういやあいつも皆に会ってみたいって言ってたな。シャイな奴だから最初は印象悪いかもだけどすっげーいい奴だから、仲良くしてやってくれ」

    ―――

    116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 03:15:24.59
    会場に到着すると、すでにかなりの人間が席に座っていた

    中には、すすり泣いている人もいる

    わたしたちは適当な席をさがして座り、葬式が始まるまでのしばしの間、それぞれが物思いに耽る

    自分の世界に入っていたわたしを引き戻したのは、響きだした読経と、ポクポクという木魚の音だった

    葬式は淡々と進み、遂に、火葬場目指して出棺される前の、最後のお別れの時がやってくる

    参列者が次々と棺に向かって最後のお別れを告げている

    わたしの前を歩いている澪やムギ達は、やはり悲しいのだろう

    目に涙を浮かべ何かを話しかけている

    そして、わたしに順番が回ってくる

    117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 03:18:14.24
    唯の顔は穏やかだった

    わたしの頭には楽しかった思い出が次々と浮かんでくる

    そして、同時に言いようのない恐怖をわたしは感じていた

    これは、本当に唯なのか?もしかしたら、2人はまだこの街で演じ続けているのではないか?

    あの日のように、不思議な顔を浮かべて、この葬式を眺めているのではないか……?

    「じゃあな」

    わたしは自分の考えを否定するかのように短い言葉を投げかけ、次の人間に順番を回す

    泣きじゃくりながら別れを告げている次の人間を尻目に、もやもやした気持ちを抱えたままわたしは会場を後にする

    会場のしんみりした空気とは打って変わって、外は太陽により明るく照らされていた

    ぽかぽかした気温の中、ぼーっと出棺されるのを待っていたわたしに澪達が話しかけてくる


    119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 03:20:28.31
    「なあ……唯は、幸せだったのかな」

    「……さあな。でも、楽しそうだった表情しか浮かんでこないだろ?幸せだったと思うぜ、多分な」

    「そうだといいな……」

    ところで、と澪が話を続ける

    「律は、火葬には行くのか?私達は特別にどう?って言われたから行くつもりなんだけど」

    「…………いや、わたしは帰りの電車の時間もあるし、遠慮しとくよ」

    そうか、ならしょうがないな。澪達はそう言うと、わたしに別れの挨拶をして棺とともに車で移動を開始する

    ―――また会おう、か―――

    121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 03:22:54.64
    実は、電車の時間までには、まだかなりの余裕があった

    わたしには、明るいうちにどうしても行っておきたい場所があったのだ

    何で行きたいと思ったのかはわからない

    だけど、行かなければならないと思ったのだ

    車が見えなくなったのを確認したわたしは、今度は明確な目的地を持って歩きだす

    平沢家に向って―――


    132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 03:53:30.34
    わたしが平沢家に着いた時には時計はすでに午後5時を回っていた

    帰りの電車は23時30分、時間的にはまだまだゆっくりできる

    まだ明るいとは言え、窓も、ドアも、門も締め切った平沢家からは言いようのない雰囲気が漂っていた

    重苦しいような、冷たいような……

    そんな、道路から見ているだけでも鳥肌が立つような雰囲気に圧倒されてしまう

    わたしが予定を早めに切り上げ、逃げ出すように背を向けたとき

    ―――誰かがわたしを呼んでいる―――

    そんな気がした

    ―――振り向いてはいけない―――

    そんなわたしの意志とは関係なく、まるで何かに操られるようにわたしの首は徐々に後ろにスライドしていく

    ”何か”を視界の端にとらえた気がした―――

    134 名前:解除きた。ラストまで一気に行きます[] 投稿日:2010/10/17(日) 03:55:43.43
    ん……ゃん……

    ―――誰かがわたしを呼んでいる―――

    ちゃん……っちゃん……

    最初は朧げだったその声はどんどんわたしに近づいてくる

    りっちゃん!……りっちゃん!!

