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過去の名作たち

  1. 名前: けいおん!中毒 ◆- 2010/10/19(火) 20:51:26 URL [ 編集 ]
    この物語は頭の肉が足りない
    頑張れ
  2. 名前: 2012/02/15(水) 19:20:27 URL [ 編集 ]
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憂「愛して欲しかったわけじゃない」パターン①

  1. 名前: 管理人 2010/10/19(火) 18:57:32
    7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/18(月) 22:03:41.21
    「お姉ちゃーん、朝だよー!早く起きないと遅刻しちゃうよー!」

    いつもの朝です。
    私は朝の弱いお姉ちゃんに、声を掛けます。
    それでも起きてこないお姉ちゃんの部屋を覗くと、お姉ちゃんはギー太をぎゅっと
    しながら気持ち良さそうに抱いて眠っていました。

    私はそっとお姉ちゃんの腕からギー太を抜き取ると、それをギターケースに
    仕舞って、言います。

    「唯ちゃん、愛してるよ」

    私からじゃない。ギー太からの愛のコトバ。
    それでもいい。私は言いたかった。お姉ちゃんに、愛してるって。

    そしてお姉ちゃんは、ギー太の「コトバ」を聞くと、「ふおお!?」と目を覚まし、
    私を見て、私の大好きな笑顔でこう言うのです。

    「憂、おはよう」と。


    8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/18(月) 22:10:11.82
    .
    「ねえ、お姉ちゃん」
    「なあに、憂?」

    お姉ちゃんは、私を見ると首を傾げました。
    私はそんなお姉ちゃんを見て心臓が高鳴るのを隠すため、顔を逸らして
    「ううん、なんでもないよ」と答えました。

    本当は、私の片手をお姉ちゃんの片手で温めて欲しかった。
    いつかの朝のように。
    けど、そんなのわがままだってわかっているから、私は何も言いませんでした。
    お姉ちゃんと一緒にいること自体が幸せなんだから、と自分に言い聞かせます。

    「そ?今日は一段と寒いねえ、憂」

    お姉ちゃんは、私の気持ちも知らずにふわりと笑うと、手をすり合わせて歩き始め
    ました。せめて学校に行く間だけでも誰よりもお姉ちゃんの近くにいたくて、
    私はお姉ちゃんを追いかけると隣に並んで「うん、そうだね、お姉ちゃん」と笑いました。

    9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/18(月) 22:19:09.53
    学校に着くとすぐ、どんより雲っていた空から雪が降り始めました。
    そういえば今日、傘持って来てたかな。
    念のためにカバンの中を探ってみたけど、傘は見付かりませんでした。

    お姉ちゃん、傘持って来てるかな。

    私はそう思って三年生の下駄箱のほうを見たけど、もうお姉ちゃんの姿はなく、
    諦めて自分の教室へ歩き出しました。

    .

    空が暗いと自分の心まで暗くなるような気がして、私は雨や雪の日が嫌いでした。
    だけど、お姉ちゃんがある年のクリスマス、私に「ホワイトクリスマス」をプレゼントして
    くれたあの日から、雪の日が好きになりました。

    思えば、あの頃から私はお姉ちゃんに、家族や姉妹としてじゃなく、一人の人間として、
    好きになり始めていたんだと思います。

    好きな人は異性ではなく、同性。しかも同じ家族。
    私はこの気持ちに気付いてしまったときから、ずっとこの気持ちを隠そうと頑張ってきました。

    けど、こんな雪の日には、あの日のことを思い出してしまい、私のこの気持ちを
    煽ってしまいます。

    10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/18(月) 22:30:40.53
    窓の外の世界は降り続く雪でだんだん白く染まっていきます。

    おかしいな。
    さっき別れたばっかりなのに、もうお姉ちゃんと会いたいなんて。
    お姉ちゃんの温かい手で私に触れてほしいなんて。

    想っちゃいけないとわかっているのに。

    「苦しいよ……」

    私は呟きました。
    心が、苦しい。すごくすごく、苦しかった。
    お姉ちゃんのことを想うと、いつもこう。

    そして雪の日は尚更、私の心は潰れそうになってしまうんです。

    .