    139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 03:58:43.60

    耳元で名前を叫ばれたような感覚に、わたしは驚いて飛び起きた

    文字通り飛んでしまったのか、体に落下したような衝撃が走る

    あたりはすでに真っ暗で、街灯の光で道路は明るく照らされている

    目が覚めたばかりの時は、あまり事態を把握できなかったが、少し落ち着くと自分がいかに異常な状況におかれているかすぐに理解できた

    最後の記憶は、たしか道路で、閉め切られた平沢家を眺めていたはずだ

    今、わたしは平沢家の敷地内に立っている

    141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 04:02:59.53
    「……っかしーなー、いつの間にこんなところに……」

    待て……何かがおかしい……何かが……なにかが、ナニカガオカシイ

    「っ!!」

    ある事に気づき、とてつもない恐怖にかられた私は、私を迎えるかのように開いたままの扉に背を向け、開け放たれた門から転がるように敷地外へと飛び出る

    そして、そのまま駅を目指して全力疾走する

    何度も呼ばれた気がしたけど、決して振り向かずに最高速で駆け抜ける

    そして、駅で発車ギリギリの電車に飛び乗る

    わたしが飛び乗った瞬間にドアがしまり、発車のアナウンスが流れる

    はぁっ、はぁっと荒い息を整えつつ、わたしは自分の指定席を探して、腰をおろす

    142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 04:05:28.28
    ―――あの時、目が覚めなかったらどうなっていたんだろうか―――

    あの時、わたしを呼んだ声

    誰の声かははっきりしないけど、わたしの頭にはあの時最後に話した内容と、わたしの事をりっちゃんと呼ぶ”友人”達の顔が浮かぶ

    144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 04:07:52.78
    ――「なあ、みんなはこういう有名な話、聞いたことあるか?

    引っ越してきたら壁に穴があいてて、覗きこんだら真赤だったみたいな話」

    「あ、私それ聞いたことあります。大家さんに隣にはどんな人が住んでいるのか尋ねたら病気で目が真っ赤な人が住んでますよ、って言われたみたいな話ですよね。」

    「そうそう。覗く場所は壁だったり、鍵穴だったり、バリエーションはいくつかあるけど、どれにも当てはまる事が一つだけあるよな?」

    「確かに、相手もこっちを覗いている、ってオチは一緒ですよね」

    「大正解。んで、もう一つこんな言葉を知ってるか?」

    145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 04:10:28.41
    ―――怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ―――

    「?何ですかそれ?」

    「りっちゃんって物知りなのね。ニーチェの「善悪の彼岸」の一節でしょ?それ」

    「これまた正解。最も、言葉の本当の意味なんてわたしはよくわからないし、わたしなりの解釈しかしてないけどな」

    「えーと、どういう意味かしら?」

    「さっきの赤い眼の話を思い出してくれ。こっちが覗き込んだ時見えた景色は既に赤かった。相手はいつから覗いてたんだ?」

    「こっちが覗く前、かしら……」

    147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 04:13:11.37
    「ま、そういうことになるわな。わたしはこの話は怖い話じゃなくて、一種の警告なんじゃないかと思ってる。

    人間が怖いもの見たさや興味本位で、人外の領域を覗き込んだ時に、相手も同様に興味を持って見てるんだ。

    いや、こっちが見たくなくても相手は常に興味を持ってこっちを覗いているって言った方が正しいかな。

    例え興味本位とかそんな気持ちは無くても、無意識にでも足を踏み入れてしまったら相手が興味を持っている以上、引き摺り込まれてしまうんじゃないか?」

    「つまり、唯ちゃんは怪物になってしまった……って事?」

    「あー、そんな意味じゃなくて、要するに自分が異常だと感じたものには半端な気持ちで近づくなって事。

    この話も、覗いただけで終わってるだろ?異常だってわかってるのに、わざわざ必要以上に接近するのはやめようって話だよ。

    わたしは……今の唯は異常だと思ってる。今まで通り、部活なんかでは一緒に演奏したりするけど、これ以上深い仲になろうとは……正直怖いし、はっきり言って思わない。

    冷たいやつだと思われるかもしれないけど……」―――

    151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 04:17:14.72
    結局、唯に憂ちゃんについて質問するのは禁止などのルールを決め、一定の距離をとる事で話は決着して、その日は解散になった

    今考えると、わたしはあの時、平沢家に上がり込んだ時点で既に”赤い眼の女”と接触していたのではないだろうか

    覗くだけではなく、家に上がりこんで、世間話をして、一緒にお茶を飲んだのではないだろうか

    その時は運良くこちら側に帰ってこれたものの、”赤い眼の女”はその時からわたしに興味を持ち、今なお引きずり込もうとしているのではないか


    152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 04:20:04.44
    ……そもそも、唯と憂として生まれてきた”もとの存在”は、既に、わたし達と出会うより前に消えてしまっていたのではないだろうか

    わたし達が付き合っていた2人は、深淵からやって来て唯と憂と名乗っていた”何か”ではないだろうか

    唯と憂、2人は何らかの方法で深淵をのぞいてしまったのでは?

    いや、入れ替わり、倒錯していくうちに、自ら深淵に足を踏み入れたのかもしれない

    自ら足を踏み入れ、自覚のないままに深淵に住む怪物と化してしまったのかもしれない

    156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 04:25:19.57
    2人がああなってしまった詳しい経緯は、今のわたしにはわからない

    当の本人達も、自分がもはや人ならざるものになってしまったという自覚はないのではないだろうか

    わたしを家に呼んだ時も、自分達は普通に生活を送っていたつもりなのではないだろうか――



    160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 04:27:35.89
    物思いに耽るわたしの脳裏に漠然と

    ――”何か”はわたしについてきていて、今も隣にいるのではないか――

    そんな不安がこみ上げてくる

    わたしは、その不安から少しでも逃れたくて、大学の友人に電話をかけようと携帯を開く

    画面の左下に着信が6件入っている、という表示がされていた

    着信は、琴吹紬、秋山澪、中野梓から1件ずつ、そして大学の友人から3件

    どれも似たような時間、わたしの記憶にない空白の時間にかかってきている

    161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 04:29:45.55
    わたしがその履歴の中から大学の友人にかけ直そうとした時―――

    携帯が、電話がかかってきた事を告げるために、小刻みに震えだす

    わたしはその着信番号を見て、携帯を鞄の中に投げ入れる

    先程まで感じていた不安は一気に解消され、目的地に着くまでゆっくり睡眠をとろうと思う余裕さえ生まれていた


    165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 04:34:20.33
    きっと、わたしがこの街を訪れる事は二度とないだろう

    キラキラと輝き、いつまでも色褪せない宝物が詰まった箱

    色恋沙汰なんて何も無かったけど、確かに青春の一ページに刻まれた場所

    あの二人は、その中で気が済むまで、役者が二人、そして観客は一人しかいない劇を続けていくのだろう

    安堵と、少しの寂しさを覚えつつ、わたしは眠りに落ちていく

    わたしを呼ぶ声は、もう聞こえなくなっていた

    166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/17(日) 04:37:48.50
    駄文でしたが、こんな遅くまで付き合っていただいてありがとうございます

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唯「りっちゃん、りっちゃん」
紬「最後の日」
唯「唯憂とかもうオワコンだろ、今は律憂の時代」
  1. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2010/10/17(日) 20:24:39 URL [ 編集 ]
    面白かった
  2. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2010/10/17(日) 20:28:40 URL [ 編集 ]
    どういう意味?無能な俺に解釈をば…
  3. 名前: 2010/10/17(日) 20:48:35 URL [ 編集 ]
    管理人のみ閲覧できます
    このコメントは管理人のみ閲覧できます
  4. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2010/10/18(月) 00:51:32 URL [ 編集 ]
    ダメだ、途中から頭こんがらがった
  5. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2010/10/18(月) 00:55:24 URL [ 編集 ]
    隣にいるのではという不安が解消されるってことは最後の着信番号は唯の自宅からってことだと
  6. 名前: けいおん!中毒 ◆- ◆- 2010/10/18(月) 01:31:35 URL [ 編集 ]
    大学の友人=唯の器・・・ってそれじゃ話おかしくなるかな
  7. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2010/10/18(月) 02:31:58 URL [ 編集 ]
    面白かったが…
    赤目の女とか殺人犯が警察のふりして家に来るとかの都市伝説は
    現実的な恐怖、人対人の恐怖を描いた話であって
    日常的に入れ替わっているというのもそういう類型だから
    超現実は無しでまとめればもっとよかったと思う

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