    珍しく、あまり集中できなかった午前の授業を終え、私は少し頭を冷やしたくて
    教室を出ると、冷たい風の吹いている廊下の窓から身を乗り出しました。

    「何してるの、憂?」

    12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/18(月) 22:36:35.94
    「わ、あ、梓ちゃん!」

    突然声を掛けられて、私は思わず落っこちそうになってしまいました。
    梓ちゃんが慌てたように私を助けてくれます。

    「ちょ、憂、危ないよ」
    「う、うん、ありがとう……」
    「で、何してたのよ憂?こんな寒いとこで。早くお弁当食べようよ」
    「うん、そうだね……」

    梓ちゃんは私の様子を見ると、「何かあったの?」と少し心配そうに訊ねてきました。
    私は何でもないよ、と答えようとして、別の言葉を並べていました。

    「梓ちゃんは、好きな人が女の人、ってどう思う?」

    聞いてから、しまった!と思って慌てて誤魔化そうとしたけど、梓ちゃんは別に
    引いたような顔でも、変な顔でもなく、「え?」と少し驚いたものの、「いいと思うよ」と
    答えてくれました。

    「ムギ先輩の受け売りだけどね、相手のことが本気で好きなら性別なんて関係ないって」
    「……もし、それが家族でも?」

    13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/18(月) 22:46:44.05
    さすがの梓ちゃんも、動揺を隠せないようで、「ごめん、何て?」と
    聞き返してきました。

    「やっぱり、おかしいよね……」
    「憂……」
    「ごめんね、梓ちゃん!変なこと言って。昼休み終わっちゃうし、お弁当食べよ!」

    何か言いたそうな梓ちゃんに気付かないふりをして、私は話を逸らしました。
    ちょうど純ちゃんが待ちきれなくなったのか教室から顔だけ出してカレーパンを
    食べながら「二人とも何してんのよー?」と私たちを呼びました。

    午後の授業が始まっても私は何となく上の空で、お姉ちゃん、何してるかなとか、
    お姉ちゃん、寝ないでちゃんと授業受けてるかな、とか、そんなことばかり考えていました。
    気が付くと今日の授業は全部終わってしまい、いつのまにか帰りのHRが行われていました。

    「今日は天候の関係もあって、外の部も中の部も部活動は無しだ」

    担任の先生の声に、私は思わず顔を上げました。
    今日はどの部活もないんだ。久しぶりにお姉ちゃんと帰れるかも知れない。
    そう思うと、少しだけ嬉しくなりました。

    外ではまだ雪が降っています。
    もしお姉ちゃんも傘を持っていなかったら、二人で走って帰ろう。
    きっとお姉ちゃんとなら、どれだけ走ったって冷たかったって平気だから。

    14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/18(月) 22:54:51.35
    解散になると、私は急いで荷物を纏めて教室を出ました。
    お姉ちゃんが帰らないうちに早く下駄箱に行きたくて、私は何度も廊下を走り
    そうになりました。

    下駄箱では1年生と2年生の姿しかなく、3年生はどのクラスもまだのようでした。
    私は靴を履き替えると、3年生の下駄箱の前でお姉ちゃんが来るのを待っていました。

    「あ、憂!先に帰ったかと思った!」

    3年生の廊下からぞろぞろと先輩たちが歩いてくるのが見え始め、もうすぐかなと
    思っていたら案の定、お姉ちゃんはすぐに私の元へ走ってきました。

    「ういー、私、傘忘れちゃって」
    「ごめんねお姉ちゃん。私も持ってこなかった」
    「そっかー……」

    しょんぼりとするお姉ちゃんに、「走って帰ろっか」と声を掛けようとした時、
    突然お姉ちゃんが「あ!」と声を上げました。

    「あずにゃんだ!」
    「わっ、唯先輩!?」


    17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/18(月) 23:00:39.02
    お姉ちゃんは、2年生の下駄箱で多分一緒に帰る人を探していたんであろう梓ちゃんの
    姿を見つけると、嬉しそうに駆け寄っていくと抱き付きました。

    ずきん。

    少し、胸が疼きました。

    おかしいな、いつも見慣れてる光景なのに。
    何でだろう、今日は凄く、嫌な気持ちになってしまいました。

    きっと、雪の日だから、こんな気分になるだけ。
    そう自分に言い訳してみたけど、その気持ちは消えることはなく、私はもやもやと
    したものを抱えてお姉ちゃんが自分の元へ戻ってくるのを待っていました。


    「ごめんねー、憂、帰ろ」

    お姉ちゃんは、梓ちゃんの待ち人が来たのをきっかけに、梓ちゃんから離れると
    私の元へと戻ってきました。
    私はいつものように「大丈夫だよ」と言えなくて、ただ「うん」と言ってお姉ちゃんより
    先に歩き出しました。

    23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/19(火) 00:27:18.22
    「うい?どうしたの?」
    「ううん、何でもない」
    「だって憂、怒ってる」
    「怒ってない!」

    つい声を荒げてしまいました。
    校門を出たところで私たちは立ち止まりました。

    26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/19(火) 00:39:47.05
    「うい……?」

    お姉ちゃんはずるい。
    私のことなんでもお見通しのくせに、肝心のことは何も知らない。
    知ってくれない。

    知らないほうがいい。だけど知って欲しい。

    今、私がどんな気持ちでいるのか。
    私がどんなにお姉ちゃんのことが好きなのか。

    「……バカ」
    「え?」
    「お姉ちゃんのバカ、大嫌い!」

    28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/19(火) 01:15:57.93
    あぁ、どうしてだろう。
    どうしてこんなこと言っちゃったんだろう。

    「憂……」
    「ごめん、なさい……!」

    私はお姉ちゃんに目を合わすことも出来なくて、ただ小さな声で謝ると、
    その場から走り出しました。

    「憂!」とお姉ちゃんの声が聞こえた気がしたけど、私は立ち止まりませんでした。

    全部雪のせいにできたらいいのに。
    走りながら、私は本気でそう思いました。

    30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/19(火) 01:24:06.30
    気が付くと、昔よくお姉ちゃんや和ちゃんと遊んだ公園へ来ていました。
    私は頭に積もってしまった雪を振り払うこともせずに、公園の真ん中に来ると
    その場に座り込んでしまいました。

    私は今まで我慢してた涙が次々と溢れ出てきて、それを拭おうと必死に目を
    こすりました。
    それでも涙は止まってくれません。

    涙を拭いながら、私はただ、自分が嫌で嫌でたまらなくなりました。
    どこかへ行ってしまいたい、お姉ちゃんのいない場所へ、どこでもいいから。

    「ごめんね、ごめんね、お姉ちゃん……」

    もう、どうすればいいかわからないよ。
    こういうとき、お姉ちゃんはなんて言ってくれたかなあ。
    思い出せないよ。

    このまま、ここで凍え死ねればいいのに……。

    31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/19(火) 01:28:07.41
    お姉ちゃん、私のこと、どう思ったかな。
    面倒な妹?うるさい妹?それともいらない妹?

    雪がだんだん強くなってきました。
    横殴りの風が、私のスカートを捲り上げました。
    慌ててスカートを直すと、微かに何かの音が聞こえました。

    誰かの、歩く音。

    「うい……っ」

    顔を上げると、お姉ちゃんがいました。

    32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/19(火) 01:33:18.01
    お姉ちゃんは息を切らせながら私に近付いてくると、突然私に梓ちゃんにして
    いたようにぎゅっと抱きついてきました。

    「お姉ちゃん……?」
    「憂、よくわからないけど、ごめんね……?」
    「……うん」
    「だから、私のこと嫌わないで」
    「嫌わないよ」

    嫌うわけない。嫌えるわけない。
    たぶん、私はずっと、お姉ちゃんに依存したまま。

    「私、憂のこと、大好きだよ。大切な大切な家族だって思ってる」

    うん、わかってるよ、お姉ちゃん。
    だけど私は――

    「だからね、憂のこと、傷付けたくない」
    「本当に?」
    「うん、本当に本当。憂のこと、大好きだもん、愛してるもん」

    ずきん。
    また、胸が疼いた。

    33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/19(火) 01:37:19.67
    私は、愛して欲しかったわけじゃない。
    私が求めていたのは、そんなに軽い「愛してる」じゃない。

    嫌いだって。
    大嫌いだって。
    そう言ってくれたほうが、私はこんなにも苦しまなくていいのに。

    「私も、愛してるよ」

    お姉ちゃんに囁き返した虚しい告白は、真っ暗な夜空に溶けて消えていった。

    .

    34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/19(火) 01:40:17.22
    「お姉ちゃーん、朝だよー!早く起きないと遅刻しちゃうよー!」

    いつもの朝です。
    私は朝の弱いお姉ちゃんに、声を掛けます。
    それでも起きてこないお姉ちゃんの部屋を覗くと、お姉ちゃんはギー太をぎゅっと
    しながら気持ち良さそうに抱いて眠っていました。

    私はそっとお姉ちゃんの腕からギー太を抜き取ると、それをギターケースに
    仕舞って、言います。

    「お姉ちゃん、愛してるよ」

    ギー太からじゃない。私からの愛のコトバ。
    けれどきっと、お姉ちゃんには伝わらない。伝わらなくていい。

    お姉ちゃんは、私がしばらくお姉ちゃんの寝顔を見つめていると目を覚まし、
    私を見て、私の大好きな笑顔でこう言うのです。

    「憂、おはよう」と。

    終わり。

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